悪霊スタイル


 大学時代の友人と再会したのは偶然で、それが恋に発展したのは運命だと思う。

 名前くんのことは前からちょっといいなと思っていたけど、二人きりで飲んでから「すごくいいな」になった。なんで学生の時はこう思わなかったんだろう? 落ち着いてるし、かと思いきやちょっと幼い感じもして可愛い。でも頼りがいがあって男らしかったりする。思いっきり好みなのになんで??

 3回目のデートで、なんならこのまま彼の部屋に……と思ったけど、普通に解散の流れになっちゃった。私は自分からガンガンいけるほどのガッツはないし、ていうか「大事にされてる」感がうれしいしで舞い上がっちゃう。だから、彼の「家まで送るよ」という言葉を、「近いから平気」と断ってしまった。あ、もしかして私の家で……って感じだったパターンある?! 経験値が低い! 経験値が低いから! なんもわからん!

 脳内反省を繰り返しながら歩いていたら、突然世界が暗くなった気がした。
頭をあげると、パチパチという音。電灯が点滅している。

「壊れた? こういうのって、どこに連絡するんだろ……」

 役所でいいんだろうか。家までの道は私道が入り組んだ小道で、離れたところに点々とある電灯は真上のこれと同じように、壊れているのか無作為に点滅を繰り返している。少し、怖い。というか、この道ってこんなに怖かったっけ?

 慣れ親しんで来たはずの帰路が、何故かいつもと違うような気がする。
風がいつもより冷たい? うん。でもそれは季節柄じゃないかな。
なんだか暗い? うん。電灯の点滅のせい。
いつもより静か? うん。うん………? そうだ。

「なんで虫が鳴いてないの……?」


ザァァァアア


 呟いた瞬間、風が吹いた。枯れた葉を鳴らしていく。咄嗟に瞼を閉じて、目を開けた。

   男が、居た。

「……ッ」

 三つ先の電灯の下に、男が佇んでいた。明かりの下に上半身を入れるように、こちらを覗き込むような奇妙な姿勢で立っている。気づかなかっただけだ。さっきまで暗闇を歩いていたんだろう。
 虫の声が全くしないのが怖い。彼に電話をかけよう。いや、迎えに来てもらおうか? 優しい人だから、きっとすぐ来てくれる。手に持つスマホへ視線を移した。

「ねえ」

 男が、目の前に。

「人のもん取るなよ」
「…ッ、ひ、!」

 尻もちをついた目の前には何も無かった。何も無い。無いのだ。男の足が、ない!!!

「きゃあーーー!!!」

 魂を吐くような悲鳴が自分から出ているのと分かったのは、つまらなそうに見下ろす男の眼を見た時だった。「どうすっかなあ。……」そんな言葉を聞いて、意識が薄れる。 名前くんと付き合った人って、呪われるらしいよ。そんな噂を、今更思い出した。



 気づいたら病院にいた私は、それから一人で外を歩けなくなった。家から出られない。視線を感じるからだ。アレに気付かれたくなかったからだ。

 アレは最後、こう言った。


「どうすっかなあ。……殺しとこうかな」と、


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