こんなん害虫だ駆除しろ
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バカのような言葉が書かれた看板をオレは呆然と見上げて、ナマエは顎に手をあてて「ふうん」と眺めていた。ナマエの部屋でいちゃついてただけなのに何がどうした!?
「ああ、なんか流行ってるらしいよ」
「流行ってる!? いよいよ治安終わりじゃねーか! 学園にヤリ部屋が生えるってなに!?」
「エースもヤリ部屋って単語知ってんだあ」
「男の子ですからね!」
いや、オレのエロ本知識がどうこうって話じゃなくない? てかなんでナマエは落ち着いてるわけ?
ご丁寧に部屋にはベッドとサイドテーブルにはローション、ゴムもある。ヤれって言ってんじゃんなにこれ。部屋中を歩き回るけど、ドアのようなものは無いし、もちろん窓もない。出口になるようなものもなくて、おまけに魔法も使えない。完全に閉じ込められていた。
「は? こういうの強制されるもんじゃなくない?? オレたちのペースで進ませろよ許せねえ部屋破壊しようぜ」
魔法がダメでも物理があるんだよ。運動部のガッツ見せてやるよ……ベッドの足破壊したら棍棒扱いにはなるだろ。なんの意味もなかったとしてもめちゃくちゃにはしてやるよ……。
オレが破壊の覚悟を決めている間も、ナマエはバカの看板をじっと見詰めていた。し、思慮深いおめめが素敵〜〜! くそっ、殺意がときめきで浄化してしまう……!
てか、ナマエも割とこういうのすぐのってくんのに、なんでこれには何も言わないんだろ。
もしかして、ほんとにやんのかな……。
え、どうしよ。やり方とか、そりゃ付き合い始めたわけだし調べたけど。だったらシャワー浴びたいし……。 と、思った瞬間部屋の隅にガラス張りのシャワールームが生えてきた。うるせえよぶち壊すぞ黙ってろ。
「うん、わかった」
「ひえっ、お待ちくださいまだちょっと心の準備が……」
「制約が提示されてるということは、魔法だけじゃないな。一部文字が失われていて字数の縛りがない。妖精族の悪戯だ。セックスでもリラックスでも言葉の後ろに『ックス』がつけばいいというやつだな。ほら、俺が前提条件を『リラックス』に定義した途端ヨギボーとテレビが生えてきた。一緒に見よ」
部屋の中心にはナマエたちの部屋よりも大きなテレビと、赤と黒のヨギボーが生えてきた。ご丁寧に、コーラとポップコーンといういつものセットもある。てか、こういうとこから生えてきたやつ、食ってもいいの? てか、ていうか、さあ……!
「うっせばーかばーか!!」
「なんでえ?」
「知らねーー!! ばーか! アクション映画以外見ねえから!!」
「あ、付き合ってはくれるんだ」
「まあね!」
また意識してたのは俺だけかよ! 半ギレしながら、座ったナマエの腹を背もたれにして俺も座る。勢いついたせいで「ぐえ」って聞こえたけど、ごめんなさいね! 耐えればいいんじゃない!?
「怒んないでよ、エース」
「怒ってませ〜ん」
「ほっぺたが拗ねておりますよ。かあいいね」
「つっつくな」
ナマエがこういうわかりやすいガキっぽい態度が好きだから、サービスでやってるだけだからな。本当のオレはもっとクールだけど、お前の好みに合わせてやってるだけだ。そこんとこ勘違いすんなよ。
ナマエの腹に体重を全部かけて、後ろ頭でぐりぐりと抉る。全然拗ねてねえし。バカ。
「俺、エースのこと本当に大好きだからさあ。こんなどこの誰かも分からない悪戯で適当に済ませたくないんだよ」
「……じゃー、いつやる? そろそろアレ、カビ生えるかもよ」
マブ達から貰ったやつ。一箱分六個、まだ未開封ですけど。どうしような。オレだってそればっか考えてる訳じゃないけど、なんかそういう雰囲気にならないじゃん。だからちょっと怖かったけど……そっかぁ、適当に済ませたくないって、ナマエなりに考えてくれていたってわけね。じゃあ、良いか。
「次のホリデー、学園に戻る前に一日だけ俺にちょうだい? 二人で泊まれるとこ探してんの」
「……ん」
「海と山どっちが好き? ちゃんとしたホテルに行きたいんだ」
「……ナマエがいたら、どっちでも好き」
「かあいいねえ、俺もエースのことだいすき」
「……ん、しってる」
流してる映画の内容なんて全く入ってこないし、結局やってる事いつものナマエの部屋でのいちゃいちゃと同じだなって思ったけど、いつもよりは建設的な話してるからまあいいか。
手持ち無沙汰でコーラ飲みながら、ナマエの口にポップコーンを詰めていく。オレの彼氏、まじで良い男過ぎる。オレ、昔付き合ってた子にこんなに好き好き言わなかったし。そう考えるとオレの彼氏力低すぎたかもしれない。知らなかったんだよな、好きって言われたら嬉しいってこと。
オレがはじめての恋人で、それが分かってるナマエ。やばすぎる。さっさと捕まえといて良かった。こんなのフリーにしてたらあっという間に掻っ攫われてた。
「あ」
ナマエの声に顔を上げると、さっきまではなかった扉が目の前の壁に生えてた。
リラックス、してたからな。なるほどな。
「出る?」
「ん、出る。こんなとこよりナマエの部屋がいい」
「かあいいこと言ってくれるね。早く三年になって個室欲しいなあ」
「オレが寮長になって個室貰うのが先かもよ」
「言うねえ」
大事なものみたいに手を差し出されて、その手を取って立ち上がる。オレの方が体力あるのにな。優しい。こういうとこ、すっげー好き。ここまで考えて「ナマエの優しいとこ、すげえ好き」とちゃんと言葉にした。言わなきゃわかんねえもんな。オレが頭の中で考えてたって、伝わんなきゃオレの可愛いとこ気付いて貰えないし。
「ひょえっ」といつもの変な声を出したナマエがキョドって、今日はオレの勝ちって思った。手をぎゅっと繋いで、扉の方へ行く。
その前に、食いかけのポップコーンを部屋中にぶちまけて飲み残しのコーラを蹴り飛ばした。
「二度とちょっかい掛けんなよゴミ!!」
「いいねえ、ぶっ殺すのフィンガーサインしてるエース。ワイルドで好きだよ」
「これからも色んなオレを見とけ、100万回惚れ直させてやるよ」
ドアを蹴り開けて部屋の中に唾を吐き捨てて脱出成功。怒ってるオレもナマエから見たら世界一可愛いから問題ねえの。本人が言ってんだからこれは確か。
次オレらに関わったら燃やしてやるからな、バカがよ。最後に後ろ手で中指を突き立てた。ナマエを見たら同じように中指を突き立ててる。言わなくても通じ合うってこういう事だよな。オレもこういうナマエ、ワイルドで好き♡
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