(だいぶ昔の)フランスさんとじーちゃんとちょっとだけ俺


「人の子供なんて育ててどうする。どうせ先に逝ってしまうじゃないか。
慈しんでどうする。みんな先に逝ってしまったじゃないか。そんなの寂しいじゃないか。俺は寂しかったぜ」

数十年ぶりに一切のふざけた態度なく真面目に言い切ったフランスさんは、言っている言葉とは裏腹に、眠りこけている名前を優しく撫でていました。
寂しかったぜ  というのは、彼もまた別れを知っているからなのでしょう。
随分前に彼と背中合わせで戦っていた可憐な少女も、勇ましき指揮官も、今はこの世に居ません。
私も同じです。人と世界はすぐに変わっていきますが、私達は『国』が滅ばない限り永久に存在しています。
それが辛いと、誰も口には出しませんが、私のしている事はたぶん愚かな事であるのは間違いありません。

「きっと、フランスさんの言うとおりです」

フランスさんは一度も顔を上げないまま、繰り返し名前を撫でる。
優しくやさしく起こさないように精一杯注意して手を滑らせる。

「可愛くて、大切になってしまって、喪いたくないと思うようになって、きっとその頃に別れが来るんだと思います。この子の最期を見守る日は、必ず来ますね」

いつだって置いていかれるのは私達で、それをわかっていながら名前と共に生きるなんて、自分で自分の首を絞めているようなものです。自虐的にも程がありますね。


「だけど、後悔はしませんよ」


フランスさんは顔を上げて、少し間を置き、笑った。
「日本は強いんだな」

いいえ、と 言葉にしようとした時に名前が眼を覚まし「おなかすいたー」と自由な発言をピーチクパーチク繰り返したため、対応に追われているうちに何時の間にかフランスさんは退出され、結局はうやむやになってしまいました。


いいえ、私は決して強くはありません。
ただ、他の誰よりも、   寂しがりやだっただけなのです。



「じーちゃん、おれのごはんないのー」

「はいはい、今もって来ますから。大人しくしないと教育的指導が火を噴きますよ」

「すいませんでした」


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