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ラギーにお願いされたクエをとって満足していると、フロイドが横からにゅっと現れて、海水に血が混じるほど新鮮な魚の半分を手渡してくる。そうか……これ……まだ続いてるのか……。にこにこしているから、やっぱり好意なんだろうな……。俺もニコ……っと笑みを作って食べる。しょっぱいし生臭い。地上で調理させて欲しいが、何らかの善意を踏みにじりそうなので何も言えない。今日の目的は人魚たちへの挨拶だったので軽く泳いで終わりにする。フロイドは俺が泳ぐ横でご機嫌にぐるぐると回っていた。子供の頃となんにも変わってないし、今ならわかる。俺の動きを邪魔しないように、触れないように器用に泳いでくれていた。
人魚が人間に動きを合わせるなんて大変だろうに、彼らは俺と一緒にいたくて合わせてくれていたんだな……。
「僕達に誤解があったのはジェイドから聞きました。不幸な事故です、お互いに対話が足りなかった。僕達には交流が必要ですよね……」
「うん、そうだな」
「ナマエもモストロ・ラウンジで働こ? ぜってえ楽しいよ。ね?」
「俺は接客業に向いてないからな……。料理も得意なものが偏ってる」
「自分の不得意を告白するのには勇気がいったでしょうに! なんて真摯な方だ。さすが僕のお友達! そんなナマエに特別に用意した仕事があるんです。どうでしょう? 週に一度だけ、今のようにこのガラスの前で狩りをして頂けませんか?」
「週一!!? やだ! 週七で来て!」
「ナマエを安売りする気はありません。せっかくの希少価値を下げるな!」
俺の運用方法で言い争いを始められたが、漁で得た魚はそのまま俺のものになるし、その上でバイト代もくれるという。提示された金額はどう考えても高すぎた。俺の得にしかならない。
「漁の許可も貰えたんだ、マドルまで貰う訳にはいかない」
「は? ナマエ、自分の安売り止めな?」
「貴方の泳ぎには貴方が思う以上に価値があります。貴方がその価値を貶めることはあってはならない事ですよ」
「はい……」
すごく普通に諭されて叱られた。ただ泳いでいるだけなんだが、陸の人間はともかく人魚にとって珍しいものだろうか? いや、泳ぎじゃなくて刺青が珍しいのかもしれない。タトゥーを一部だけ入れてる人は多いが、俺くらい全身に入ってるやつは村の人以外見たことがないしな。
そう考えてると、フロイドが「そういえば!」と大声を上げた。
「ナマエ、人間殺したの!? 背中に頭蓋骨浮かんでる! 人間殺したら人面魚になっちゃうって、エレメンタリースクールで言われてたの本当だったの?!」
「いや、そういうデザイン」
「素晴らしい! こちらにはいつでも『覚悟』があるぞというアピールですね。さすがです!」
「人間なんて水にしばらく浸けて置いたら動かなくなるのに、偉いねえ」
「俺の全て全肯定してくれててありがとう。そういう意図はない」
「謙虚ですねえ[V:9825]」
「オレ、ナマエのそういうとこ好き[V:9825]」
「贔屓で目が曇ってる……」
そういえばジェイドはいないのだろうか。聞くと「山〜」「気にしなくていいですよ。これは罰です」と二人とも悪い顔で笑っていた。山? 罰? わからないが、深く聞くのもどうかと思ったのでそのまま流して、サバナクローに帰る。
モストロ・ラウンジの正式開設は2週間後を予定してるらしいので、俺のシフトはその前に送ってくれるそうだ。シフトと言っても週一なので、本当にこんな厚遇を受けていいのだろうか。そう言うとまた普通に叱られそうなので黙った。
サバナクローの共用キッチンへ向かうといつもより人が多い。おかえり! おかえり! と俺よりでかい奴らが空の皿を持ってしっぽをぶんぶん振り回しながら迎えてくれる。
……多めに持ってきて良かった……! 本当に魚パーティをやる気でいる……!
「おかえりなさい、釣果はどうっスか?」
防水性のエプロンを引っ掛けて、間切やら刺身包丁やら強めのビジュアルをした刃物を担いだラギーが出てくる。
「二尾」
「上々。解体するから台の上置いて欲しいッス。オレの分確保しといてれます? あとでスカラビアで干すんで、冷やしといて」
「わかった、頼む」
台の上に一尾持ち上げて置くと、勝手に集まった奴らからの歓声が上がる。「うるせえ! 手伝わねえ奴は骨と皮以外やらねえっスよ! 調理の方やれ!!」とラギーが怒鳴ると、「フライにしようぜ」「スープの下処理してるから安心しな! 僕は食べられる!」とか聞こえる。ラギーが自分用に切り分けた分の切り身に氷魔法を掛けていると、「俺がやる」と肩を叩かれた。バオウだ。
「疲れただろ、シャワー浴びてから戻ってこい」
「助かる」
早く帰ってこないとミョウジの分の飯無くなるからなー! 笑い声に後ろ手を振って返事をして、一人で廊下を歩いた。
嬉しい。
勝手に口元が緩んで来たから、誰も見てないのにバレないように隠した。
俺、友達、いっぱいだ……。
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