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髪ぼっさぼさで制服も着崩れてるしあまり身なり気にしない方? 「俺、ミョウジ。よろしくう」ってへらへら笑いながら言うから、協力してくれる気はあるんだな。当たり引いたって思った。
「オレはエース・トラッポラ。足引っ張んなよ?」
「任せろし、俺イグニハイドの中では協調性ある方ですからね」
それって何と比べたらいいわけ? 誇れること? わかんないけど、確かにミョウジは協調性あるし頭も要領も良かったから、錬金術の授業はさくさく進んだ。今まで話したこと無かったけど、けっこう面白いこと言うし、つるむ程じゃないけどそこに居たら話しかけてもいいかなって。そんで、授業でS評価貰って、終わって、さよなら。
たまに授業被った時とか挨拶して、「なにしてんのトラッポラ」「首はねられてんだよ」「不機嫌〜」とか軽口叩きあって、終わり。さよなら。
ミョウジって下の名前なんだっけ? どうでもいいか。終わり。さよなら。
ナイトレイブンカレッジを卒業して、就職して、働いて。久しぶりにデュースに会って最近何かあったかどうか聞くと「幼なじみの結婚式で司会進行を任された」って自慢される。それがミョウジだなんてオレは思い出さないし、「へえ、良い式じゃん」って、たくさんの人が笑ってる写真を眺めた。
「…………」
見覚えしかないきったねえ天井。オンボロ寮のソファに転がされてたらしい。最悪の寝起きだ。身体中がバキバキに痛むし、頭も痛い。口の中が最悪。
なにか飲み物……って辺りを見回したらミルクの瓶があった。たぶんあれは飲んでいいやつだけど、常温のミルクをこの状態のオレに渡す奴がまともなわけない。マブのどっちかが異常者。分かるじゃん、ぜってえ吐くって。いいの? オレ自分のゲロ掃除しねえからな? 吐き散らして帰ってやるよ。
とりあえず、この行き場のないミルクを冷蔵庫に戻すために立ち上がった。勝手知ったるオンボロ寮だから問題ない。
「さいあく」
上着の首元、ゲロついてる。くっせえしきったねえ。マジカルペン手元にねえし、洗浄魔法もかけられない。
「さいあく」
冷蔵庫の中マジで何も無い。なに? このミルク監督生の最大限のおもてなしだったの? こんだけ貧困なら言えよ、ケーキの端切れとかくれる人いるぞ。
「さいあく」
かつて水が入っていたと思われしボトルだけあるけど、この財政状況で監督生がペットボトル買えるわけねえじゃん。こいつ水道水直飲みしてるんじゃないだろうな……? 1回沸騰させないとヤバいぞ。
「さ、い、あ、く……!」
ケトルに水を入れてコンロで温める。その間にボトルを洗って、一言ずつ区切るように喉の奥で「さいあく」を叫んだ。
「ぜんっぜん効いてねえじゃん!!! あのクソマズゲロ薬!!! はあ〜〜!? 今もめちゃくちゃ好きですけど!!? オレ何のためにあんなに吐いたんだよ……!!」
ぜんぜん好きで〜〜〜〜す! 今でも『恋する者の涙』垂れ流せま〜〜す! さっき見た夢ひとつでメンタル死にそうで〜〜す! はあ? たすけて。
「エース、起きた……うわあ」
「ミルク飲ん……うっわ」
「厄介なことになってんだゾ」
「監督生、デュース、グリム。オレたちマブだよな?」
オレが一歩近づく度に三歩ずつ後退すんのやめろ。おいこたえろ。オレたちはマブ。オレの苦しみは全員で分け合い、お前らの苦しみは各自対策。そうだよな? おい。今のオレに逆らうなよ、身も世もなく泣き叫ぶぞ。甘やかされた末っ子の本気、見せてやるよ。こちとら3歳の頃におもちゃが欲しくて店の前で三時間泣き続けた伝説打ち立ててるんだからな。
