董卓の最期
「おお、呂布か。血相変えてどうした?」
董卓は呑気に声をかける。側近の李儒の最期を知らない董卓にとって呂布は大切な部下であるし、義理の息子でもある。
養子というか義理の兄弟、或いは義理の親子の契りを結ぶという風習がこの頃の中華にはあった。
義理の家族は本物の家族同様、いや、本物の家族以上に固い絆で結ばれていた。
暴君ではあったが、人情味溢れる董卓にとって、呂布の裏切りは晴天の霹靂である。
方天画戟が降り下ろされて初めて呂布の真意に気が付き、それでもぎりぎりかわす董卓。この辺りの身のこなしは流石におのれの武力を頼りに中華へ号令をかけるまでにのしあがった男である。
「血迷ったか呂布」
「黙れ暴君董卓。ボクは血迷ったんじゃない。目が醒めたのだ」
「呂布よ。お前もか」
恐れられ、怨みを買っていることは知っていた。それでも中華のためだと思っていた。この腐りきった漢帝国を建て直すためには鬼が必要だった。
鬼となり、皇帝と言える立場になり、最期は側近中の側近呂布の凶刃に倒れる。
「李儒」
董卓は懐刀の名を呼んだ。
「奴はもうボクが斬った」
董卓には方天画戟の一撃を避ける力は残っていなかった。
中華の歴史に名を残す魔王の最期は呆気ないくらいに悲しいものであった。そして、それが漢帝国の終わりの始まりの引き金になる。
そして、中華の人びとは思い知る。今の中華には魔王が必要だったのだと。
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