これは完全に宗三のせい


「若くて精神状態が安定している弟子がお前しかいなかったから聞くけど、見合いしない?」と師匠に言われたので頷いた審神者マンですドーモ=コンニチハ。

「俺には心に決めた初恋のあの子が・・・!」と一旦拒否したが、一緒についてきた青江が「え・・・それって八歳の時から好きだったっていう例の子かい・・・?その子は君と同い年だろう、もう結婚して子供も二人位いておかしくないよ。現実をみよう?」と全力でドン引かれた。あれはストーカーとか、そういうものをみる眼だった。ば、晩婚化進んでるし結婚してないかもしれないじゃん・・・!

しかし、実際問題審神者になると現世より結婚が厳しい。伊達家ゆかりの刀たちには「ずんだもちみたいでかわいい」と絶賛され、初代見習いちゃんが立てたと思われるスレッドではわざわざ【イケメン(ではない)】と記述される顔面偏差値を持つ俺が、見合い以外で女性と出会いそして結婚なんて流れは想像できない・・・。

何と言っても審神者関係の女性は全て、刀剣男士を見慣れている。

女性審神者から望んでのお見合いなんて、そんな・・・そんな・・・ありがとうございます!!!結婚したいです!!!お見合させてください!!!

そういえば17番(精神状態悪化により病院へ逆戻り)以外にも師匠には俺と近い年の弟子がいたはずだけど、どうしたのかな!気にしないでおこう!


そんなこんなでわざわざスーツを仕立て、高級料亭で鹿威しの音を聞きながらお見合い相手と対峙することになったのであったたたた。

ちらりと視線をあげると、白い肌の美人さんがうっすら優しく微笑んでいる。は、はわわわ。

我ながら気持ち悪くもじもじしているが、そういえば俺、10年以上身内以外の女の人と5分以上話したことがない。元見習いちゃんはそういう対象じゃなかったので抜かす。

嘘だろ・・・この綺麗な女の人が俺のお嫁さんになってもいいよって言ってくれてんの・・・まじかよ・・・女神・・・・・・?僕あなたのためなら検非違使みなごろしにします・・・高速槍の頭蓋骨でつくった杯で貴女と祝い酒を飲み交わしたい…。

「主」

「・・・っ、すまん」

青江に掌をつねられて我にかえった。

やばい。あまりに恋愛から離れすぎていて魅了耐性がほぼゼロになっていた。

もじもじしてまともに喋れない俺の代わりに、青江がペラペラと俺の売り込みをしてくれている。


「今は緊張してこの調子だけど、本当はもっと賑やかな性格をしているから笑顔が絶えない家庭を築けると思うよ。少し元気すぎるところもあるけど、最近では落ち着いてきたし面倒見もいい。

僕たち刀剣男士を善く使ってくれる。これがここ数年の当本丸での戦歴をまとめたものだけど、破壊された刀剣はゼロ。資材の無駄使いもせず、物欲は本人もあまりないみたいだね。趣味は洋裁で離れをひとつ占拠しているけど、次の資料をめくってもらえるかい?技術は玄人と言っても過言ではないだろう?彼を伴侶に決めたら、君の主のウエディングドレスは彼の手作り。それって素敵なことだとおもわないかい?」

「へえ!すごいね。戦歴も素晴らしいし積極的に弟子をとっているから政府の覚えもめでたい。担当者も素性がわれているから、青江君の主さんに嫁げば背後の護りも確実だね。洋裁が趣味だなんて格好いいよ、この写真は君の本丸の燭台切?良い服を着てる、刀剣男士のことをよく見ているね!人間性がわかるよ。

ところで僕の主についてだけど、彼女も今とても緊張しているんだ。いつもは彼女も元気な子なんだよ、おしとやかが好みと言われてしまうと困るけど、強い女性は美しいだろう?嘘を吐かない誠実さと自分を偽らない強さもある。それに彼女も、僕達を善く使ってくれる。お似合いの二人になれると思うんだ」

すごい・・・俺の青江とお相手さんの燭台切の売り込みがすごい。どこか鬼気迫る姿だ。

ねえ青江、その資料、昨日徹夜して作ってたやつ?俺が頼んだ政府提出用の資料じゃなかったの?もしかしてあれ手付かずなの?やだ・・・今日一緒に頑張ろうな・・・。

燭台切もどこから用意したのか卓上ホワイトボードで【主のアピールポイント!】という表で推してくる。得意料理はカレー?俺カレー大好きです貴女と同じ墓に入ります。


忍び寄る陰に、白熱した議論を交わす二振りは気付かず。また、ただの人間である俺と彼女も気付く事が出来なかった。


「見つけましたよ・・・!まだ幼い小夜と僕と和睦を捨てるのですか・・・なんて非道いお方・・・」

宗三左文字が現れた!!

