【六夜】
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「やあ、久しぶり。僕以外の子もお邪魔したのかな」
「すごい迷惑」
「ふふ、きみの入り口がガバガバだからさ……夢って意味だよ?」
「すごい最低なこと言われた……」
身体の一部が塗ったように黒く染まり、死臭がする。このにっかり青江は、もうだめなのだろう。男は堪らなくなって、ついに泣き出した。
「俺はお前を救えないだろうか」
パキパキと薄い氷を割るような音がする。人の肉は腐り落ちて、魂は砕ける。
片目だけ見える瞳をぱちぱちと瞬かせて、にっかり青江はもう一度笑った。
「僕の為に泣いてくれるのかい? 嬉しいなあ」
青江は最初から最後までずっと嬉しそうに笑っている。
「君は十分僕を救ってくれているんだよ。君がこうして慰めてくれるだけで、僕はまだこうして人を好きでいられる。とても幸せなことさ」
歌うように、聞きなれた声と同じ音程で語る。
「歌仙くんが折られた時、僕はもう駄目なんだと思ったよ。
和泉守くんが主に刀を向けた時、僕はもう終わりだと思ったんだ。だって二人とも、僕と同じで人間の事が大好きな刀だったからね」
少し前、どこかの本丸で審神者が刀剣男士に斬り殺される事件があったと思い出す。審神者を殺した刀は確か、和泉守兼定だった。
「ここはもう暗くて、みんな眠ってる。
僕もこのまま真っ黒になって、僕じゃなくなってしまうんだって思っていた。
けど、君が僕を見つけてくれた。君の本丸の歌仙くんは厳しいけど優しくて、甘いものが好きなんだってね。君の本丸の和泉守くんは、頑張り屋なのにそれを見られるのを恥ずかしがるんだろう。
君の本丸のにっかり青江は構われたがりなのに自分からは言えない奴なんだってね。
ああ、僕は本当に嬉しいんだよ? 身体はもう朽ちて、黒いものに包まれて……だけど、心は、こんなにも静かだ。人はやっぱり、僕が好きなまま、こんなにも優しい」
声は掠れて姿もじわりと滲んでいく。
「にっかり青江はね、人間の事が、大好きなんだ。
特に、主は特別に。さようなら、僕がこの世界で、二番目に好きになった人間」
壊れた青年は、にっかり青江に酷い事をしたのだろう。呪詛を吐き悪意を振りまいて、目の前で仲間を壊す。それはとてつもない裏切りだ。
青年の弱さは、刀剣たちの責任ではない。盛大で迷惑な、自殺でしかない。
それなのに。
身体が朽ちても瘴気が魂を喰らっていっても。それでもにっかり青江は自分の主を一番に好きなままだった。好きなまま消える事を、幸せだと笑えるくらいに。
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