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手紙を書く俺を見たクラスメイトになぜか『ナマエには婚約者がいる』なんて噂を立てられたが、俺もルークも言葉を惜しまないだけだ。好きなら好きと言い、逢いたいなら逢いたいと言う。特に手紙は対面ではないのだから、率直すぎるくらい率直じゃないと伝えたいことは伝わらない。
ルークから俺への手紙は彼の『こころ』そのままなので見せることは出来ないが、俺の『こころ』には何ひとつ恥となる部分がないので特に隠す必要も無いと休み時間に書いていただけなのに。変な子達。
「友達相手になんで愛してるとか抱きしめたいとか書くんだよ」と笑われたが、「妬かないで。俺は君のことも愛してるし抱きしめたいよ、おいで」と両腕を開いたら笑ってハグを返された。こういう事だよ、良い子。
日常報告としてこれも書いて送ったら、ルークからは速達で『愛しいナマエ。君に届かないこの距離が疎ましいよ、君からの手紙はいつも幸せな気持ちになるのに今日はとても耐えきれないんだ。ねえ、窓を開けて』とだけ書かれたものが来た。ガサリと枝が揺れる音がして、慌てて窓を開けて両腕を開く。
「モン・ベベ! いけない人、私を嫉妬させるなんて。君の言葉ひとつで私の心は簡単にちぎれてしまうのに!」
「ルーク!」
枝から飛び降りる身体を抱きしめる。全ての体重を預けた信頼を裏切らないように足に力を込めて、たたらを踏んだ。麦わらのような髪は前よりも少し伸びている。髪、額、頬に順番に口付けて、最後にお互いの鼻を擦り合うようにノーズキスをする。
「ルーク、君の行動力にはいつも驚くよ。嫉妬してしまったの? 俺のいちばんはいつも君なのに!」
「心の弱い私を叱っておくれ。いてもたってもいられなかったのさ、ナマエの抱擁は私だけのものだと思っていたのに……」
「悲しまないで、ごめんね?」
「謝らないで、ナマエ。君には何の非もないのだから」
「ルークを悲しませた時点で罪深いんだよ。俺の無神経が君の繊細な心にナイフを突き立てたんだろう? 伝えてくれてありがとう。言われないと気付けなかった俺を、どうか許して」
「ああずるい人! そんなことを言われたら、私は君を愛することしか出来ないのに!」
耳元で「んふふ」と子供の頃から変わらない含み笑いが聞こえる。良かった、傷ついたとは言っても笑ってくれている。ルークの素晴らしいところは、こうやって何が嫌だったのかをハッキリ教えてくれるところだ。俺のような愚鈍な男は、言われないと気付けないことが沢山ある。
「……ねえナマエ、私が今日ここへ来たのは嫉妬だけでは無いんだ。君は、卒業後どうするかもう決めたかい?」
ルークの頬をそっと両手で挟み、顔を近付ける。瞳を縁取る睫毛が束になって触れ合うのがくすぐったい。
「ナマエ?」
「ルーク。……はは、俺も君にそれが言いたかったんだ。手紙じゃなくて言葉で伝えたかった」
抱きしめられて俺だけしか見えなくなっているルークをそのままに、父さんから貰い受けた魔法石で手元に書類を引き寄せる。それをルークの手に持たせて、ハグから解放した。
「ナイトレイブンカレッジの、入学許可証……!」
「そう! ルーク、君と同じところへ行けるんだ! 俺にも許可証が届くなんて思ってもいなかった、君と学生生活がおくれるなんて、これほどの喜びはないよ!」
「私も、私も嬉しい!」
ルークの数人の兄姉(何名いるのかハッキリとはわからない)も全てナイトレイブンカレッジの卒業生だ。彼も同じようにナイトレイブンカレッジへ進むだろうと分かっていた。まさかそれに、俺も一緒に通えるなんて!
「ナマエと毎日、おはようとおやすみのキスが出来るようになるんだね……」
「もう16歳になるのに、キスは必要?」
「意地悪を言わないで。足りないぐらいさ」
ルークから何度も頬にキスをされて、ハンターグリーンの瞳が潤んで揺れる。そっと近付けられた唇に人差し指を軽く当てて止めると「ひどい……」といじけた子供のような声が出た。
「唇はダメ」
「勇気を出したのに」
「良い子のルーク。もう少し君が大人になって、それでも欲しかったら全部あげるよ」
「私はもう大人だよ」
「拗ねないで、可愛い良い子」
「もう……」
自分で自分を大人といううちは、可愛い良い子のままだよ。ミルキーウェイを淡く薄紅に色付かせた頬に俺からのキスをおくって、約束。
君がずっと俺を好きでいてくれたら、全部あげていいよ。どうかお願いだから、この世界を信じさせてくれ。大好きなルーク。
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