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お互いの髪を乾かして身なりを整えて、お互いの父親について仕事の真似事をしにいく。ルークはしっかりと狩人として働いているが、俺ができるのは父さんの手伝いくらいだ。魔法が使えるようになればもう少し出来ることも増えるんだけど……。ルークはもうユニーク魔法が使えるらしい。羽根帽子には魔法石が付けられていて、それを使えば問題なく発動できると言っていた。
俺もいつかユニーク魔法が使えるようになりたい。と言っても、魔法石は高いからうちじゃ新しく買えないだろうな。父さんが仕事で使うやつだけで手一杯だ。……ルークの家、本当に何をしているんだろう。いちばん近くに住んでいるとは言っても、あれは別荘みたいなものらしいし。大豪邸だし。そっくりな顔をしたきょうだいがたくさんいたし……。
考えてもよくわからなくなるので、頭を振って自分の仕事に集中することにした。
枝を集めて周囲の整備をして、丸太が通る道を作る。そんな作業を続けていると、今日もまた日が落ちてきた。一日が過ぎる時間がとても早い。子供の頃はもっと無限のような時間があったと思ったのに……と考えたが、それは前世の話だった。前世と今世合わせてしまったから、普通の子供のように時間を有意義に使えてないのかもしれない。たまに父さんから「お前と話してると歳が近いやつと話してる気分になる」と酷いことを言われる。まだぴちぴちの10歳なのに。ぴちぴち……とか、言うからいけないのか?
「ナマエ!」
「ルーク」
息を切らせたルークが飛びつくように草むらから出てくる。頬についた泥を指で拭い、髪に絡んだ葉を取ると「ありがとう」と笑った。
「ねえ、あのね。ふふ、ナマエ」
「どうしたの。何か嬉しいことがあったんだね」
「うん。ああ、言いたいなあ。でもダメ。君をたくさん驚かせたいのに」
「ルークは俺にだけお口がかるうくなっちゃう子だからね」
「モン・キュール! いけない子と叱っておくれ。この胸をふたつに割って、君にすべて晒してしまいたいんだ」
「いけない子、わるい子。俺を驚かせてくれるんでしょう? 良い子だからお口にリボン。内緒にしようね」
人差し指の腹でルークの唇を軽く押すと、くふくふと含み笑いをして頷いた。なにを企んでいるかはわからないが、自分から言いに来てくれるだけありがたい。突然いなくなって「実はあの時サバンナにいたんだよ」と後で言われる可能性が出てきてしまったからな……。
昨日は泣きながら帰ってきたルークだったが、今日は笑いながら俺と手を繋いでいる。俺たちが手を洗い夕食の準備を手伝い始めた頃に、ルークの父親もすぐに帰って「クックー! 親友たち、そして私の天使! さあキスと抱擁の時間さ!」と父さんを羽交い締めにして両頬にキスをあびせかけていた。現役木こりの本気パンチをものともしない肉体、凄いな。母さんには手の甲にキスのふりだけしていたので、ちゃんと理性はあるところがヤバさを引き立てている。
ルークもキスをされたあと俺も抱き上げられたが、ルークが「だめ!!」と叫んだおかげか、俺もキスのふりだけで命は助けられた。でも「お父様がごめんね」とルークから頬にキスをされたので、結局何も変わってないような気がする。
大きくなったらルークもこうなるんだろうなあという血の繋がりが強く感じられた。
「素敵なものを見せてあげるよ!」
「わあ、びっくりした」
「もっとびっくりさせてあげる」
空が紺色のドレスを纏い始めた頃、一切気配を出さないまま現れたルーク。俺はもう慣れたけど、他の人がこれをやられたら叫んで逃げるだろうなと思う。実際そうやってしまうから、ルークはいじめっ子と言われて避けられてしまうんだろうな。悪気だけはないんだけど、自分の欲望に忠実で決して諦めない不屈の心を持ってるから……。待っててね、と丸太の山を降りて、下から「よいしょ」と何かを持ち上げる音がする。手伝おうかと声をかけたが「大丈夫! そこで目を閉じて待っていて!」と断られた。仕方ないので、言われた通りに目を閉じる
「さあナマエ、目を開けて。私から君へのプレゼントさ!」
「……っ、これは」
言われるままに目を開けると、それは首だった。俺の腰ほどの高さのある獣の首が、俺の前に突き出されている。重量のあるそれを引きずるように持ちながら、ルークは「ちゃんと責任をとるって言っただろう?」と誇らしげだ。
「ルーク、君は……」
俺は思わず腰を抜かしてしまった。へたりこんで、ルークを見上げる。獣の巨大な頭でルークの顔が見えない。なんて、なんて、
「君はなんて素晴らしい狩人なんだ!」
俺たちの年齢で狩れるようなサイズの獲物じゃない。それを、1人で! この森で働く俺たち家族を守るために! 狩人の仕事は命懸けだ、ルークは俺のために命を張ってくれた。情けなく折れた足を叱咤して立ち上がり、親友に抱きつく。
「ありがとう! 君ほどの狩人はこの世にいないよ。なんて誠実な人だ、大好きだよ。俺のルーク!」
「んふふ、そう。そうだよ。私はナマエのルーク。誠実な狩人だよ」
「どうすれば俺がどれだけ嬉しいか、君の献身にどれだけ感謝しているかを伝えられるんだろう? 100万回のキスをしても、この気持ちは1ミリも満たされない。俺もこの胸をふたつに割って、ルークに全て晒してしまいたい!」
何度も頬にキスをしていると、ルークはくすぐったいと笑って「ナマエと私の心臓をふたつに割って、はんぶんこにしたいね」と言った。それは良い考えだ。俺の片方とルークの片方でひとつの心臓にしたら、ずっと同じ鼓動で生きられる。考えていることも伝え合うことが出来るだろう。こころは心臓に宿るのだから。
猪の首を前に、丸太の上でくるくると踊る。空にはルークの頬に散った星屑のようなミルキーウェイ。
「大好きだよ、ルーク!」
「私も、私も、君を愛してるよ!」
なかなか帰ってこない俺たちをむかえにきた父さんに「死体の前でなにしてんだ」と言われるまで、俺たちは不格好な舞踏会ごっこを続けていた。
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