はじまりは燭台切のせい


やあ僕罪のない審神者マン。先日、初めてのお見合いを宗三にぶち壊された審神者マンだよ。

「あとは若いお二人で」の段階でどうやって追いかけてきたのか、小夜を抱いた宗三が庭から飛び出し、「まだ幼い小夜と僕と和睦を捨てるのですか・・・なんて非道いお方・・・」とわざとらしくヨヨヨ泣きしたりしたせいで見合い相手の顔面に茶を噴出して全てが無に帰した。

それからずっとローテンションなので、なんか喚いている燭台切が俺を探しているのにかかわりたくない。

「主!主くん!怒らないから出ておいで!」

既に怒っているやつが言っていいセリフではない。なんだその足音。象か貴様。

「主くん!どこ!!君でしょ!?僕の胸から!!!乳が出てるんだけど!!」

「なにそれ怖すぎ・・・引く・・・」

「そこか!!」

あまりにもとんでもない言葉が聞こえたせいで口をついて漏れた声に気付かれ、廊下から拳で壁ドンされた。崩れた壁の向こうから燭台切が笑顔で手を振っている。こわ・・・なにこれ殺されるの・・・乳のせいで死ぬの俺・・・やだよ・・・。

首根っこを掴まれてずりずりと隣の部屋まで連行されていく。今の俺には燭台切のテンションにはついていけない。もう何とでもして。

後ろ手に戸を閉め、真面目な顔をした燭台切はもう一度口を開いた。

「僕の胸からおっぱいが出てるんだけど」

やっぱりこいつあたまおかしい。怖い・・・近寄らんといて・・・。胸からおっぱいってなんだよ、二段階攻撃かよ・・・。副乳かよ・・・おっぱいロケットでもついてんのやめてよ・・・こわいよ・・・。

「なんだいその眼は!ほら、さわって確かめてみて!」

「ヒィッ!じんわりあたたかい!じんわり濡れてるヒイィィッ」

「ほらほらもっと揉んで確かめて!?本番はこれからだよ主くん!ぴーすぴーすしてあげようか!?」

「ヤメテ!軽度の性的な表現を含みます!?」

手首の関節をキメて強制的に乳を揉ませてくる暴漢に震えあがり、か細い悲鳴を上げる哀れな俺。それを障子の向こうから死んだ目で見ているこんのすけ。

こんのすけが無言で表示したデータが、燭台切の背後の空間に浮かび上がり表示される。ああ、そう・・・そういう事でしたか。

「いいかげん本当の事を言ったらどうだい!僕見たことある!!審神者パワーでなんやかんやあってアンアンらめえだ!!僕見たことある!!母乳ぷれいで僕ママになっちゃう落ちだ!!見たことある!!!いんたーねっとで書いてた!!」

「お、おう」

「ああーーー!!主くんの!肉奴隷にされちゃう!!離れに囲われて!朝な夕なさくにゅうぷれいなんだ!!」

「離れは俺の趣味部屋にしてるからちょっと…」

「主くんの趣味の洋裁で深夜のこすぷれしょーをされてしまう!!!ばにーにされてしまう!!!」

「着ぐるみならなんとか…」

「主くんが滾る性慾を僕に向けたせいで!みちゅただはだぶるぴーすを!!」

「その件だけどこんのすけからの連絡によると顕現時の霊力配合ミスによるものが今発症しただけで、数時間で治るらしいぞ。割とあるらしい」


「えっ」



「なにか言うことは?」

「騒ぎ立ててしまい誠に申し訳ありませんでした」


うんうんわかるよー。なにこのドスケベコンテンツ向けの不調。人間の身体を作るときにホルモンの配合は霊力で影響されるんだけどうんぬんかんぬんかくかくしかじか。詳しくは学者先生に聞いてね!

