天然は見えるものしか理解しない
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「腹が黒い人間は嫌いなんだよね」と名前が笑ったのをみて、今吉は今までの自分の行いを頭の中でザッと並べ立てた。
バスケのときは…それなりにえげつない作戦をたてたりはする。する、が、自分は主将なのでそこはある程度許してもらいたい。汚れ役というものだ。
率先して真っ黒に汚れている一年がチラついたが、それとこれとは別だ。あいつは天然物、こっちは養殖物。セーフや。
いやいや、でも考えてみたら日常生活においてもコソコソと妖怪扱いされることがあったような気がする。
完全な風評被害だ。ワシはいつも清廉潔白に生きとるんや。誰だ、妙な噂をたてた奴は。
中学時代の後輩の顔が浮かんで消えたのでいつか絶対に可愛がろうと心に誓った。可愛がるとは即ち、痛い意味でのことである。ザマァミロ。…と、考えた時点で「コレは腹黒いんやないか?」と自問自答に陥った。
考えれば考えるほど、もしかしたら自分はマジもんの妖怪なんじゃないかという疑惑が湧く。
今までずっと腹の中身は真っ白だと思っていたが、それは気のせい…?他称通りに、腹黒妖怪になりさがっていたのか?
考えれば考えるほど思考は迷路にはまっていくが、分厚い面の皮のおかげでそれが名前にバレることはなかった。
「なあ、名前」
「なに?」
「ワシの事は好かんか?」
「なんでさ。今吉は腹が黒くないだろ」
今だって俺の仕事手伝ってくれてんじゃん。今吉はちょーやさしくていい人だよ。腹真っ白だよ。
「俺は今吉好きだよ?」
「さよか!」
いやいやアイツまじ妖怪だろ、性格くっそワリィぞ。と、言おうとした青峰が口を「い」の形にした瞬間に、空気の読める超絶可愛い大天使桃井がその口にノートをバシンとぶつけた。
「今吉先輩、お先に失礼しますー」
「きぃつけて帰るんやでー」
「ってえなブス!」
「青峰くん黙って。名前先輩も、お先に失礼しますね!」
「ばいばい、また明日」
本人たちは意図していないが、部室が無駄に甘い空気になっている。逃げ出すように帰宅していく部員たちを何も知らないまま見送る名前は天然で、今吉は恋に視界が狭くなっていた。
迷惑な二人である。
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