その目に宿る光は
ライナス兄さんの部隊は強かった。海を渡れる海賊も多く、サンダーストーム持ちの賢者もおり、魔防の低いメンバーが狙われた。遠くからは竜騎士の増援が何度も出現し、襲い掛かってきた。しかし私たちはそれに耐え、とうとう兄さんを撃破した。
「ぐっ…う……」
ライナス兄さん、と声を思わずかけたくなるのを必死に堪えて、私は戦況を見守った。
彼らは兄さんに留めを刺さず気を失わせたままにしていた。エリウッドが、何か考えがあってそうしたのだということをマーカスさんから聞いた。
気がついた兄さんは、エリウッドを道連れだと言って捕らえた。
「僕には、君たち黒い牙が悪の組織だとは思えない。…どうして戦わねばならないんだ?」
エリウッドがそう言うと兄さんは舌打ちをし、一度出直すと言って消えて行った。私はいてもたってもいられず、その後ろ姿を追い掛けた。
「兄さん…!」
森に隠れながら兄さんを追うと、話し声がすることに気付き、森の木の間からそちらを窺うと、黒髪双金の瞳を持った人間と兄さんがいた。
「てめっ…気配なんか…何も…!」
「ライナス兄さん!」
嫌な予感がして私は飛び出し、兄さんとその人の前に立ちはだかった。
「…お前は何者だ」
「何しに来た!ここはおめぇの来るところじゃねぇ!」
「私は名前。元黒い牙で、ブレンダン・リーダスの娘。あなたは誰?」
兄さんを殺そうなんて、そんなの早すぎる。せっかくエリウッドが命を奪わないでくれたのに。それに、彼女は…黒い牙ではないのか?
「我が名はリムステラ。そこを退け。退かぬならお前の命も貰う」
「邪魔だ!」
ライナス兄さんに飛ばされた。
地面にたたき付けられたがそんなのどうでもいい。兄さんが、兄さんが。
「兄さ…」
「来んなっつってんだろ!」
駆け寄ろうとした足を止めたことは、今までで一番の後悔になった。あの時、兄さんの制止を振り切っていたら、運命は変わったかもしれないのに。
「……狂犬ライナス。すばらしいエーギルだ」
「……ちくしょ…う……しくじっちまった……ぜ…」
私の足はようやく駆け出した。崩れ落ちた兄さんの元に駆け寄り、ライブの杖を取りだそうとしたところでリムステラから声がかかった。
「もう無駄だ」
「リムステラ…どうして、どうして兄さんを…!」
「人形からエーギルは取れぬ」
彼女を睨むと、そう言って光とともにワープし消えていった。しかし彼女が消えても、兄さんは息も絶え絶えで、今にも、
「…兄さん、嫌よ…もう少し頑張って…」
「名前……ありがと…な……兄貴…すま…ねぇ……」
「ライナス兄さん、お願い、目を開けてもう一度私の名前を呼んで?お願い、お願いだから……!!」
私は兄さんの亡骸の上に崩れた。
頭がこの事実を認めることを拒んでいる。もはや心が壊れそうだった。どうして兄さんが、と誰でもいいから理由を問いただしたかった。
運命といってしまえばそれまでだが、そんな運命なら、捨ててしまいたいたかった。
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