3
▼▲▼
「スマブラ?」
「主語だけで喋んな」
部屋に帰ってデュースに伝えると、オレのわからない呪文を使いはじめやがった。いや、ちょっと考えたら分かるけど。あの大人数でやる格闘ゲームみたいなやつだろ? アニキがやってたから知ってる。
なにそのナマエと言えばコレね、みたいな手馴れた感じ。そう言えばナマエはゲーマーってはなし、どっかで聞いたことがある気がする。
映画みるんだよって言ったら「僕たちもいていいのか?」って変な遠慮してくるから、「当たり前じゃん」ってこたえた。てか、2人きりにされても困るし。オレの立場もなんなのよって感じになるじゃん? 惚れ薬引っ被って自分に惚れちゃった男を部屋に連れ込むってなに? お気に入りだったからわざわざ家から持ってきたブルーレイを荷物の底から発掘して、明日の用意は終わり。意外と今日のデート、楽しかったなって思いながら寝た。
「ただいまー」
「おじゃましまあ〜す……」
「ナマエ、久しぶり」
鏡の間でおどおどしてたナマエを回収して来たら、部屋でデュースがポップコーンを皿によそって待ってた。キッチンでパンパンやってたのはこれか、誰か撃ってんのかって思ってた。
デュース以外の2人は用事があって他のとこ泊まりに行ってるから、今日は3人で映画鑑賞して雑魚寝予定。泊まれって言った時のナマエの顔、めちゃくちゃ面白かった。「俺なんてそこらの壁の隙間に立ったまま寝るんで……」って訳わかんねえこといってたけど、イグニハイドってそんなに壁に隙間とかある感じ? ハーツラビュルには壁の隙間とかないからわかんねえ。
「デュース! 久しぶり〜。同じガッコでも案外会わねえね」
「お前があらゆる隅に隠れてるからだろ。もっと表出てこいよ」
「逆にデュースが表出過ぎですからあ。あ、これコーラね」
「ありがとう、ポップコーンは用意してる」
「やった〜神の2点セット」
「おい」
「ひぇっ!」
「ん!?」
「なんでオレよりデュースとの方が楽しそうなんだよ」
は? なにその満面の笑み。
めちゃくちゃホッとした顔してんのなに。
ナマエが好きなのオレなんじゃねーの? なに幼なじみと会った時の方がニッコニコしてんだよ。オレの前で見せろよ、その顔はよ。
「はわわわこれはですねえ、親の顔より見た幼なじみにはどうしてもこうなっちゃいまして……好きな子には緊張して当然と言いますかあ……」
「エース。正直惚れ薬より単純接触効果の方が強いと思うぞ」
「えっ! なに!? デュースお前急に喧嘩売ってきた!? 『単純接触効果』ってどうして知ってんの!? 偽者かてめーー」
「僕も常日頃勉強してるからこれくらい知ってるんだ」
なに得意気に鼻鳴らしてんだこいつ。えっっ、もしかしてマジでデュース、ナマエの事が好きなかんじ?
ナマエはオレたちがちょっとピリついてるから「まあまあまあまあ、3人でいるのに2人しかわかんないはなしするの無礼よな。せっかく誘ってくれたのに嫌な気持ちにさせてごめんねえ」ってオレの前に出た。デュースから庇ってくれるかたち。だから、まあいいかなってなった。
デュースが単純接触効果とかちょっと難しめの言葉知ってるのはほんと生意気だなって思うけど、ナマエはオレを優先したし。
ナマエの後ろで勝ち誇ってると、デュースも「そうだな、2人だけで喋ってて悪かったよ、ごめん」って普通に謝ってきたから「なんかオレだけわがままっぽくなってね?! 謝んなよ!」ってとめて和解。
床にクッション敷いて座って、ポップコーン食べてコーラ飲んで映画を見る。2人ともこれははじめて見たみたいで集中してた。オレはもう5回目くらいだから余裕あるし、こっそりナマエの横顔を観察する。
映画を見るために明かりを消した部屋で、俳優が楽しそうだとナマエも楽しそうで、俳優が悲しそうだとナマエも悲しそうになってる。単純。すげえ楽しんでくれてるじゃん。おもしれえの。みせてやった甲斐があるなあって思ってポップコーンを食べる。
映画が終わったあとの感想も楽しかった。デュースは語彙が死んでるから「ヒロインがナイフをもってバーン! ってなったところが良い!」とか勢いだけだけど、その勢いが面白い。ナマエはそれを「ヒロインの感情の爆発が主人公から受け取ったナイフを手に取ることにより印象的になってる。自分で戦う覚悟を持ってからの彼女はもはや戦士」って訳してくれるし、これにはオレもついていけるから結構白熱した。
普通に楽しいし、これからもこんな感じで集まりたいな。今日は予定あって来れなかったけど、監督生とグリムもまぜてさ。
盛り上がりすぎて気付いたら0時を超えていて、じゃあそろそろ寝ようぜってなった。ベッドにクッション並べてたら「は!?」ってひっくり返った声。顔を真っ赤にしたナマエが「あのあのあの!」って壁の方に逃げてる。
「あのお! 俺の勘違いかもしれないんですけどぉ! もしかして、エースくん、俺にベッド……」
「一緒に寝ればいいじゃん? 入るだろ」
「ひえええ助けてえええ」
「は? なんでデュースに助け求めるんだよ。喜べよ。大好きなオレのベッドを使えるんだぞ」
ナマエは右往左往しながら眉を下げてへらへら笑ってるから、もう少し押せばいけそう。てかいちいち気にしなくていいじゃん。好きな子の近くで寝れるのってラッキーだろ。オレのサービス精神だけど?
「ナマエは僕のベッド」
「ぐおっ」
流れるようにエルボーを喰らってナマエがデュースのベッドに落ちていく。うわ怖。有無を言わせぬ真顔で「夜も遅いから寝るぞ」と言われたので、頷いた。
幼なじみ、過保護過ぎ。
カーテンを引かれて、隣のベッドで2人がなんかコソコソ話してるのが聞こえる。なに。気に食わねえ。ナマエはオレのことが好きなんだろ。じゃあオレを優先しろよ。ムカつく。
▲▼▲