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「ど? 今日もオレのこと好き?」
「うん、大好き」
「ありがと」
いつも授業とか端っこの方で受けてるのに、オレの近くの席に座るようになってる。オレの事が大好きだから、近くにいたいんだろうな。ナマエって好きなやつ相手だと物分り良くていいよな。
オレの昔付き合ってた子、ちゃんと察してやんないとすぐ泣いたり怒ったりしてちょっとめんどくさかった。やだよなあ、恋して泣いたり喚いたり嫉妬したりする奴。
たまにだったら可愛いけど、ずっとそれだと恥ずかしいって思わねえのかな。
その点、ナマエは自分から何も言ってこないとこ健気で良いと思うよ。ちゃんと言葉には出てくるし、見ればわかるってくらいに態度にも出るから不安とかないし。デュースとずぶずぶの関係ってとこだけちょっと嫌だけど、幼なじみってのはもうしょうがねえってわかるから諦めた。
「ナマエってあと2日でオレのこと嫌いになんの?」
「惚れ薬効果きれたって嫌いにはなりませんよお」
「わかんねえじゃん。オレ結構わがままいって振り回したし。効果きれた途端ムカついて嫌になったりするんじゃない」
「わがままもオレを喜ばせようとしてくれたやつでしょ、分かってますからあ」
「オレは面白がって言ってただけだし、調子乗んな」
「ほんとに面白がってる人って、自分からは言わないんだよなあ」
デートもお泊まりも、今みたいにくっついて喋ってるのも、ナマエのノートの端っこに小さく落書きしてるのだって、全部オレがナマエをからかってやってんの。それ以外の理由なんてあるわけないだろ。
「エースはね、優しいから好きだよ。オレが勝手に事故っただけなんだから、気持ちわりいなってバカにして笑ってもいいのに、オレのこと1回もバカにしなかった。ありがとねえ」
「……オレ、人が本気で好きって言ってる時にバカにするような事しねえし」
「うん、嬉しかった」
「……まだ終わってないなら勝手に過去形で言ってんじゃねえよ」
ナマエは惚れた欲目でオレのこと良い感じに見てるけど、オレは普通にナマエのことバカにしてたし。デュースに釘刺されなかったらキスの1つ2つしてやってからかってやろうかなって思ってた。
ナマエがありがとうって言って、「あ、アレってやっちゃダメな事だったんだ」って初めて気付いた。
「惚れ薬を被った時、最初に見たのがエースで良かったって思ってるよ。好きになるなら、君が良かった」
「……あっそ」
なんか思ったよりぶっきらぼうな声が出たけど、机に突っ伏してたらナマエの笑い声が聞こえた。嫌な気持ちになってないみたいで、よかったって思う。
オレも、惚れ薬被ったから、ナマエを見たいかも。だって実際、こうやって親しくなったわけじゃん。オレがめんどくさい事になってもお互い様だろ。
もし、惚れ薬を引っ被ったのがオレだったらどうなってたんだろう。
解除薬はまずいから、たぶん飲まない。オレの薬がきれるまで、恋人ごっこしてとか言いそう。ナマエは優しいやつだから、オレみたいに意地悪なからかいとかしようとしないだろうな。
ナマエとデュースと仲良いのに気付いて、部屋でデュースに絡んで怒られそう。
プレゼント贈りたいな、オレがナマエのこと好きだったって事一生覚えてて欲しいし。服とかいいかも。それ着る度にオレのこと思い出すの。
ナマエの部屋にも行きたい。オレ、ゲームのことよくわかんねえけどやってるのを見るのは結構好きだし。
なんだろう。ちょっと惜しいな。せっかく仲良くなってきたから、もっと仲良くなりてえってかんじ。
惚れ薬ってなんで期間限定なんだろ。一生オレのこと好きになってればいいじゃん。ナマエが一生懸命お願いすんなら、別に、付き合ってやってもいいんだけど。
そこまで自分で考えて、訳がわかんなくなった。こんなの可笑しい。だってこれじゃまるで、オレが、
「エース、どうしたの」
「なんでも、ない。へーき。今日、部活あるから先行く! じゃあな!」
「あ、うん。ばいばい」
間の抜けた顔をしたナマエが手を振ってくるからそれを返して、部活時間までまだあるのに急いで走る。バスケ部の更衣室には当たり前にまだ誰も来てない。ベンチに座り込んで、顔中に集まる熱を両手に逃がした。
「は? はあ? うそだろ、ちょろすぎじゃん……」
え、オレまさか、ほんの数日好き好き言われただけで好きになっちゃったの? ナマエに? ちょっと優しくされて、ちょっと好きだって言われただけで?
嘘だろ。嘘、嘘だ。こんなのってない。
「ニセモノなのに……?」
口に出した言葉は想像以上に重くて、痛かった。
嘘だろ。オレ、初めっから『ない』ものが好きになったの? ひどくね? ナマエの『好き』ってニセモノじゃん。なのに?
もう少しで終わるのに?
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