選んだ鶴丸のセンスのせい


同期の仲間(弟子番号17番)が「ゴールデンデリシャスアップルシャーベットになって女子高生に食べられて女子校生の血肉に溶けたい!」と全裸で本丸内を走り回り、池にダイブして「バタフライ!バタフライ!!」と大暴れしたのち、病院に運ばれた事件から2年たって、ようやく心が現実に帰ってきたという報告を受けたのでお見舞いに行ってきた元気な審神者マンです以下略!

あんなに真面目だった17番があんな事になるなんて、ブラック本丸の語源となった『ブラック企業』それに付随した『ブラック上司』というものは恐ろしい。担当がブラックだと人間はああなってしまうものなのか…。

うちの宗三でさえ、あいつの見舞いに行くと真面目な顔をして「御自愛下さい」というからガチめにやばい。

まあ、あいつが現場復帰したら担当も俺と同じ人になるから、もう二度と「ぷりきゅぁになる〜〜〜!!世界の平和を守る〜〜〜〜!!」と叫んで沈静剤を打たれることはないだろうし、その言葉に「このような姿になってまで平和を祈られるなんて…」と奴の近侍の江雪が泣くこともないはずだ。ホロホロ泣いてる江雪を見て、驚愕の顔をしたクルマサカオウムが病室を出た後に「僕があんなに叫んだら無言で拳骨ですよ。主、もしや貴方…江雪兄様を顕現させる時にゴリラの事でも考えました?」と聞いてきた。チクッといた。殴られてた。

脳天直撃型の拳骨を喰らってぶーぶー文句を言っている宗三をみて、常々思う。

こいつもまた被害者なのだと。

ノーマル宗三だったら少なくとも江雪に和睦の道をショートカットして和睦(物理)なんてことはされないはずだ。

最近実家から送ってもらったホームビデオみたら、ほんと俺そっくりだった。ほんと…ごめん…ごめんな…お前をこんなことにしてしまって…。江雪の傍が異常に居心地良いなっておもっていたのは兄貴に似ていたからだし、長谷部が可愛いのは昔飼ってたわんこのペス次郎に似ていたからだ…。審神者マン知らなかったの、こんなにもかつての環境が影響されるなんて知らなかった…。次、鍛刀する時は心を落ち着かせるためにクラシック聞きながら顕現させるから…。ゆるして…。

そんなクルマサカオウムの悪意のない邪悪に翻弄されるランキング2位の鶴丸は、本当に可哀想。俺が他所で聞く鶴丸国永という刀よりもだいぶまろやかで大人しい罪のない性格をしているのに、ちょっとした悪戯で悪夢のような返し技を喰らい泣き濡れている。

1位の長谷部は宗三が何かをすると逐一報告してきて「奴はあんなことこんなことをしてきました。しかし、俺は泣きません!強い子ですので!」とキリリとした顔で、褒めろ慰めろあいつを叱ってくれとアピールしてくる。長谷部マジ、ペス次郎。かわいいよしよし。

長谷部のメンタルは宗三並みに極太なので置いといて、鶴丸は我慢して自分の中で抑え込むところがあるので、俺から気を使って様子をみていかないとならない。良い子ほど放っておかれる現象は好ましくない。


「という事で、お前にはこれを一番に貸してやろう」

「という事でと言われてもなあ。いったいこれは何だ?絡繰りって事だけはわかるぜ」

鶴丸に渡したのは数百年前に流行った『デジカメ』という機械だ。

映像を『カメラ』におさめて画像を記録するもので、最近また若い女の子の間で流行しているらしい。一通り二人で説明書きを読めば、俺よりも早く理解した鶴丸が「君に驚きを与えよう!」と走りだしていった。

そうだ。いいぞ。お前の好きなものを撮るがいい。

今日の俺はお前がアリジゴクの画像を連射しようが、刀剣変顔ランキングを作ろうが全部褒めてやるからな。

生き生きと走り出した鶴丸の影響で、本丸のあちこちからなにかしらの声が聞こえるが、俺は何があってもお前を庇うからな…。今日だけは鶴丸をえこひいきすると決めたんだ…。

「離れが!主の趣味部屋である離れに鶴丸が――!!」

「んだとテメェ事と次第によっちゃテメエの本体でスイカ割りすっぞオルァ!!!!」

「わはは、すまんすまん!!手は出さん!」






鶴丸が帰ってきたのは皆の内番が終わり、遠征組がかえってきた頃だった。

いろんなところにもぐりこんだのか、白い装束は薄汚れているし草のにおいがする。満足そうに「見てくれ」と差し出されたデジカメを受け取って、小さい画面を二人で確認した。

最初の何枚かはブレていたりピントがずれていたが、すぐに慣れたようだ。

驚くことに、まともだった。馬のあばれん棒のアップとかは必ずあると思っていたのに、昼寝をしている岩融と今剣や、遊んでいる短刀たち。馬の世話をしてる左文字兄弟に、小さな お花など、ゆるふわ森ガール的な写真しかない。どうしたんだ…誰かに脅されたとでもいうのか…。

「驚いたか!君の中の俺への印象を裏切ってやったぜ!こういうのが好きだろう?」

圧倒的ドヤ顔だが、違う。違うんだ鶴丸よ。

「俺が好きそうなものじゃなくて、鶴丸が撮りたいものを撮っていいんだぞ」

「俺は俺の撮りたいものを撮ったさ。被写体がいきいきしているだろう?俺のてくにっく、というやつだ!」

「まあ…確かにな」

花はもとより、男士たちの顔は皆明るい。「これが君の作った本丸と、君が呼んだ刀だ」と言われた時は悔しい事にジーンときた。俺をときめかせてどうするつもり?欲しいって言ってた『殴りつけると延々笑い声をあげるだけの謎の袋』今度買ってきてあげるね。色は白でいいかな?

個人的に一番面白いのは、不審そうな顔をした長谷部が徐々に近づいてくる連写のやつだ。

「おいカメラ止めろ」みたいな顔をしているが、手のひらのアップのあとにお澄まし顔でキリッと撮られてる写真は「これは主のかめらだ」と教えられた後のものだと思われる。即堕ち3コマかよペス次郎。


「一番の傑作はこの花だな」

「うん、綺麗に撮れてるなあ」

「君は知ってるか?この可憐な小花の名はオオイヌノフグリって言うらしい」

「あーそういえばそんな名前だったな」

「でっかい犬のきんたま」


今日一番美しい微笑みだった。


「俺はもうこれを撮りたいが為に本丸中を駆け回ったさ!!こんな可憐な小花が!きんたま!犬の!きんたま!大犬のふぐり!ふぐりだぞ!」

「やめて」

「でっかい犬のきんたまを綺麗に撮る俺!!!」

「やめて」

「このはいてくは楽しいなあ、また貸してくれよ!」

「もう絶対貸さない」

二度と貸さない。絶対にだ。


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