「なんかさあ、いい加減ムカついてきたわ。オレばっか可笑しくねえ? てか初動間違えたよな。ナマエも惚れ薬被ればオレがナマエに惚れてナマエがオレに惚れて、それで良い感じにまとまったわけじゃん? なんでオレだけこんな目にあってんの? 可笑しくねえ?」
「それはドジったのがおま「グリム! ステイ!」
「落ち着けエース、暴力はまずい。気を確かにもて」
「あのさあ、ゲロ臭くて忘れてたけど、オレからすげえいい匂いすんの。香水付けてっから。ナマエにさ、お前のこと大好きなオレの匂いだ、忘れんなって言ったわけ。それオレも覚えちゃってんのよ。これオレがオレに呪いかけてねえ? 解呪出来る?」
「知ってるゾ! これはヤンデ「グリム! 喋るな!」
「ちょっとずつ近づくのやめてくれ! 純粋に怖い!」
「惚れ薬作んの手伝って。ナマエにぶちまけてオレにベタ惚れにさせる」
何怖がってんの。オレ別にキレてねえし病んでもねえよ。ただ、あまりにもオレばっか酷い目にあってるから、ナマエにもこの気持ちをお裾分けしたいってだけだよ。あと解除薬の不味さを実感して欲しい。
ほんのちょっと、ちょっとだけ、オレがどんだけナマエが好きだったのか、……どんだけ、ナマエが好きなままで辛いのか、知って欲しいだけだから。
全部タダの八つ当たり。
オレ、言えねえの。最初にゲームだって言っちゃったから、もう「好き」って言えないんだよ。だって全部、嘘っぽくなっちゃうから。
オレの言葉、全部ニセモノになっちゃうから。
「おねがい、手伝って」
オレが床を見ながら声を絞り出すと、「いいよ!」って監督生のでかい声。
「一番集めにくい材料ならエースから無料で手に入るし、今から作ろ!」
「わかんねーけど混ぜるなら俺様に任せろー!」
「ナマエは「これ毒、飲んで」とかでも飲むから、罪には問われないと思う」
イヤって言えばいいのに。こんな訳わかんねえこと、めんどくさいからヤダって言って当たり前なのに。
「……おひとよし」
火にかけていたケトルが吹きこぼれて、慌ててコンロから下ろした。ボトルに入れ替えようとしたら監督生が「やるからやるから」って取っていく。そんな気が利くやつじゃねーのに。グリムが「仕方ねーんだゾ。ほら、触っていいゾ」とふんふわの腹毛を見せてくる。いつもは触んなって言うくせに。
「ナマエのこと、一番好きになってくれたのは絶対エースだと思う。解除薬飲んでも変わらないなら、ニセモノはホンモノになったって証明だろ。じゃああとは行動あるのみだ」
「そこ、普通は告白とか言うもんじゃねえの。オレ、薬盛るって言ってんだけど」
「惚れさせて既成事実を作った方が早いし確実だろう」
これほんと警官目指してるやつのセリフ? こんな真っ直ぐな目をして言うことある?
でも、まあ、ナイトレイブンカレッジだし。しょうがないよな。
惚れ薬作るのに関してはたぶんオレ天才だし、可愛い小瓶にいれてナマエにプレゼントしようっと。黒い石が鈍く光る指輪にキスをする。お前がオレの宝物のままでいてくれて、本当に嬉しいんだ。
ホンモノだったんだ、オレの『幸せ』も『好き』も、全部ホンモノになったんだって。ピロリンピロリンって、好感度の上がる音が惚れ薬の範囲外まで広がって、積み重なったみたいだ。オレ、エンディング寸前だけど。このまま放置して他のルート行ったら全部バッドエンドにしてやるから、覚悟しろよ。オレの挑発に乗って、オレを攻略したナマエのせいなんだから、責任取れよ。オレのエンディングみて、スタッフロールで感想を言いやがれ。待ってろちくしょう。
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