椿野の妹が桜に一目惚れする話

⚠椿野佑の妹になります
桜との出会いの話なのでそこまで絡みありません


私の世界は“ 赤色 ”で出来ていた




短髪だった男らしい黒髪はいつしか伸ばされ、美しく気高い“ 赤 ”を混じえ、

リップさえ塗る事を躊躇していた唇には“ 赤色 ”が鎮座するようになった


──どう?可愛いでしょ?あんたにも塗ってあげる



そう笑う顔からもいつしか“ 黒 ”がなくなり、頬を朱に染め可愛く笑う兄がいた

女の私よりも綺麗で、可愛くて、強い。

憧れだった。大好きだった。


きっと私の知らないところでたくさん悩んで、傷ついてきたのだと思う。
妹の私には一切そんな姿は見せなかった。気づいたら自分の好きな事を見つけ、輝いていた

お兄ちゃんの事で悪口を言われ、いじめられてる私に「アタシのせいでごめんなさい」と抱きしめながら謝るお兄ちゃん

その度に何度も否定した

違うよ、お兄ちゃん。私はね、傷ついてもないし嫌な思いもしてないよ

たしかに周りからしたら変かもしれないけど、私からしたらただ好きな事をしてる兄を笑ってる周りの方が変なんだよ。

そう言った私を綺麗な空を写した海のような瞳に薄い水の膜をはりながら笑って何度も「ありがとう」と囁いた


毎日毎日飽きずに私に嫌味を言いに来る同級生を素敵な笑顔で受け流しながら、私を守ってくれる強くて優しくて綺麗なヒーロー


私の世界は“ 赤色 ”で出来ていた。

はずだったのに、






「ほ、本当に行くの?」

「当たり前でしょ?ここまで来て何言ってるのよ」


凍えるような寒さも鳴りを潜め、薄ピンクの桜も舞吹雪、その後を追うようにゆっくりと緑の葉っぱが芽吹きはじめポカポカとお日様が暖かい午後


私はお兄ちゃんに手を引かれある場所に向かっていた


カツカツと私なら到底履きならす事は出来ないだろうと思うぐらい高いヒールの音を響かせながら、いつもどおり男だから女だからなんて関係なしに着こなすおしゃれな服に身を包むお兄ちゃんは今日も素敵だ


それに比べ私はお兄ちゃんが見繕ってくれると言う好意を断り、パーカーに履き慣れたロングスカート、これまた履き慣れたスニーカーと言う普段通りといえば普段通りの服装である


仕方ないじゃない。お兄ちゃんの選んでくれる服はどれも可愛くておしゃれだ。見る分には


いざ自分が着るとなると、分不相応でとてもじゃないが着こなすとかではなく服に着られてる感じになる


───ごめんね

───仕方ないわよ、誰だってはじめは怖くて当たり前。挑戦したくなったら言ってちょうだい!その時はうーんと可愛くしてあげるわ♡



「ついたわよ」

「!」


ここに来るまでのお兄ちゃんとの会話を思い出して思考をぐるぐるしてる間についてしまったようだ

少し怖いな………

「え〜っと、確かもう来てるはず………あ!いたいた、桜!」


あたりを見回すお兄ちゃんの後ろに隠れようとしたとき、元気な声が目的の人物を見つけたのか名前を呼びながら駆け寄っていった

ちょっ、と待って……!まだ行かないで!


悲痛な心の叫びは彼━━桜君と話すお兄ちゃんには無慈悲にも届かなかった

「最悪だ……」

はぁ、と重たい息がこぼれぼやく。仕方ない、なるようになる。覚悟を決めた私はしぶしぶ足を動かし二人に近づく


「ごめんなさいね、急に呼び出しちゃって」

「べつに。つーか、用事ってなんだよ」

「実はあんたに会わせたい子がいるの!」

「会わせたい?誰だよ」

「ふふ。きっと驚くわよ。じゃーん!アタシの妹よ、可愛いでしょ♡」

「い、妹!?お前妹なんて居たのかよ………」


驚いたような声音に、おそるおそるお兄ちゃんの背中からちらっと覗き込めば、色違いの二色のガラス玉が今にも零れ落ちそうなほど見開かれ、わなわなと震える相手の男の子と目があった。あってしまった……


「[FN:名前]。挨拶して、大丈夫だから」

「……………椿野 [FN:名前]です」


一瞬反応に遅れたのは許してほしい。
だってビックリしたから。


小さな時から赤色一色で彩られた私の世界。
いつしか私の好きな色も、手に取る色も“ 赤色 ”になっていた、のに━━━

赤色を消さないよう、被らないよう、金色に輝く光が差し込んだ

今までだって輝いていた。明るくて眩しかったのに。
目を惹かれる、吸い込まれる

綺麗な…綺麗な…金色

うっとりと見惚れていたのが悪かったのか、心の内が漏れ出ていたのかガラス玉を気不味そうにそらし、首を裏をかく彼はぽつりと「……桜 遥」と零した

桜、遥………。

どうしよう。変なのかな…どこかおかしいのかな
心臓が急に心配になるぐらい、周りに聞こえそうなほどの振動でドクドクと音を立て騒がしい

顔や身体だっていくら外がポカポカしてるとはいえ火照って熱いし、

なにより走ってもないのに息が浅くなる

落ち着くため深呼吸をしても効果なんてありやしない
どうしよう…どうしよ、

急に不安になって私はお兄ちゃんにしがみつく

「実はこの子……───!あら。どうしたの、[FN:名前]」

「お、お兄ちゃん………」

「!…どうしたの、なんで泣きそうなの?何かあった?」


泣きそう?泣きたいわけじゃない

ただ胸がドキドキしすぎて怖い……

焦った様子なのはお兄ちゃんだけではなく、桜君もで。ぼやける世界でもぎょっとした顔で私を見つめていることはわかった

だめ、見ないで……!恥ずかしい


「ちょ、[FN:名前]!?」


恥ずかしい。怖い。苦しい。……恥ずかしい、


泣きたくないのに自然とぽろぽろと出る涙にお兄ちゃんは慌ててポケットからハンカチを取り出し目元に当ててくれる

「ご、ごめ………」

「大丈夫。謝らないで。それよりどうしたの?突然泣くなんて」

「わ、わからない……」


心配かけてるのはわかってる。だけど自分でもわからないのだ、説明のしようがない



目元にハンカチを当てながら桜君に視線を向ける
彼はいまだ困ったような顔をしてる











と思っていたのに

「え、」

驚きで涙が止まった。
だって桜君


「……〜〜っ!!」

「いやだ!桜までどうしたのよ、顔真っ赤にして!」

「るせェ!なんでもねえよ!」 

「変な子ね………。ん?ははん、なるほど」



桜君の顔をまじまじ見ていたお兄ちゃんは何かに気づいたのか、私の顔と桜君の顔を交互に見たあと意地悪く赤が鎮座する綺麗な唇の端を釣り上げた


「っ、な、なんだよ」

「ふふ。なんでもないわ」

「はあ!?言いたいことあるならはっきり言いやがれ!!」

「あら、言いたいことなんて……ねえ?」

完全にお兄ちゃんのおもちゃにされた桜君はぎゃんぎゃんと噛み付いていた




顔を私の世界を彩ってきた“ 赤色 ”に染めながら。


あとがきも書けます。あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん