(だいぶ昔の)イギリスさんと俺とじーちゃん


そいつはいつもぼんやりとした眼で俺たちを見ていた。

祖父と慕う童顔の男とよく似ていたと思う。
血の繋がりはなくても、同じ時間を共有すれば似通ってくるのかもしれない。そんなくだらない考えが浮かんで、すぐに頭を振って払い落とした。
同じ時間を共有したって、俺とあいつは何処も似なかった。形も考えも選んだ道も。
なんとなく境遇が重なったから、そういうふうに見てしまうだけだ。

「どうしました?」
「……どうもしない」
「ずっと名前を見てたじゃないですか。あげませんよ?」
「いらねーよ!」

冗談かと思ったが、日本は真面目に言っているらしい。
子供なんか嫌いだ! 勝手に大きくなって勝手に巣立ちやがる。
何があったってもう二度と関わりたくないし、関わるものか!


「名前ー」

少し遠めに居る子供に日本が小さく手を振って呼びかけた。
一応会議中なんだけどな……。ドイツがイタリアを叱っているところを見ると、休憩と同じようなものか。
だったら俺も休む。
椅子に背を預けて伸びると骨がなった。

「じーちゃん、仕事おしまい?」

「あともうちょっとって感じです」

「お仕事って大変なんだね。
俺、大きくなったらじーちゃんが仕事を止めて引き篭もってオンラインゲームにはまり込んでも生活できる程度には稼いであげるよ」

「名前……!なんて健気な……!」


「いや待てなんだその会話は」

関わらないでおこうと思ったのに、あまりにもツッコミどころのある会話のせいで口が勝手に動いていた。ちょっとずり落ちた身体を改めて椅子に乗せると、日本と名前の不思議そうな顔がよく見える。
その会話に違和感は無いのか!

「とっても祖父想いな名前に何か?」

「祖父想いと言えば祖父想いだがもっと全体を見てみろ!おかしいだろ?」

「……?」

首を傾げる日本に、溜息が出た。なんて平和な国なんだ、日本は!
ある意味羨ましいかもしれない。俺は嫌だが。


「兄ちゃん」

「……お、俺か?」

何時の間にか日本の後ろから俺の横に来ていた名前が軽く袖を引いて俺を呼ぶ。
そういえばこいつ、俺の名前は知らないんだよな。
名前の紹介は日本がしたけど、その時は時差ぼけで熟睡してたし。


「気が利かなくてごめん。俺、兄ちゃんの事も養ってあげるから!」

「名前!違います!正確には兄ちゃんというよりおじおじさんです。それほど若くはありません!」


「変な気を使うなばか!日本はちょっと黙ればか!」

きらきらした眼でおかしな事を言う名前と、余計な事を言う日本に怒鳴っても二人とも黙らない。俺だけが叫んでいる中で 「だいじょうぶ。俺、甲斐性あるから!」 と、どこから湧いたのかわからない自信に満ちた名前は椅子に座っている俺よりも低い位置から手を伸ばした。
伸ばされた手はギリギリで俺の頭に届いて、そのまま力尽くで引き下ろされる。

「いってぇ!」

なにすんだこのばか!


「俺がちゃんと大切にするから、俺の家族になってね」

「は……、」

あんまり幸せそうに笑うから、何も言えなくなった。
少しだけ首が縦に動いた気がする。気のせいであって欲しい。

「私というものがありながら。なんという総攻めですか、名前。末恐ろしいとはこの事です!」


「ちょっと状況をまとめるから日本は黙ってろ!このばかー!」


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