玉葱を刻むとき

玉葱を刻むとき

COCO MEMO TEXT

こころざし、っていうか。

▽2020/03/05(Thu)日々、目指すところがある。
簡単に言えば、どこに着地をするか。みたいなこと。
延々と飛び続けているワケにも、無目的に浮き続けているワケにもいかない私たちであるから、当然、何かにつけてゴールを設定する。

例えばそれが、分単位なのか、時間単位なのか、はたまた十年後にビジョンを据えるのか、様々にあるけれど、当たり前のように全てに着地点を設定して、制覇していくのが、生活すること、のように、すっかりなってしまっている。
ただ、それは考え方の話で、実際問題、思い描くように行くワケもなく。
仕事なら、予定調和で物事が進まなければ終わらないから、ゴールに辿り着けないことはあってはならない、というふうになる。
私生活においては、私に関して言えば、まるっきりダメなのである。
常に地べたに座り込んでいる状態、とでも言えばいいのか。休日とあらば、日がな一日だらだらと惰眠を貪り、起きたかと思えばさっさとビールを呷るような。
プライベートを充実させたい、とか、アウトドアの趣味を持ちたい、とか、そういうことはほとんど思ったことがない。飲み会はもちろん大好きだけど、友達と遊んでいるより、なんでだかひとりでだらけていることの方が楽しいので、積極的に友人と出掛ける約束もしない。
アラサー今更な性質問題。

私生活はダメでも、仕事は中々、これまたやる気があり。
近頃は、自分の仕事が増えたので、朝から晩まで職場にいることが多くなった。早く帰りたい、と思うのは恋人がうちに来ているときか、途方もなくくたびれてしまったときだけ。
それ以外では、ひっきりなしに作業場を行き来して、売り場をぐるぐると巡り、仕入れの管理と発注の確認ばかりして、目を回しながら数字を眺めている。
何が楽しいのかわからないけど、飽きずにやっている。
ただ、ふと、どうしてわたしがこんなことやらなきゃいけないの、なんて思いついてしまうと、途端に叫びたくなる、やめたーい!
ただ、おいしいビールと、お金のためなので、やめるわけにはいかないのである。

さて、なんの話だっけ?
ああ、仕事についてのこころざしも、つい数ヶ月ほど前くらいから、漠然としてきてしまって、目指す先が見えないでいる、今日この頃の悩みなのでした。

やさしいまほう。

▽2020/02/29(Sat)仕事で疲れ切って帰ってくると、昨夜、願ったとおりになっていた。

目に入ったのは、すっかりと綺麗に片付けられた部屋。
記憶のままの、乱雑に散らかっていた服や、酒缶や、こまごまとやり放題になっていた物たちが、収まるべきところへまとめられ、不要なものはいずこへか消え去っていた。
はたして、気の利く妖精さんが遊びにでもきたのかしら?
なんて、もったいぶってみたくもなる。

見事に整頓された一室を見渡して、わたしはなんてことを彼にさせているんだろう、と思った。
心配させて、気にさせて、不安にまでさせてしまっているのかも。
あまりの不甲斐なさに、一人気まずくなってしまった。

ただでさえ仕事に忙殺されて睡眠不足に陥っている彼が、さらには何もできない彼女のおかげで、余計な世話まで請け負う始末。

どんな気持ちで、なにを考えながら、この部屋を片付けていたんだろう。

会いたいなあ。
いつだって、困らせてばかり。

ケムニマカレテタイ、みたいな、感傷。

▽2020/02/28(Fri)何も言わなくても、少し視線をやっただけでわかってくれる、とか。

せっかくかわいいんだから。美人さんなんだから。自分をダメにすることはしないんだよ。
そう言って、手をにぎって。
ぜんぜん、約束まもってないから、なみだばっかり出てくる。
かわいくも、美人でもないけど、このひとにとってわたしはきっとかわいい子だった。
たばこも吸ってほしくないし、お酒も飲んでほしくなかった。
ボトルのキャップを空けようとするだけで、もぎとるように、代わって。でも、爪のない彼に代わって、缶のプルタブだけは、わたしが。

目を向けただけで、わかってくれる、なにを見てるのか分からないような、暗い瞳で、捉えている。
息苦しいくらいの、執着。
わたしは、その子じゃない。
罪滅ぼしとして、大事にしてほしいわけじゃなかった。

