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「他寮の友人の部屋に泊まるので、外泊届け受理お願いしまーす!」と寮長に頭を下げると、「こういうのは事前に出さないか」と軽く睨まれて、「無断外泊よりは数百倍偉いけどね」と笑われた。向こうで首を刎ねられてる先輩方、もしかしてそれで罰受けてる? 一日の無断外泊の罪って一週間続くの? こわ。見えるルールを無視するとこうなるんだ。もっと賢くやんないとダメ。

バタバタと出ていった部屋に、バタバタと戻る。ベッドの上は綺麗。机で復習をしているデュースに「さーんきゅ♡」と投げキッスを飛ばすと、「もう帰ってきたのか?」と不思議そうな顔をされた。

「んーん、今からまた戻る。今日泊まり」
「泊まり……」
「あ、すけべなこと考えたな。えっち」
「いやそれは本当にない勘弁してくれ」
「必死になるなよ……」

不味いものを一気に食べたみたいな顔をして言われると困るだろ。冗談だよ。てかそんなに「うげー」って顔しなくてもいいじゃん。オレとナマエ、並んでても問題なくね? オレは見ての通り格好いいし、ナマエだってTPO弁えとけば平均以上じゃん。これは惚れ薬とか関係なく、客観的に。客観的にみてオレは美形だし、ナマエは平均以上ってこと。

ハブラシとコップと下着と。これくらいでいいかな。服は貸してくれるって言ってたし。シャワーは浴びたから大丈夫だし、香水もミドルノートが香っていい感じ。ラストノートまであと一時間ってとこかな。明日の朝も使いたいから持っていこうと香水瓶に手を伸ばしたら、なんの脈絡もなくデュースが椅子ごとぶっ倒れてきた。その手は香水瓶の方に伸ばされていて、なんだか分からないけど止めようとしているんだな!? ってことだけは確か。

「なに!?! 怖いんだけど!」
「悪いことは言わない、僕の忠告を聞くんだ……」
「わかんねえよ、言って!」
「エース、僕は……エースのことを大事なマブだと思ってるんだ……」
「お、おう」
「ナマエの事も大事な幼なじみなんだ……」
「うん」
「これ」
「うん」
「悪い思い出」
「………………言えよ〜〜!!!!」

オレが咄嗟にデュースの胸ぐらを掴んだら流れるように後ろ手に拘束された。いででででバカこの怪力やめろ!! はあ〜〜? なに、この香水曰く付きだったの!?! 言えよ!!
オレがギャーギャー騒いでると「僕はやめろって言ってただろ」と非常に正しいことを言われた。ため息つくな。全面的にデュースが正しい。

「これ、なんの悪い思い出……?」
「前提として、ミドルスクールの時にナマエはクラスメイトから嘘の告白を受けたんだけど」
「は? 誰? ムカつく」
「黙って話を聞いててくれ。……その嘘告に乗っかったナマエが「全部嘘って知ってました〜」と逆ネタばらしした時に、いろいろ拗れて大暴れされたらしい。その時部屋中にぶちまけられたそいつの香水、ソレと同じなんだよ。しばらく部屋に瓶が置いてあったから、僕も少し勘違いして余計なことを言ってしまった」

本当にごめん! と頭を下げられたけど、いやこれデュース悪くねえし。オレがやった事だし。

「座って」
「え?」
「いいから」

デュースをベッドに座らせて、足を広げて、その間にオレがおさまる。

「匂いする?!」
「待ってくれ今僕何をさせられてるんだ!?」
「いいからこたえろ、香水わかる?!」
「え、わかんない!」
「よし!」
「まって今したぞ! 立った時に腕が顔に近づくからする! いいにおい!」
「はあ〜〜〜!?」

くそ!! アウト!! 違う匂いで塗り替えようと思ったけどこれと正反対って言ったらもうハッカ油とかになる。もう直接ナマエの鼻にぶち込んで全て台無しにしてやろうかな。とりあえずもっかいシャワー浴びてくるしかない!

「ナマエに準備ちょっと時間かかるって適当に誤魔化してメッセージ送っといて!」
「トイレに籠ってるでいいか?」
「良い訳ねえだろ『薔薇の花を塗り替えてます』とかにしろ!」
「それどんな意味だ!?」
「知らねえの!? 『あなたに見せる服を選んでいます』っていう慣用句! テストに出るから覚えといて!」

バタバタと出た部屋にバタバタと入ってまたバタバタと飛び出す。どんだけ落ちつきねえんだよ。空いててくれ~~~って祈りながら飛び込んだシャワールームは運良く空いてて服を脱ぎながら飛び込んだ。あーもう最悪。最悪!

オレと一緒にいて違う奴のこと考えてたってこと!?

はあ!!?

オレがいる時はオレのことだけ考えてオレに夢中になれよ!

すっげえムカつく。ぜってえ負けねえ。ぜってえアレだろ、匂いの記憶は最後まで残るってやつでぶちまけたんだろ。そういうことするから振られたんじゃないですかね〜〜〜〜〜〜〜〜〜!? 性格が悪いから嫌われたんだと思いま〜〜〜す!!!

惚れ薬のせいだってわかった上であれだけキュン殺してくるナマエだぞ、嘘告って言って、逆に惚れさせられただろ。バーーーーーカ。

腕をガシガシ洗って共用の薔薇くさいボディソープの匂いしかしないことを確認する。あーあ、もう。私物の方持ってくんの忘れた。これもあんまり好きじゃない。

早く部屋帰って、また着替え探さなきゃ。
シャワーのお湯を止めて、前髪からぽたぽたと落ちる水を頭を振るってはらう。


「あーあ……」



匂いだけでも覚えて貰えたら幸せだろうなって思っちゃったから、オレもそのうち、そいつみたいな事しちゃうかも。なんでこんなゲーム、やり始めちゃったんだろうな。オレのバカ。


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