こんな稼業をしてたら、そんなことだってある。
私はいくらか白けた気持ちで、目の前に落ちている、燃えて縮れた団服を拾い上げた。銀色でぴかぴかに光っていたはずのボタンが、黒く汚れたまま、布に辛うじてぶら下がっていた。
「ぽー、と、ばっかー、に……」
ああ、そうか、これは私の隊員の欠片か。たしか、赤茶色の優しげな目をした青年で、そばかすが無邪気にその鼻の頭で踊っているようにみえたのを覚えている。お前がいるのは暗殺部隊でいいのか、と私でさえ疑問に思うような好青年だった。
まあ、そう。そういうこともある。
今日はボスの機嫌が悪い。本部に入ってすぐわかるほどに。
ぴりぴりした雰囲気を肩で切り裂きながら、私は幹部のフロアへ上がった。スクアーロのドアが散り散りになっていた。
はあ、なんだか今日は疲れたし、マジギレのボスの相手する体力ないし、寝ちゃおうかな。そんなことを考えながら部屋のドアを開けてすぐ、すさまじい力で肩を掴まれた。そのまま無理矢理部屋の中に押し込まれて、身動きがとれないように拘束される。
「な、」
「黙ってろ」
気づいたら目の前に獰猛な光を携えた赤い瞳があって、唇にかさついたものがぶつかる感触があった。一瞬、ぬるりと生ぬるいもので撫でられた唇がすぐに解放されて、部屋の空気に晒されて、ひやりと乾いていくのを感じた。
「……ボス?」
そのまま、返事もせずに下へ下へとずり下がっていく獣を前に、わたしはぼんやりと今日のことを思った。
ポケットに入っているポート・バッカーニのボタンが見つかった場合、死ぬまでの猶予はどれくらいあるだろうか。
口付けは刹那