幸せを願う者、幸せを求める者





「ブラミモンド!」
「……準備に少し…手間どった。………よし…みなの力を借りるときだ…ここに集え、神将の力…!」

この時のことは、言葉では言い表すことの出来ない感情が私を襲った。エリミーヌ様の加護を受け、ブラミモンド様の力を受け継いだ私なら不思議ではないのかもしれないが、集まりゆく神将の光に共鳴するように心が暖かくなった。勇者ローランの勇気が私に流れ込んでくるようだった。

そして、ニニアンが復活を遂げた。

「尊き竜の血を持てる娘よ。その力で、あれらを静めるがよい」

ブラミモンド様の言葉を初めは否定していたニニアンだったが、力を取り戻したことを感じ竜達に近寄っていった。
そこからはあっという間だった。ニニアンがフィンブルのような氷の魔法を使い、2体の竜を殲滅させるところは鮮明に覚えている。しかし、残りの1体を私達が倒したところは目の前のことに精一杯すぎて、一部始終を事細かに覚えている暇もなかった。

「よくやった、ローランの意思を継ぐ勇者よ。ようやく終わった。これで……すべてが……」
「アトス様!」

エリウッドやヘクトルがアトス様の元へ駆け寄るのが私の視界に入った。一方の私はアトス様の言葉を小耳に挟みながら、その様子を見守るブラミモンド様の隣にいた。

「ふっ…力を使いすぎたな。先に逝く、友よ…」
「…私もほどなく追うだろう。だが…今しばし…また眠りにつくとしよう」

アトス様は、再びベルンの地から戦いの火が上がると仰った。最期まで私たちの心配をしながら息を引き取った偉人を、感謝の意を込めながら見つめた。
しかし“ほどなく追う”という言葉の重さにはっとして隣を見ると、もうブラミモンド様は姿を消した後であった。

「……それじゃあ、僕はもう行くね。エリウッド様、ニニアンを…いや、姉さんをよろしくお願いします」
「…わかっている。必ず幸せにすると……誓うよ」
「ニルス!あなたまさか…」
「うん、一人で戻るよ。僕は長生きしたい。ニニアンと違って物好きじゃないから」

そしてニルスは私に感謝と謝罪の意を述べた。なぜ私にそんなことを言うのかと理由を問うと、彼は視線を足元に落としながら私に言った。

「あと…名前様に、凄く失礼なことを言っちゃった。ごめんなさい」
「失礼なこと?」
「うん…家族がいなくなった、って言ったこと」
「貴方はニニアンが生き返った事実を素直に喜ぶべきよ。だから、謝る必要なんてないの」

そう語りかけるように言うと、ニルスは安心したのか笑みを見せてくれた。兄さん達と永遠に会えないとしても、きっとまた私は歩き出せる。こんなにも大切な、たくさんの仲間がいるのだから。

「泣かないでニニアン……離れていても、もう二度と会えなくても……ぼくたちの絆が切れることはないんだから……それよりも…少しでも長く生きて…どうか一日でも多く…幸せ…に…」

ニルスの言葉は、まるで兄さんが私に語る最期の台詞のようであった。弟と決別したニニアンを案じたが、エリウッドと共に前を向く彼女の姿を見て私は安堵の息を吐いた。




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