世話係兼護衛
893パロ
支部で公開したお話になります
私がまだ10にも満たない頃。
おじいちゃんがひとりの男の子を連れてきた。
『[FN:名前]。今日から一緒に住むことになった桜遥君だよ』
「…………」
白と黒の髪に、左右の色が違う瞳はどこか怯えたような、諦めたような色を含ませていて。だけどどこか惹かれるものもあって一瞬で私の心を虜にした。
小走りで男の子、遥君の前に行って手を差し伸べる。
『わたし、[FN:名前]、よろしくね』
『……………さくら、はるか』
差し伸べた手を握り返される事も視線が合わさる事もなかったけど、遥君の口から直接語られた名前を聞けただけで嬉しかった。義理堅い子なのかもしれない。
これが私と遥君の出会いだった。
◇
朝。私には毎朝の楽しみがある。
コンコン。と鳴り響くノック音に来た!と心がはやるが、それを表に出してはいけない。返事も返さず、物音一つも立てず過ごす。その後も何度目かのノック音が響くも心苦しいが無視をし続ける。本当は今すぐにでも君のくれる言葉や行動には返事を返したいがもう少しの辛抱だ。もう少ししたら。
「おい、入るぞ」
「!」
断りの言葉とともにガチャリと扉を開ける音。中の様子を見て“ まだ眠る ”私を見てため息をつきながら、音を立てずゆっくりとベッドまで近づく君。ほんとに優しい君。
「おい。[FN:名前]」
「……」
「はぁ。いい加減起きろって。遅刻すんぞ」
揺さぶりも何もしない、気安く触ってきたりもしない。怒鳴りもしなければ優しく、優しく言い聞かせて起こすだけ。
私はこの彼だからこその起こし方が好きで、聞き逃したくなくて遥君には悪いがいつも寝たフリをしてこの時間を楽しみに待っている。
だけどそろそろ起きないとほんとに遅刻するから、私は今起きた風に装って「ん……、はるか、くん?」と寝起き特有の少し舌足らずな喋り方で薄めを開けて大好きな色を見る。
ぼやける視野でもわかる。黒、白、金、濃い青と4種類の色は。君にしかない色、君にしか持ちえない色、君にしか似合わない色。君と出会ってから私を幸せにする色。
ついボーッと見惚れていたが遥君は寝惚けていると受け取ったのか、「ったく、まだ寝ぼけてんのかよ。いい加減起きねーと遅刻だぞ遅刻!飯も出来てる、眠気覚ましてから来いよ」と呆れながら部屋を出ていく。
出ていく背中を見送りのそりのそりと緩慢な動きで起き上がらせた身体はすでに君の言う眠気なんてなく、いつでも動ける準備は出来ている。
これ以上待たせてしまったり時間をくってしまうと遥君と朝ごはんを食べる時間がなくなる、用意しないと。
少し寝癖のついた髪を手で梳かしベッドからおりて、着替えを始める。
身支度を済ませ、遥君が待つ部屋に向かえばすでに並べられた二人分の朝食。座って待っている遥君は先に食べる事もせず律儀に私を待っていてくれた。
その様子にぎゅっと罪悪感と好きだなと矛盾した二つの気持ちで胸を締め付けられる。
「やっと来たのかよ」
「おはよう遥君」
「おう、とっとと食うぞ」
「いただきます」
「……いただきます」
パン、と手を合わせ出来たての朝食に箸をつける。
遥君はもともと話すタイプではないし、私もあまり食事中は喋る方ではないから静かな食卓になるが苦ではない。遥君はわからないけど。
いつしか決まりごとになった二人で囲む朝食。夕飯はおじいちゃんに時間があれば三人で囲んで食べる。
初め遥君は気まずそうにしていたが一緒に食べ続けるうちに慣れたのか気まずそうな雰囲気は見当たらない。
「なんだよ」
「このお鮭塩効いてて美味しいよね」
「あぁ。まあ、確かに米と合う」
「ね、合うよね」
とくに生産性なんてない淡々とした会話だけど遥君と話したって事が大事なのだ。好きな人と交わせる会話はどんなものでも嬉しく感じるし、幸せになれる。
「それじゃ行ってきます」
「…………行ってくる」
朝食を済ませ、遥君と玄関に向かえばぞろぞろと何処からともなく集まる人達に声を掛ける。
「行ってらっしゃいませお嬢、遥」
「遥、分かってんだろうがちゃんと今日もお嬢を守れよ。“ お世話係兼護衛 ”として」
「あーッ毎日毎日うるせぇな。言われなくても守るっての、ほら行くぞ」
「あ、うん!それじゃあね」
遥君に手首を捕まれ、引っ張られるけど痛くなくよろけない力加減にまたもや胸をときめかせながら、従い後を付いていきながら背後で「生意気だ」「コラ遥!誰に向かって口聞いてやがるクソガキ!」と怒る姿に再度挨拶を告げる。