陳腐で、安っぽい。そんなものにこそ、案外、寄り掛かりたくなったりもする、人間。

どうして思い出してしまうんだろう。
忘れてしまうからだろう。もう、間も無く、忘れてしまうんだとおもう。信号が、点滅するように唐突に記憶がきらめいて、行先を戸惑わせるみたいに。

おやすみなさい。
目が覚めたら、部屋がきれいになっていたらいいのに。

無味乾燥、とか

▽2020/02/28(Fri)例えば、毎晩見る夢のことを考える。
その中で示唆を汲み取るのだとしたら。それはいっそ、思い過ごしなのだろうか。

決まって、わたしは追われていて、人から問いただされる。どの場面でも、うまく言葉を話せない。まるで吃音症のように、わたしは舌がまわらず、頭の中でぐるぐる訴えたい気持ちだけが渦巻いている。
胸が苦しくて、誰か助けて、と泣きそうな気持ちでいる。言葉と同じように、気持ちも表現できない夢の中のわたしは、あいうえおを知らない子供のようにただ沈黙しながら、俯いている、だけ。

わたしは何も言えないのに、夢の中の人々は、わたしに様々な事を言っていく。目の前で死んでいく人もいる。黙っていることしかできないのに、何かを求められている、と思う、すごく苦しい。

寝ていても、息が詰まっている。
もう、ずっと昔から、夢見が悪いのは変わらない。
何が問題なのか、わからない。

一人暮らしを始めて、すごく楽になった。
でも、それはそれで大変なこともあった。
だけどひとりって、楽だっておもう。色々なことがあるけど、そんなの、すぐに忘れてしまう。
責める人がいなければ、忘れてしまうだけで済む。

だから、依存するのかもしれない。
便利屋さんみたいに仕立てて、都合のいいように一緒にいてくれる人がいるなら、と思っている。
なのに、反発している。
平凡で、標準的な人間関係と、互いに相互理解の行き届いた穏やかな関係に、憧れているから。
そんなの、自分自身の質じゃない?わかってるよ。もしかしたら、望まなければいいのかもって。ければいい、じゃなくて、べきじゃない、かもって。望むべきじゃない。

頭と、心は一緒のはずなのに、普遍性に望みを抱いて努力をしているはずだった。それなのに、自らを貶める価値観が跋扈している。
食い違うくらいなら、そのままでいればよかった、
だってそれが正しいことだったのかもしれない。
なんて、たぶんきっとあり得ないのは、ごはんを食べてもおいしくないことが、許せなかったからだね。

お腹が空いて、野草を食べて、おいしいと思っていた子供の頃。
ひとりで雑草を食べているのがまだしあわせだった。
悪さをして、家から締め出されてようやく、中に入れてもらえてから、用意されていた冷や飯を口に頬張れたときの。
惨めに思いながら、でも、生きるために食うなら。食うために働いてるのは。
死にたくなる。

食べたいものを食べたい。
おいしいものをおいしいって食べたかった。

たぶん、たった、それだけ。
疲れていると、味なんか、感じないんだもの。

鼻づまり、わんこ。

▽2020/02/23(Sun)においに敏感な彼は、近ごろ、花粉の影響で鼻が利かなくなっている。
苦しそうにぐしゅぐしゅしているのが、なんとなくかわいい。
寝顔をながめながら、ほんとうに何時間だって、何日だって見ていられる、と思った。
決してきれいなだけじゃない、人間なんだっていうところ、知れば知るだけ愛おしくなる。ね。

どくだみの効能、解毒。

▽2020/02/21(Fri)都合のわるいことは、誰だって見たくないもの。
目を伏せて、見ないフリをしたっていい。
先送りにした問題が、どんなふうに形を変えていくのかなんて、わからないんだし。

