棺桶は闇
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棺桶の中で考え抜いた先で出たこたえはこれだった。三十年は長いか短いかまだよくわからないけど、寿命の三分の一ならたぶん長い方だろう。人間は吸血鬼化させにくいっていうけど、これはきっと【長期の吸血】になるし、本気で噛めばなんとかなりそうな気がする。
寝たまま泣いていたので頭巾はべしゃべしゃで気持ちが悪い。いつもは落ち着く棺桶も、動きにくくて最悪だった。ティッシュを置いていなかったので、外した頭巾で鼻をかむ。最悪だ。最悪だ。
なんだかんだ言って新横浜のハンターは優秀だし、俺はきっと捕まるし、せっかく軌道に乗ったお化け屋敷も営業停止だ。あっちゃんはどうしよう。ケン兄とミカ兄に頼めば世話はしてくれるだろうけど、あっちゃん泣いちゃうかな。可哀想だ。
鼻はずっとぐずぐずだし、目は閉じても開けても涙が湧いてくる。眠れる状況じゃないのに、外は明るいから帰れない。
ほんの少し前まで子供だった気がするのに、どうして勝手に大人になったんだろう。いやだなあ。考えたくなかった。ほんの少し前と思っていたのが三十年なら、俺はきっとほんのちょっと未来を漫然と過ごしちゃって、気が付いたときには名前くんは爺さんになっている。それだけ時間が経っても、俺は今とあんまり変わらないままなんだろう。それは、とてもさみしい。
「うぇえん」
俺の腰より低かった背が、いつの間にか俺を見下ろすくらいになっていた。あれはいつからだったっけ。なんにも思い出せない。瞬きする間に大きくなってしまった気がする。
俺が三十五歳の時なんて、ケン兄とミカ兄に手を引かれて歩いていた頃だ。ほぼ赤ちゃんみたいなものだろ。なのになんで人間ってやつは。
「トオルくん、大丈夫?」
「えーん!!」
「うわあ!!」
棺桶の蓋を吹っ飛ばして力一杯泣き喚く。えーん!!! 名前くんは俺の人間なのに許可なく老化するのは俺への裏切りでは!? だんだん腹が立ってきた。ゆるせねえ……。
「俺がこのまま土下座したら合法で吸血鬼になってくれたりしない?! 捕まりたくないけど名前くんの寿命は延ばしたいから!!」
「ええ……なんか、俺の寿命のせいで泣かせてごめんね」
「本当だよ!! 反省には誠意が必要だよなあ!?」
「いっだあ!?」
首に貼られた絆創膏を毟り取って牙を突き立てる。俺の、俺の人間。吸血鬼にしたら、俺の人間じゃなくなっちゃう。最初から嵌められてたんだ。ひどい。こんな時でも血は美味しいから、やっぱり最悪だ。
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