「たく、毎日同じことしか言えねぇのかよあいつら」
ぶつくさ言いながら歩みをやめない遥君は今だ私の手を握ったままだ。
制服の袖越しからでも伝わる君の温度にドキドキと苦しい程に胸が早鐘を打つ。どうか君に聞こえてませんように。
「みんな、私を守るようにって言ってるけどあの言葉には遥君を心配する意味合いも含んでるんだよ」
「はあ!?オレが喧嘩に負けるとでも言いたいのかよ」
「違うよ。遥君は強いけど、私を守るのに遥君自身を蔑ろにしちゃダメって意味」
「………ッ!」
「なんだかんだ言いながら遥君が家に来てから、みんな遥君に期待してるしいつか[LN:苗字]組を継ぐとまではいかなくても力になって欲しいって思ってる」
「…………」
力になってほしい。少し語弊があるが間違ってもない。家の人達もおじいちゃんも遥君が居てくれれば組は安心だと言っているし思っている。
何かを考え込むように立ち止まり視線を地面に向ける後ろ姿にを眺め、もう一つ伝えたい事を口にする。
「それに、みんな遥君が弟みたいで可愛いんだって」
「はあ!!?」
突然の大声にビクリと肩は跳ね、バタバタと頭上で鳥達が飛び立った。
遥君。声大きい、登校時間とはいえまだ早い時間だよ。なんてお咎めの言葉は君の表情を見たら言えなくなった。いや、言えなかった。だって、
「っ─〜〜ぁ……お」
色違いのビー玉は視線をあわあわしていて、頬は頬紅でも塗ったの?と聞きたいくらい赤に染まり、驚いたような、信じられないような、だけど嬉しそうな照れくさいようななんとも言えない顔をしながら口から漏れる言葉は意味なんてなしてなくて。
「よかったね!可愛い弟の遥君!」
「ッ〜〜〜う、うるせぇ!男に可愛いなんて言うんじゃねえ!!」
ぎゃあぎゃあと真っ赤な顔して叫ぶ遥君に微笑いが込み上げるのを押し殺し、「はいはい。それはみんなに言おうね、遅刻するから行くよ」と少しの勇気をだして今度は私が遥君の腕を掴み学校へ向かい歩き出す。
これが私とお世話係兼護衛でもあり、友達の遥君との朝の始まり。
支部で公開したお話になります
私がまだ10にも満たない頃。
おじいちゃんがひとりの男の子を連れてきた。
『[FN:名前]。今日から一緒に住むことになった桜遥君だよ』
「…………」
白と黒の髪に、左右の色が違う瞳はどこか怯えたような、諦めたような色を含ませていて。だけどどこか惹かれるものもあって一瞬で私の心を虜にした。
小走りで男の子、遥君の前に行って手を差し伸べる。
『わたし、[FN:名前]、よろしくね』
『……………さくら、はるか』
差し伸べた手を握り返される事も視線が合わさる事もなかったけど、遥君の口から直接語られた名前を聞けただけで嬉しかった。義理堅い子なのかもしれない。
これが私と遥君の出会いだった。
◇
朝。私には毎朝の楽しみがある。
コンコン。と鳴り響くノック音に来た!と心がはやるが、それを表に出してはいけない。返事も返さず、物音一つも立てず過ごす。その後も何度目かのノック音が響くも心苦しいが無視をし続ける。本当は今すぐにでも君のくれる言葉や行動には返事を返したいがもう少しの辛抱だ。もう少ししたら。
「おい、入るぞ」
「!」
断りの言葉とともにガチャリと扉を開ける音。中の様子を見て“ まだ眠る ”私を見てため息をつきながら、音を立てずゆっくりとベッドまで近づく君。ほんとに優しい君。
「おい。[FN:名前]」
「……」
「はぁ。いい加減起きろって。遅刻すんぞ」
揺さぶりも何もしない、気安く触ってきたりもしない。怒鳴りもしなければ優しく、優しく言い聞かせて起こすだけ。
私はこの彼だからこその起こし方が好きで、聞き逃したくなくて遥君には悪いがいつも寝たフリをしてこの時間を楽しみに待っている。
だけどそろそろ起きないとほんとに遅刻するから、私は今起きた風に装って「ん……、はるか、くん?」と寝起き特有の少し舌足らずな喋り方で薄めを開けて大好きな色を見る。
ぼやける視野でもわかる。黒、白、金、濃い青と4種類の色は。君にしかない色、君にしか持ちえない色、君にしか似合わない色。君と出会ってから私を幸せにする色。
ついボーッと見惚れていたが遥君は寝惚けていると受け取ったのか、「ったく、まだ寝ぼけてんのかよ。いい加減起きねーと遅刻だぞ遅刻!飯も出来てる、眠気覚ましてから来いよ」と呆れながら部屋を出ていく。
