紫原くんは頭がけっこう良い話


ぼろぼろとノートにまいう棒の欠片が落ち、払ったはしから油染みが付着して文句を言いたいんだが、座った眼をした紫原敦くんがむっすーと「俺は今現在大変憤慨しております」と分かりやすくアピールしているので、俺に残された手は下敷きでそっとガードするという小さな抵抗だけだった。

全て俺が悪い。
遊ぶと約束した大事な休日に、赤点補習授業を受ける羽目になってしまったこの頭の悪さが悪い…!

本来なら街をぶらぶら散策しつつそれなりに楽しく過ごせていたはずの今日と言う日に、わざわざ制服に着替え学校に来なきゃいけないこの苦痛。
当事者の俺がげんなりしているんだから、見た目、というか雰囲気によらずに頭の良い子な敦はイラつきマックスだろう。ついてこなくて…よかったんだよ…?

「また間違ってるしー」
「うそ、マジでか」
「なんでわかんねえの?名前ちん授業中なにしてんの?」

やだ…敦に言われると何故か特別心に来るものがある…!痛い!

「真面目に聞いてるつもりなんだけどなあ…居眠りとかしてないし…」
「聞いてるだけで理解してないんでしょー?」
「やめて責めないで優しくして」
「優しくしてたら覚えないじゃん。ほら、これはこの公式使って」

ノートの端になんとなく見覚えのある公式を書いて説明してくれるが、意外にもその説明が分かりやすくて何とも言えないこの気持ち…。「俺が教えるからせんせー向こう行ってていいし」と教師を追い出しただけある。でも「よっしゃ頼んだ紫原」とサムズアップして出て行った先生は教師失格だと思う。

「名前ちんが赤点取ったから補習してんだよ?俺と遊べないとか、寂しくないの?俺はやだし。もっと頑張れし」
「すまねえだすまねえだおらがあたまわりいから」
「なんで突然田舎の人になるの。都会っ子だろ、ほら解けし」
「いやあああ」

俺のあまりの出来無さに、俺が引っ掛かりそうな問題に事前に注釈までいれてくれるようになった敦はだんだん楽しくなってきた様子だ。俺の苦しむ姿をみて微笑むとかさすが敦。まじ鬼。でもいいの。俺が全て悪い。

「今日はごめんなあ。また次の休み、遊ぶべ」
「ん。…でも俺、今気付いたけど。こーいうのも結構好きだし。また補習になってもいいよ」
「悪魔の子か貴様」
「ちげーし」

どっちにしろ名前ちん一人占めだから、こーいうデートも好きっぽい。
そう言ってまいう棒を齧る敦は至極ご満悦な様子だったが、罪悪感と焦燥感が半端ないので今回限りにしたい所存である。

これ、デートなのかな…。


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