深々と頭を下げる燭台切の頭をペイッと叩いてから髪の毛をかき混ぜるように手櫛で梳かす。「ぅぁぁあ〜・・・」と潰されたカエルのような声で呻くが、今回は自分の勘違いのせいなので我慢しているらしい。

「燭台切よ」

「なんだい・・・?」

「俺はお前に、インターネット使用禁止解除を出してないぞ?」

「・・・・・・!」

「さて、とりあえずその事からお説教を開始しようか・・・」

悲しげな声をあげた燭台切を無視し、閉められた戸を開けた。「うわっ」「くっ」と崩れ落ちるデバガメ隊を確保。

「俺は覗くつもりなんてなかったんですよ!兄弟が気になるって引っ張ってきただけで」

「鯰尾がやりました俺は悪くない」

「すごい裏切りを受けた!!主!骨喰を叱ってください!こいつ最近俺の扱い悪いんです!」

「はいはい二人共こい」

燭台切から刀を借りて狙いをつけ、鞘で天井を一突き。「チュッ」「チューッ」とでっかいネズミの声がする。

「これは燭台切光忠、青銅の燭台だって切れちゃうんだよ格好いいね」

「かっこいい?えへへ」今はそういう意味で褒めてないので黙ってくれ。ごとごとと天井板が動き、デバガメ隊第二陣の薬研と厚を確保。

「ばれちゃ仕方ねえ、俺だぜ」

「くっそーばれた!刀持ち出すのはずるいぞ大将!」

「はいはい審神者が刀使って何が悪い」

庭に向かって「ばれてるぞ、出てこい」と声をかけると軒下から無駄に格好つけた粟田口の年長組二人が這い出てきた。

『さすが主様!鳴狐の完璧な土への擬態を容易く見破られるとは!さすがの手腕に御座います!』「すごい」

「いやはや・・・このような姿で失礼いたしました。後藤の声が聞こえたような気がしましたゆえ」

「はいはい後藤は乱たちが迎えに行っているから適当言うな」


現在本丸内に残っている粟田口が全員集合してしまった。あー、あと誰かいたかな・・・。

とりあえずこれだけでいいか。



「第9823回、集団お説教を始めます」


またかよというブーイングに俺は全力で言い返した。

「9823回もやらせんなよ!?!!!?」

野郎共がこんなに集まって、しかもそれが自分の中の面倒くさい部分を引き継いでいたらこうなってしかたないだろう。特別な問題児は別として、複数容疑者が集まった場合はこうするのが当本丸の恒例行事となっている。粟田口はだいたいデバガメでこうなる。お前らの知りたがりはなんなの?小2の俺の心が影響してしまったの?女の子のスカートの中を知りたくて、お母さんに頼み込んで泣くほど怒られた俺の話からはじめる?

「主くん、漏れたミルクが冷えて辛いからシャツを変えてきていいかい」

「そこで脱いでろ」

「そんな・・・っひどいよ、羞恥ぷれえって言うんだよね?!ぴーすぴーす!」

「うっせえお前の本体で沢庵切ってやろうか!」

「沢庵切光忠」

「くさそう」

「ひどい!」

「たいしょー、鯰尾と骨喰が燭台切の旦那を泣かせてるぜ」

「泣かせんなよー」

『沢庵切!食がすすみそうで良い名前ではありませんか!』「沢庵専用包丁」

「『じっくり漬かった沢庵だって切れるんだよ!』ですかな」

「うわああああん!粟田口が!粟田口が虐めるよ!!」



「小学校か!!!?!!解散!!!!?!」


あまりの混迷ぶりにうっかり解散の号令を出した瞬間、誰のかわからない「ッシャオラ」という声と同時に一瞬でみんないなくなった。



うん。

いつもこんなかんじ。

だからほら、俺は大人になったんだ・・・。

俺がまともにならないと、こんなの運営できない・・・。


今度は遠くで宗三を探す江雪の低い声が地獄の底を這う蛇のように響いている。

ああ、今日も、  今日も本丸は平和です。


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