出ていく背中を見送りのそりのそりと緩慢な動きで起き上がらせた身体はすでに君の言う眠気なんてなく、いつでも動ける準備は出来ている。
これ以上待たせてしまったり時間をくってしまうと遥君と朝ごはんを食べる時間がなくなる、用意しないと。
少し寝癖のついた髪を手で梳かしベッドからおりて、着替えを始める。
身支度を済ませ、遥君が待つ部屋に向かえばすでに並べられた二人分の朝食。座って待っている遥君は先に食べる事もせず律儀に私を待っていてくれた。
その様子にぎゅっと罪悪感と好きだなと矛盾した二つの気持ちで胸を締め付けられる。
「やっと来たのかよ」
「おはよう遥君」
「おう、とっとと食うぞ」
「いただきます」
「……いただきます」
パン、と手を合わせ出来たての朝食に箸をつける。
遥君はもともと話すタイプではないし、私もあまり食事中は喋る方ではないから静かな食卓になるが苦ではない。遥君はわからないけど。
いつしか決まりごとになった二人で囲む朝食。夕飯はおじいちゃんに時間があれば三人で囲んで食べる。
初め遥君は気まずそうにしていたが一緒に食べ続けるうちに慣れたのか気まずそうな雰囲気は見当たらない。
「なんだよ」
「このお鮭塩効いてて美味しいよね」
「あぁ。まあ、確かに米と合う」
「ね、合うよね」
とくに生産性なんてない淡々とした会話だけど遥君と話したって事が大事なのだ。好きな人と交わせる会話はどんなものでも嬉しく感じるし、幸せになれる。
「それじゃ行ってきます」
「…………行ってくる」
朝食を済ませ、遥君と玄関に向かえばぞろぞろと何処からともなく集まる人達に声を掛ける。
「行ってらっしゃいませお嬢、遥」
「遥、分かってんだろうがちゃんと今日もお嬢を守れよ。“ お世話係兼護衛 ”として」
「あーッ毎日毎日うるせぇな。言われなくても守るっての、ほら行くぞ」
「あ、うん!それじゃあね」
遥君に手首を捕まれ、引っ張られるけど痛くなくよろけない力加減にまたもや胸をときめかせながら、従い後を付いていきながら背後で「生意気だ」「コラ遥!誰に向かって口聞いてやがるクソガキ!」と怒る姿に再度挨拶を告げる。
「たく、毎日同じことしか言えねぇのかよあいつら」
ぶつくさ言いながら歩みをやめない遥君は今だ私の手を握ったままだ。
制服の袖越しからでも伝わる君の温度にドキドキと苦しい程に胸が早鐘を打つ。どうか君に聞こえてませんように。
「みんな、私を守るようにって言ってるけどあの言葉には遥君を心配する意味合いも含んでるんだよ」
「はあ!?オレが喧嘩に負けるとでも言いたいのかよ」
「違うよ。遥君は強いけど、私を守るのに遥君自身を蔑ろにしちゃダメって意味」
「………ッ!」
「なんだかんだ言いながら遥君が家に来てから、みんな遥君に期待してるしいつか[LN:苗字]組を継ぐとまではいかなくても力になって欲しいって思ってる」
「…………」
力になってほしい。少し語弊があるが間違ってもない。家の人達もおじいちゃんも遥君が居てくれれば組は安心だと言っているし思っている。
何かを考え込むように立ち止まり視線を地面に向ける後ろ姿にを眺め、もう一つ伝えたい事を口にする。
「それに、みんな遥君が弟みたいで可愛いんだって」
「はあ!!?」
突然の大声にビクリと肩は跳ね、バタバタと頭上で鳥達が飛び立った。
遥君。声大きい、登校時間とはいえまだ早い時間だよ。なんてお咎めの言葉は君の表情を見たら言えなくなった。いや、言えなかった。だって、
「っ─〜〜ぁ……お」
色違いのビー玉は視線をあわあわしていて、頬は頬紅でも塗ったの?と聞きたいくらい赤に染まり、驚いたような、信じられないような、だけど嬉しそうな照れくさいようななんとも言えない顔をしながら口から漏れる言葉は意味なんてなしてなくて。
「よかったね!可愛い弟の遥君!」
「ッ〜〜〜う、うるせぇ!男に可愛いなんて言うんじゃねえ!!」
ぎゃあぎゃあと真っ赤な顔して叫ぶ遥君に微笑いが込み上げるのを押し殺し、「はいはい。それはみんなに言おうね、遅刻するから行くよ」と少しの勇気をだして今度は私が遥君の腕を掴み学校へ向かい歩き出す。
これが私とお世話係兼護衛でもあり、友達の遥君との朝の始まり。
あとがきも書けます。あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん