Episode:07
Afternoon chance a sudden.





あのような金の稼ぎ方を覚えて幾度となく暗殺を繰り返したおかげで私のコードネームはベルン王宮まで伝わり、いよいよ内密ながら王宮で働くことが許された。
理由は簡単だ。私のような暗殺者を放置しておくと王宮内部で事件が巻き起こりかねないと、どうやらそういうことのようだった。

残念ながら軍人としては雇われず、連れてこられたのはメイドとしてであった。

「貴女が新入りの名前ね。私は王宮のメイド長よ。案内するから付いていらっしゃい」
「はい」

中年のメイド長に連れられて王宮を一通り案内された。部屋の場所や扉の位置、間取りなどの把握は得意なので問題なく覚えることができた。
まさか暗殺者として働いた経験がメイドで生きるとは思いもよらなかったが。

「貴女はまずこのお部屋の掃除を。お客様が見えたら近くのメイドに声をかけなさい」

メイド長は掃除用具の場所を指示して姿を消した。なぜ私が掃除なんかと思ったが、よく考えれば明るいうちにこんな豪勢な部屋に入ったのは生まれて初めてで、私は興味をそそられた。

天井の高いこと。壁にかかる絵が綺麗なこと。家具も一つ一つの装飾が細かく高価なことを匂わせる。一度だって住んだことは無いが、住処にしたらそれはそれで窮屈そうだと思った。貴族たちも様々な事案に縛られているのは知っていたので、それよりは平民の方が気楽で良いかもしれないと。

散々この部屋を観察して満足したので掃除用具を取りに行こうとした矢先だった。

「ヘレーネ様はどこにいらっしゃるのかしら?」
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
「もちろんですわ。私はリグレ公爵家のルイーズと申しますの」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

それこそがクレインの母であり、リグレ公爵夫人であるルイーズ様との出会いだった。
貴族らしからぬ物腰の柔らかい方だ、と私は思った。雇う貴族たちは傲慢で自分勝手な者で、どちらが暗殺仕事の対象になっても致し方ないという者ばかりだった。だが、この人は違うと。

もしもこの人がその対象になったら私は弓を向けられるのだろうか。そんなことを考えながらヘレーネ王妃の元へと向かったのだ。
リグレ公爵家のルイーズ様がいらっしゃいました、ということを伝えるために。

メイド長には他の者に声をかけるよう言われたが、直々に王妃に会えるなど機会そうそうない。好機が巡って来たのかもしれない、と私は少し浮き足立って雇い主の元へと足を早めた。



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