どくだみ茶が、良いんだって。
早速さがして、試してみようかしら。

うー、ねむ。

▽2020/02/20(Thu)いやー、疲れました。
正直言って、ヘトヘトでございます。
先にお風呂を済ませて大正解。

今日みたいな忙しい日に限って、店責はモチベーションが高かった。思いつきのように突発的な週末の計画を持ち出され、主任がいないのをいいことに、巻き込まれてしまうわたしなのであった。
でも、人員的に無理かな、と相談されてしまえば、そうですね、なんて言えるわけもなく。たかが2万の計画、なんとでもなるだろうと思いながら、頼れる人間がいないので、前向きに休日出勤を申し出る次第。
立場的におれからは頼めないけど、とか、時間があれば、とか、ずるいよなあ。(笑)
まあでも、この人の計画ではあるけど、監督はわたし、というふうに考えれば、勉強になるかなって。調子良く考える。
売り場のイメージを固めながら、翌週の計画と、発注を打ち込む。ただでさえ作業で疲れ切っていたから、今日の仕入れのことなんてまるで考えられなかった。在庫が膨らんでいるのをどうするか、作業のことばかり。大事なのは数字なのにな。

たぶん、もっと出来るようになる。今は、見えない何かに妨害されているだけ。だから考えなきゃ。もっともっともっと考えて、見つけて、厳しく自覚していかなきゃいけない。実行していかなきゃいけない。
煩雑なことは山ほどあるけど、間違いなくたのしいはずだから、だからこそ、信念を突き通せるように、パワーさえあればって信じてちからをつけてきたんだから。
努力に裏切られないように、努力と寄り添って。

届かないのに、届いてそうな。

▽2020/02/19(Wed)大丈夫だよって言う、大丈夫なんだって。

今日は、ひたすら準備。
別に、ただの平日なんだけど、今日はなんだか仕事がたのしかった。
六尺の平台を相手に、イメージを膨らませる。彩りとか、どこに何を陳列しようとか、サイズ感はどうするのがいいかな、とか。
什器の使い方も、先輩達の売り場を見て真似をした。
たまに顔を出してくれるチーフが、気が向いて売り場をつくったりなんかすると、見違えるほど商品が映えるので、センスなんだなあって思うけど。
真似をすればおんなしように出来るかもしれないと思って、一々写真に収めては、見返している。

21時過ぎに帰宅して、もう今夜はビールを一本飲んでお風呂に入って寝てしまおうと考えた矢先、来週の販売計画を作らなきゃいけないのを思い出す。
うーん、明日ドタンバじゃ、だめかなあ、なんて。
サボりたくある今日この頃なのだ。

ざっくばらん、あるいは支離滅裂。

▽2020/02/18(Tue)はー。
傷を抉るのは、大好きだ。
破滅願望と嗜虐性はリンクしてしまう。
さて、気が済むまで考えてみればいい。
まずは今日一日を振り返ってみよう。

2月18日、火曜日。晴れのち曇り。
何の変哲もない、休日だった。
昨晩は、彼がうちに来てからクリームパスタを食べ、ワインを飲み、早いうちにいつの間にやら寝てしまったんだっけ?
しばらく眠りを貪り、深夜の1時か2時頃に二人で起き出して、入浴を済ませたのち飲み直したのだった。
わたしが個人的に好んでいるDVD映画を流しながら、ウイスキーのオンザロックを二人で舐めて、すっかり現実を忘れて彼のひざの上で陶酔していた。

夜明けの寸前には、僅かに開いたカーテンの隙間から入る薄明るさを頼りに、お互いたまらず肌を重ね、存分に愛し合った。
そのときわたしは、愛し愛されるだけの幸せに、疑いなど露ほども抱いてはいなかった。
恋だ愛だの無根拠な情について、いかに脆弱であることか、思い出しもせず。

早朝眠りに入って、目覚めたのはちょうど昼飯時だった。彼はわたしより一足先に目覚めていて、何やら美味いが辛いと評判のカレーを用意してくれた。
二人で辛い辛いと騒ぎながら、せっせと食べる。
彼は汗だくで、その辛さに驚きながら、舌を痛めながら、それでも愉快そうに食べていた。
起き抜けのランチを終えてから、出かけようかどうしようかと話して、なんやかや過ごしているうちにわたしはつい、睡魔にそそのかされ惰眠を堪能していた。

これをしたためている今、すでにもう、関心がなくなってしまっている。どうしてすれ違ってしまうのか、相互理解が行き届かないのか。
熱量は、幸せなときに注がれた、本当はもう、じゅーぶんだ。


