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満天の星空なんて気がつかなかった。私の心を照らしてくれているのは星ではなく貴方だったから。そんなものなくても、私は自分の歩む道が見えていた。
Episode:17
Thinking and behavior is a contrary.
しかし、自分の過去を話せば話すほど彼は私から遠い人間になっていった。
手を伸ばしたくても伸ばせない。助けを求めたくても求めてはいけない。関わってはいけない。そう
思えば思うほど会いたくて、触れたくて。
苦しめば苦しむほど彼は私に救いの手を伸ばしてくれた。頼っていいという言葉をくれた。
クレインは私にとって初めは手の届かない人だった。
次に気がついた時は、気になる人。
気になってはいけない人。
隣にいたい人。
好きになってはいけない人。
そして今は、嫌いになりたい人。
嫌いになればどんなに楽だろうか。憎むことが出来ればこんなに苦しむことなくいられるだろうか。
だが彼はそうはさせてはくれない。嫌いになることなんてないし、彼が私を拒絶することもないだろう。なぜなら彼は優しい人だからだ。誰に対しても同じように親切で気遣いも出来る、非の打ち所のない人。
真っ黒に薄汚れた私と、真っ白に洗練されたクレインの差は誰から見ても歴然だ。隣にいることすら本来であれば許されないのに、この戦い、このリキア同盟軍はその立場すらうやむやにして私を彼の隣に置いてくれる。
そんな環境が永遠に続くわけないのに。寧ろ早く終わらせなくてはならないのに、こんなにも苦しくなるのは、私が彼を――――
「クレイン…もう私のことは…」
「放っておいてって言いたいのかい?そうはさせない。僕は名前の傍にいる」
「…どうして…どうしてなの…?」
「どうして…かな。名前のことが頭から離れないからだと思う」
クレインはずるい。貴方には後ろめたいことが一つもないから、そうやって自分の気持ちを素直に吐露出来るんだ。
羨ましい、羨ましいよ。
私も正直になって、全部全部打ち明けたい。
言ってはいけないという気持ち、素直に言ってしまいたい気持ちが入り混じり葛藤が起こっていたが、もはやそれも無意味な気がしていた。
もしかすると、この人は全部を知った上で、私に会いに来てくれたの?
「…クレイン、私は…私は…罪を犯した人間なの…人の命を奪った!貴方の隣に相応しい人間じゃないの!だから…だからこれ以上…」
「…よかった。言ってくれて」
決死の思いで打ち明けた過去に対する返答は、拍子抜けしそうなほど呆気なかった。目の前にある彼の表情は月明かりに照らされて微笑んでいるのがわかったが、なぜこんなにも穏やかなのだろうか。
貴方の目の前にいる私は、人を殺めた経験があるというのに。
「な、んで…」
「名前…十分苦しんだだろうね。その苦しみを…僕に打ち明けてくれてありがとう」
「分かんないよ…なんで?なんで、そんな風に普通でいられるの?私は…私は…!」
冷たく突き放して嫌ってくれれば楽になれたのに、やっぱり貴方はそうさせてはくれなかった。
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