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手持ちの服を引きずり出してベッドに出しながら何を着ようかって悩む。ナマエは前回の私服の感じからして、シンプルなデザインが好きなのかも。だったらオレはちょっと装飾あった方がバランスいいよな。でもこういうのって2人並んだ時のバランスっていうか、ナマエの好みに合わせた方がいいかな。
「ナマエってどんな服が好きとかわかる?」
「丈夫なやつ」
「役立たずがよ……」
仕方ないだろ! だいたいジャージ着て生きてる奴なんだから! って喚かれたけど、協力しろよな……。せめて好きな色は? って情報吐かせたら黒っていうから、オレも差し色黒の服を選んだ。そういえば、この前ナマエが着てた服って差し色が赤だったな……。普段ジャージしか着てないって言われてるのに、わざわざ差し色赤くしたの、オレの好きな色だからかな。え、愛じゃん。うれし。
デュースがナマエから借りパクしていたゲームは原作がアニメだってわかったから、テレビを占拠して流しっぱなしにしてる。今これの最新映画がやってるらしいから、明日のデートはこれを観に行く予定。事前に前作でも観ておくかなって思ったけど、シリーズ8周年ってふざけんなよ。オレの人生の半分じゃねえか。
女の子たちが魔法士になる為に奮闘してる系のやつ。流し見だけど、さすが何年も続いてるだけあって1話1話のクオリティ高いなってのはわかる。
映画はアニメと話が繋がってるって訳じゃないらしいから、主人公まわりの登場人物さえ抑えておけばわからなくても大丈夫らしい。まあそうだよな、これ子供向けっぽいし。観る人も入れ替わっていくから、参入がどこからでも問題ないってのは大切。8年間ずっと見てるやつの方が少ないだろ。ひとつのことを大切に出来るってすごいと思う。一種の才能。そういうとこ好き。
目覚ましが鳴る前にすげえ早起きした。こんな時間ジャックとかセベクくらいしか起きてないだろ。ちょっと空暗いもん。嘘だろ、オレめちゃくちゃ楽しみにしてる。
二度寝とかできるテンションじゃないから、さっさとシャワー浴びて、マジプリの情報仕入れて、ナマエからの返信を何度も見返してはニヤニヤしてた。
それだけで時間はあっという間に過ぎて行って、予定よりもちょっと早く待ち合わせの場所につくとナマエが居た。
オレ、15分前についたのにそれよりも先に居たってこと? もしかして前もそうやって待っててくれた?
早くナマエのとこに行きたいって気持ちと、髪型とか崩れてないか確認したいって気持ちでめちゃくちゃになる。もう手櫛でいいや、オレはいつでもどのタイミングでも格好良いから問題ないだろ。
「なんでオレより早く来てんだよ!」
「あれ、エース。まだ15分前だよ」
「知ってる! 誘ったオレより先についてるんじゃねえよ」
軽く叩くふりをしたら「ごめんね、早く会いたくってさあ」って笑われて胸がキュンキュンした。好き。そんなこと言われたら「じゃあ許す……」しか言えねえだろ。卑怯だ。
「今日はどこ行くの?」
「映画」
何見ようか、エースが好きそうなやつやってたけどそれにする? って、オレのことばかり言う。ナマエが出てきた映画の名前は、確かにオレも今度みたいって思ってたやつ。
ほんの数日なのに、オレのこと観察していろいろ考えてくれてたんだなって、これだけでわかる。オレのこと気にかけて、オレが楽しく過ごせるようにいろいろ考えてくれて、これがナマエの『恋』なんだって思うと、なんかもう訳わかんない気持ちでいっぱいになった。心臓がぎゅーーってなるくせに、嬉しい。痛いのに嬉しい。
「…… マジカルプリンセス、観る」
「えっっっっっなんで!!?」
「お前が好きなやつだから」
それっぽい言い訳とか、いくらでもできるけど。ナマエみたいなやつは回りくどく言ったって意地張って適当な言い訳したって、伝わって欲しいことは何一つ伝わらないだろ。だから、こういうのは真っ直ぐ言わないとダメ。
「ナマエが喜んでくれると嬉しいなって思ったから、観るんだよ」
「ひょえっ」
こんな素直なオレなんて希少価値高いんだからな。あーー、顔赤い気がする。ナマエも変な声を上げて顔真っ赤にしてる。オレとナマエだったら、ナマエの方が真っ赤だから。 ノーカン。
「ちょっとあちぃね」って言いながら映画館に向かって歩いて、ナマエの手を勝手に掴んで繋いだ。一瞬で手汗かくじゃん。そんな緊張しないでいいのにさ。
「どうなさった!?」って喚いてるから、「オレが繋ぎたくなったの」って言って黙らせた。
湿った手のひら。全然嫌じゃないから、オレのこの気持ちはホンモノなんだって改めて理解しちゃったな。
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