裏切りの呂布


「そうですか、ではこう致しましょう。董卓様の妾という名目で参内し、奉公して頂くという形で。ですが貂蝉さん、貴女は若い。ご結婚されるつもりは全くないのですか?」
「華雄様よりも好きな方が出来たら考えます。多分一生ないと思いますけど」

李儒は盟友華雄の勇姿を思い出し、目頭を抑える。
自分は冷徹な軍師だ。李儒は自分に何度も言い聞かせる。
「華雄、お前、羨ましいぞ。こんな素敵な女性に、こんなに愛されて。
馬鹿野郎、なんでお前ちゃんと幸せにならなかったんだよ」
貂蝉は泣いていた。ずっと我慢していた涙は止めようがなかった。

「華雄様の仰っていた通り、李儒様は優し過ぎます」
貂蝉の言葉に李儒は危険なものを感じた。自分は感情的になってはいけない。冷徹な軍師にならなければいけない。
今この中華の戦乱を修めるには力が必要なのだ。そして、その力を持っているのは敗戦したばかりとはいえ、董卓一人しかいないではないか。
「貂蝉さんは一端董卓様の妾という立場になって下さい。離に住み、使用人の一人として働いて頂きます。まぁ、さすがの呂布も董卓様の妾に手を出そうとは思わないでしょうし」
取り敢えず一件落着。
李儒と貂蝉の間にそんな穏やかな空気が流れた瞬間悲劇が起こった。

蹴破られた扉と、振り向くことさえ出来ず斬殺された李儒。
血塗られた方天画戟(呂布の武器)を抱える呂布。
「もう安心して良いよ。酷い奴はボクが退治してやった。さあ、おいで貂蝉。二人で暮らそう。キミを幸せにしてあげれるのはボクだけだから」


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