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Episode:18
Distorted star , advance time.
どうしてそんなに優しく私に微笑みかけてくれるの?私にはそんな価値もない。この短い時間の間だけでも隣にいられれば、それで良かった。なのに、
どうして私はクレインを好きになってしまったの?
「クレイン…」
「君は苦しんできた。そして、これからもその事実に苦しむだろう。でも…名前。君一人でその苦しみを背負う必要はないよ。僕がいる。共に歩んでいこう……いや、歩んでいきたいんだ。君と」
「…貴方は…なぜ…そんな風に…」
「僕が、名前を好きだからだよ。その事実を知っても気持ちは変わらなかった。他の誰かではなく、君でないとだめなんだ」
クレインの言葉は魔法のようにキラキラと輝いて私の元に舞い降りた。
彼の気持ちは非常に嬉しかったが、応えることは決して簡単ではなかった。私の罪をリグレ公爵家に持ち込むわけにはいかないし、彼に背負わせる気もない。私の犯した重荷を背負うのは私だけでいい。それに…
「私は…クレインとの思い出があればそれで良いの…これ以上を望むなんて…」
「君と出会って、僕は人生で初めて自分が貴族だということを恨んだよ。きっと僕が君と何ら変わらない立場なら、君の答えも何もかも変わっただろうと」
クレインが貴族ではなく、もし平民だったら?もし私と同じ傭兵だったら?面白いほどに無い物ねだりだ。
もしもクレインが今のクレインでなければ私は彼に惹かれては無かっただろうし、クレインとて今の彼ではなかっただろう。
全てが偶然で構成されているのだ。
「変わらない…立場も家柄も、変えることなんて出来ない。私はイリアの傭兵だし、貴方はエトルリアの貴族…」
「そうだね…。それは変えることは出来ない。なのになぜ、こんなにも…苦しいほどに、名前……君のことが好きになってしまったんだろう」
「クレイン…!」
私も、私も好きだよ。苦しいほどに貴方が好き。
貴方を好きになればなるほどその思いに罪悪感が募り、どんどん重くなっていった。空が見上げられないほどに苦しくなって、でもそんな時に会いたくなるのは貴方で、隣にいて欲しくて、心に想うのは貴方だけだった。
「見て。星が綺麗だよ、名前」
「え…?星…?」
私の視界には星空が輝き、彼からは優しい抱擁を受けた。驚くほど幸せで、何故か涙が溢れた。このまま時間が止まってしまえばいいのにと切に願った。
「名前となら何処にだって行けるよ。どんなに苦しい道でも構わない。乗り越えてみせる。そう思える人に出会ったのは初めてだ、名前。僕は、生まれ変わっても君に会いたい」
「クレイン、私…私も……」
涙が溢れて止まらなくて、美しい星空が歪んでうまく見えなかった。
私も、クレインとならどんな苦しい道でも乗り越えられる。家族を失った虚しさと悲しみも、貴方がいれば和らいでいくような気がするよ。
背中に回された腕の力が少し強くなるのを感じる。
私も、生まれ変わったらまたクレインに会いたい。その時は正々堂々と胸を張って会いたい。好きだと言いたい。
「君以外には考えられない」
「…私も……、クレイン…」
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