恋人は、バツイチで子持ち。
その事実は知っている。理解は出来ていない、受け入れてもない。わたしにはきっとその器がまだない。
というのは、当然でしょう?わたしは既婚でも、子持ちでもないのだから。
例え理解してる、と言ったところでヒャクパーセント、ピュアな嘘になるに決まってる。
偶然と偶然が接触して、嵐のように始まった交際だから、ふと雨が止むように、終わるかもしれない不安には日常的に駆られている。
でも選び取ったのはわたし。彼との幸せを望んだのは、わたし自身で。
短絡的に考えて、わたしがわたし自身を彼とのことで責めるのであれば、彼が作り上げてきた環境について、事実を知っていたでしょう?ということ。
過去に、わたしの知らない女と恋に落ちて、わたしに触れるように優しく触れて、取りこぼしそうなほど、彼女に愛の言葉をささやいた。そして、愛すべきだと信じてその通りに、正しく愛したのだろう。好きなだけセックスをして、その昂りに、満足のいくまで震えたんだと思う。今より若かった分、深く、深く。
その当然の先で、デキた子供がいる。
噛み合わなくなる理由のひとつとして、わたしにとっては、その知らない女とデキた子供のいる彼が、現在。いまの理解。
時差式に沸き上がる嫉妬心。
困らせることはハナからわかってた。
わたしに不倫経験があるからと言って、価値観の範疇がまとまるわけじゃないし、簡単にお利口さんになれるわけでもない。
だって、まるで、突き付けられているよう。
大事にするだなんて漠然とした甘やかしの言葉を、愛は並列されるって、不都合をまるまるスルーして、無条件に飲み込まなければいけないみたい。ほんとうはわたしだけのものにしたいだなんて、そんなこと、口が裂けても言えないじゃない。無謀なんだもの。

わかってる、でも、わかってないし、拒んでいる。
このままじゃ、きっとどこにもいけない。忘れてる日々がいくら増えようと、思い出すその瞬間、その日その刹那、わたしの言動によって彼の幸せを吹き飛ばしてしまうから。思い悩む日だってあることを、わかってほしい、わたしだって努力しようと考えていることも。
彼はわるくない。
でも、わたしだって、わるくないでしょう?

二人で幸せでなきゃ、意味がない。わたしと一緒にいるから幸せだと、心から思っていてほしい。
あなたがいるからわたしでいられる、と全身全霊でわかっていたい。
わたしが一番望んでるのは、わたし自身の幸せ。
わたしを幸せにしてくれる人を、わたしは幸せにしたい。
正直な気持ち、ただそれだけのことが、実はすごく傲慢なのかもしれない。


もっと建設的な考えができる脳味噌の持ち主であるなら、そもそも不倫もしないし、抜け出そうと差し伸べられた手に縋り付いて持ち上げられた先ですら、今みたいな状況にもきっとなっていないから。
それでも、前向きに生きようと考え直すなら。

他人を幸せにしよう、と言うにはわたしの心はきっと弱過ぎる。
他人はおろか、自分さえ信じられないのに。

本当は、逃げ出そうとしてしまった。
踏み止まれたのは、うまく寝付けなかった彼がわたしのパーカーの袖をつかんだから。
不安そうに開閉する瞼と、懸命にわたしを刺激しないよう、適切な言葉を選び取ろうとする彼に、向き合おうとしてくれる気持ちを汲み取った。
その瞬間、すっかり気が抜けてしまって。

恋人同士だからと言って、会うたびに交わす言葉で笑顔になれるような、互いの微笑みに癒されて、思いやりに溢れているような。口論の一つもなく、その仕草ひとつを見て理解し合えるのなら。
綺麗事で描いた輪郭に、中身を押し込むとして。容赦なく襲う津波は、築いたテトラポッドを溺れさせたあと。

ことごとく潰えてしまう、儚いもの。
軋んだベッドの上で吐き出される飛沫は、なんの証にもならない。幾度となく欲しがった言葉を鼓膜に打ち付けられても享楽だけを引き渡すわけにはいかない。傷付いている、夢を見ているのだ。
底無し沼に踏み入れた脚は、たちまち飲み込まれてしまう。

現実、モヤ。

▽2020/02/17(Mon)頭ではわかっていること。
ただ事実である、そのことについて。
知っているけど、理解はできていないのかも。

言葉として口に出してみれば、たちまちとらわれる。
傷つくには遅過ぎて、後悔するには早過ぎる。

何が見えているのかわからない、その人のからかいを真に受けるのはきっと、思うツボ。
不安を煽られるのは、すごく苦手だ。



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