(かみさまがしんだのでしにます)


ザングースの世界は全部、主人で出来ていた。悲しいも嬉しいも全部主人ありきの物で、それ以外は知らないしそれ以外を必要としたことなどなかった。生まれた時からずっと愛されて可愛がられて幸せに生きていた。ザングースのかみさまは主人だった。ザングースは人間の書く文字をある程度読むことができるが、一番自信をもって読める字が目の前にある。ナマエ。ナマエ。主人の名前。ナマエ。石の十字架に書かれている。十字架は、墓石だ。ここは、墓場だ。知らないはずがなかった。ここには来たことがある。墓参りってやつに、一緒に!




うわあああん。うわああああああ。ああああああああ。
ああああああああああああああああああああああああ。
うわあああああああああん。あああああああああああ。


いやだ。いやだ。いやだ。こんなのいやだ。帰りたい。かえして。返してくれ!返してください!こんなことありえない。あってはいけない!助けて。帰ってきて!いやだ。怖い!どうしてこんなこと。おかしい。だめだ!こんなことゆるされない!おねがいします!かえして!  何者かが背中に抱きついた。細くて柔らかい腕は、欲しかった重さではない。構わず喚き続けた。誰かが何かを言っていた。聞こえなかった。喚いて、喚いて、喚いて、



モンスターボールの音がした。ぱかりと開いて光と一緒に身体が吸い込まれて。トントントン…。残されたのは泣き顔の女性一人だった。



ボックスの底に眠ってザングースは二度と出ることはなかった。女性は友人の最愛のポケモンをどうにかして慰めたかったけれど、その術を見つけられなかったのだ。ボールの中で幸せな夢を見ているようにと願って、パソコンの電源を切った。


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