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俺は可笑しくない筈だ。今まで上手くやれてきたし、特別大きな失敗もない。真面目に講習を受けて、同業者から呪われるような悪行はしていない。
「嘘だろ……」
なんでだ? 何が悪かった? 配合? 霊力? 星の巡りか?
「俺の霊力狂ってんのか?」
担当さんに連絡しなきゃ。ああ、でも、どうしよう。俺が可笑しいのか? 審神者を辞めさせられる? 失格か? いやだ、もう現世に俺の帰る場所はないのに。
「困った……どうしよ……」
俺が可笑しいのか? こいつが可笑しいのか? 俺が可笑しいのか? こいつが可笑しい? 俺が? それともこいつが? なんで俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ? 俺が可笑しいのか? 本当に俺が可笑しいのか? こいつじゃないか?
引き攣った表情で俺を見る鍛刀されたばかりのへし切長谷部は、胸が緩やかに膨らんだ、女の姿をしていた。
「ああああああなんでだよぉ……? 何でこんなことするんだ……? 可笑しいだろ、なんで……ああ……刀剣男士だろお? 男士って……可笑しいだろこんなの……」
「俺は役に立ちますよ、女の身が可笑しいなら乳を削ぎます腹を切って子宮を潰しますよ」
俺のぼやきに反応して必死に弁解するへし切長谷部のようなものは、美しい女性の姿をしていた。性別が違うだけでこんなにも別物に見えるのか。声も違う、見た目の印象も、たぶん立ったら背の高さも。全くの別物だ。俺はこんなものは知らない。これがなんなのかわからない。刀剣男士は人の為に来てくれた神様だ。だがこれはなんだ。これは俺にとって安全なものかどうかわからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。こわい。こわい。「こわい。こわい。なんだ……なんなんだお前……」
「俺は役に立ちます! 役に立ちます! 俺は役に立つんです、捨てないでください! あ、女の身体ですから、主、だ、だいてください、だいてください! 抱いてください! 抱いてください!」
悲鳴のような声に追い詰められて、俺は刀解の為のまじないを開始した。
「ごめん、ごめんなあ……」
「いやだ、捨てられたくな……!」
「『解』」
ガシャン
「あー……こわかった」
へたりこんで安堵のため息をついた俺は、数日後にまともなへし切長谷部を鍛刀した。刀解したあれへの罪悪感からか、誰よりも重用したように思う。時々、あれを思い出して「一番目の長谷部は女だった。訳がわからなくてかわいそうだけど解かしてしまった」とはなし、長谷部は「そのような俺は解かされて当然です。きっとその俺も納得していますよ」と微笑んだ。そう肯定して貰いたくて、俺は何度もあれのはなしをする。
ああ、こわかった。ほんとうに、こわかった。
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