片方を選んだとして、どうなるの?





気を持ち直して、ヘクトルの元に行くことにした。朝食の時間にルセアに会ったが、非常に心配していたようだったのでそれ以外に方法はないと思った。無論、兄さんとのことを整理出来たわけではない。しかしここで立ち往生していても進まないし、何よりも世界を平和にするという兄さん達の、黒い牙の願いを叶えられない。


「行かれるんですね」
「ええ、ヘクトルに謝らなければならないこともあるし」
「お一人で平気ですか?」
「大丈夫よ。ありがとう、ヒース」

私が彼の部屋に入ると、エリウッドが多分来ると思ってたよと微笑んだ。一方のヘクトルは多少気まずそうにしていたが、いたって変化はなかった。リンは私に座るよう促し、再び会議が再開した。

「この間はごめんなさい。感情的になってしまって」
「俺も怒鳴って悪かったな」
「それで、三人で話してたんだけど……名前と黒い牙のことは、あなたが言いたくなるまで待つわ。私も無理に聞いてしまって……」
「いいえ、リン。私が言わなかったのが悪いの。謝らないで」
「名前、じゃあもう決心がついたのかい?」

エリウッドの言葉に深く頷くと、三人ともホッとしたようだった。儚い思い出よりも、明るい未来を信じてみようと思った。それも全て、そう……彼のお陰。

「兄さんは強いわ。一筋縄でいかない。本気でいかないと、こっちが殺される。話し合いで解決する相手じゃないの」

私は振り返らないことに決めた。もう、自分の道を迷わないように。過去を振り返るのは、全てが終わった時にしよう。そう決心した。
兄さんを斬るのに抵抗がないなんてことはない。しかし再びそんなことを考え始めれば、せっかく掴んだ光を見失ってしまう気がして。

話し合いは長く続いた。
その中でも三人が気を使ってくれているのが感じられて申し訳なかったが、これ以上自分のことを話してしまえば、今まで築いてきたものが崩れてしまいそうで、言い出すことは出来なかった。



「名前は、ヒースさんのことが本当に好きなのね」

話し合いが終わってリンから言われた一言にひどく動揺した。
未だに私自身「好き」という言葉がよくわからない。リンのことも好きだと返すと、そういうことではないとの返答が戻ってきた。

「ルセアさんとヒースさん、どっちが好きって聞かれたら困るでしょ?そんなものじゃないかしら」

ルセアとヒース、どちらが好きか?というかルセアに対しては親友以外の感情を抱いたことがない。ヒースは……

「そうかも、しれないわね」

彼と共に過ごした時間は兄さんたちと重ねた月日よりもずっと短い。それでも、こんなに想ってしまうのはなぜなのだろう。
リンはリンで、私の答えにさほど疑問を感じていないようで涼しい顔をしていた。

「リンはヘクトル?ケント?それとも、ラス?」

私が聞くと、次は彼女が考える番だった。リンは少し考えてから、今はまだわからない、と言った。そんな答えがありなら私もそう答えれば良かった。

「ねえ名前。私はあなたのことをもっと知りたい。もっとたくさんの秘密を隠しているような気がしてならないの。もちろん、今すぐに言えとは言わないわ」




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