呂布ストーカー


あの時貂蝉は微笑んだ。

呂布はその時のことを覚えている。盟友華雄の棺にとりすがり、泣いていた少女。
儚げだった。
華雄の後を追ってしまうのではないかと心配した。今は李儒の取り計らいで城に奉公している。
李儒。
冷徹な軍師を装っているが、女子供には優しい。
董卓。
暴君以外の何者でもないが可愛い娘には優しい。

が、呂布は仲間達のことがわかっていなかった。貂蝉のこともわかっていなかった。
漢帝国の大臣の娘を働かせていることが納得できなかった。

「董卓様も李儒様もよくして下さっています。本当は華雄様の故郷で豚を育てる予定だったけど」
一瞬涙ぐんだ後、貂蝉は微笑んだ。

その微笑みの理由が呂布にはわかった。彼女を救えるのは自分しかいないのだと。
そして貂蝉は自分のことを好きになったのだと。

「喪があけたら一緒に暮らそう。いやいや、まだ華雄と正式に結婚してたわけじゃない。喪等気にする必要ない」

貂蝉は露骨に嫌悪の表情を作ったのだが、呂布には通じなかった。
貂蝉はキモいとはっきり思ったが、呂布を、というか誰かを傷付けるようなことはできないでいる。

高貴で可憐なこの娘を救えるのは、自分しかいない。
貂蝉は遠慮し拒んでいるが、自分の屋敷に連れて帰ろう。
貂蝉の養父王允への挨拶は何時が良いだろう。出来る限り早い方が良いはずだ。間違いなく貂蝉もそれを望んでいる。
そうでなければ、あの笑顔の理由は説明できない。

呂布はその日のうちに大臣王允の家を訪ね、一方的に貂蝉を嫁にすることを告げた。
状況を知らない王允は断りようがない。
そもそも、この時代、地位の高い男からの要請を断りようがない。
敗戦があったとは言え、他ならぬ今をときめく董卓配下の呂布元帥の申し出なのだから。

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