その瞬間。飲んでいたお茶はお相手さんの顔面に噴出されて、俺はこの見合いの終わりを悟った。「申し訳ありません!!」とテーブルに頭を叩きつけてから庭に飛び出し、死んだ目をした小夜を抱えた宗三の頭をお盆でぶん殴る。お盆は割れたが、余裕で瓦を20枚割る兄の拳骨に慣れている宗三には屁でもない。さきほどのヨヨヨ泣きはなんだったのかという顔でふてぶてしく立っている。

「何でだ!!なぜこんなことを!!!」

「所帯を持つなんて100年早いんですよ。審神者として生きて死んでください」

「鬼か!!」

「神です」

「俺だって結婚して妻と子供が欲しいんだよ!人間だもの!さにお!!」

「コンインカッコカリが実装されるまで待てば良いじゃないですか」

「はあ!?!!」

「ああ喧しい…耳が痛いです」

「コンインカッコカリ実装されたとして誰が結婚してくれんだよ!!お前か!お前はこんな凡庸な男と結婚したいか?!人間対人間ならまだやれる可能性あるんだよ邪魔しないで下さる!?」

「いいですよ、結婚」

「はあ?!」

「貴方と結婚して子供も作ってあげますよ。貴方の時代では同性でも子供はこさえられるのでしょう?まあ、この身は人とは違いますので子種さえ注がれればこの腹でうめそうですね。試しますか」

「小夜ーーお前のあんちゃんがまた阿呆なこといってんぞー回収しろー」

「くそやろうめ」

宗三に片手で制されながらも果敢に立ち向かう俺の背後で、青江と小夜がお相手さんに土下座をしていた。よかったな!向こうの燭台切が寛大で!「ok.ok!こんなこともあるって!」と主人の顔面を布巾で拭いて「塗装が剥げる!」と殴られるような気安い性格でよかったな!うちの燭台切だったら、俺の顔面に茶を噴出なんてされようもんなら武士語で抜刀だぞ!

ああ〜〜〜っっ・・・刀剣男士は審神者に似る〜…っっ。気安くて心が広い女性審神者だということが確実〜〜でも〜〜〜〜宗三のせいで〜〜〜〜〜っっっ。


「貴方の甲斐性だと新築戸建てなんて買えないでしょう。本丸があるのだから本丸で生活出来る相手を探した方が経済的ですよ」

「うるせえ!都心にヘーベルハウスの戸建て建ててやる!!」


「あれは、『僕と結婚したら新しい家を用意しなくてもいいのでお得ですよ』って意味」

「うんうん、相変わらず回りくどいねえ」


「最近の子供は弱いみたいですね。すぐに病んで死んでしまうのが多いのでしょう?死ぬ為に生まれるような子供は憐れですよ」

「残念でしたー!それは百年前の資料です!今の時代アレルギー撲滅してっから!平均寿命95ですべろべろばあああああ」


「あれはね、『僕は神なので僕の子供だったらそうそう死にませんよ。たぶん手入れでもなおりますよ』って意味なんだよ…」

「うんうん、アピールポイントのつもりなんだよねえ」


「僕は貴方が嫌いではないのですが、貴方は僕を随分厭うのですね。悲しいです。傷つきました。もう内番なんて出来ません、明日から引きこもります。馬なんて1日くらい絶食しても死にませんよ。しなやすしなやす」

「はあ?!厭うってなんだ、嫌いだったらこんなめんどくせえ刀捨ててやるよ!好きだから顕現させてんだ働け!」

「…仕方ありませんねぇ」

「……お前、簡単だよな」

「は?」

「好きだぞ宗三、馬車馬の如く働け」

「くそやろうめ。えぇえぇ、働かせていただきますよ!」

「はっはっは」

「くそやろう!くず!僕も好きですよ、この不細工!」

「不細工は言っちゃダメだろ!!?!」



いつの間にかお見合い相手さんたちは帰っていて、俺は青江におぶわれていた。

「不細工って言った…不細工って…」

「ひどいことを言われたね、宗三くんはあとで江雪くんにぼこぼこにしてもらうからね」

「言われるほどひどくない…兄ちゃんだって俺の事5回殴ったひよこまんじゅうみたいで可愛いって言ってくれた…」

「うんうん、僕も君は瓦せんべいみたいでかわいいと思うよ」

「うっうっうっ」

泣きながら運ばれる俺の背中をつんつんと突きながら呪いのように「ぶっさいくーぶっさいくー」と囁くクルマサカオウムを、小夜が「宗三にいさま、構われたいからってそういうふうに虐めると嫌われるよ。嫌われていいの。主のこと嫌いなの」と諭して黙らせていた。いい気味だ。泣け!泣け!ばーか!





宗三は俺の見合いをぶち壊した件で鬼と化した江雪に全力で殴られた後、暴言の件で一期にキャメルクラッチを喰らい、俺が泣いたことにより長谷部に殴られカウンターで殴り返していた。お前の長谷部に対する反抗心はなんだ。あとなんでここまでぼこぼこにされて、軽傷止まりなんだ。硬すぎるだろいいかげんにしろ。


「あなたは不細工ですけど」

「まだ言うか!泣くぞ!」

「あ、安倍川もちみたいで…かわいいですよっ」

「え、これフォローのつもりなの…こわ…ひく…」

「くそやろう!」


っていうか待って。

なんでみんな俺を銘菓で表現すんの。やだ、怖い…。はやく人間になりたい…。


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