ぶらっくめん(裏)
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嬉しそうに胸を張る主を見て、何のことだかよくわからないけど僕も嬉しくなった。きっと良いことがあったんだろうと見当を付けて、「良かったねえ」と同意しておく。
いつもは適当に手前にある服を着る主だけれど、今日は鏡の前で「こっちの方がいいか」とか「今の流行はこれかな」と服を選んでいる。ついに格好良くきめる事の大切さに気がついてくれたんだね! 僕のネクタイ貸してあげるよ!
「今日はSDKのオフ会だからな。それなりの格好をしておかないと沽券に関わる」
「えすでーけー?」
「燭台切光忠大好きクラブだ」
……うん。嬉しい、けど……。
なんとかならなかったのかなあ、その名前……。クラブの綴りはclubだよ……。
僕が想像していた以上に、SDKのオフ会には人が集まっていた。 二十人を超える審神者に、その護衛として連れられてきた燭台切光忠。
主は何も言わずに楽しそうに談笑しているし、会場の雰囲気はとても良い。だけど、何というか。ねえ……。
「自分が沢山居るって気持ちが悪いな」
「自分が沢山居るって気持ちが悪いな」
自分の声が二重に聞こえたと思えば、それは隣に居たよその燭台切光忠の声だった。
苦笑いをして、無言で外への扉を指さす。お互いにこの環境はキツいものがあるようだし、そろそろ外で見張りをしている燭台切光忠と持ち場を交換しても良い頃だろう。主に声をかけてから僕たちは外に出た……ところで、敵太刀の上半身が目の前を飛んでいった。
「やあ僕! 良いところに! どうやら歴史修正主義者からの強襲を受けているらしくって、ね!」
見張りをしていた燭台切光忠が、笑顔で刀についた血を払い落としている。
「主達に伝えなきゃ!」
「いや、主達は今楽しんでいるだろう。できるだけ邪魔したくないなあ」
「それはそうだけど……」
「大丈夫だよ。怒られたら謝ればいいだけさ」
そんな会話をしていると、今度は敵打刀が死角から飛びかかってくる。
「……ああもう! 面倒だなあ!」
「やるね」
「まあね!」
敵部隊は六振構成。そのうちの三振は、既に見張りをしていた二振の燭台切光忠が討ち取って、僕も今まさに一振を倒した。飛んでいった片腕がゴミ箱を盛大に倒したのはいただけない。ゴミまみれになった上に、腕は蓋ごと壁に当たった。帰る前に掃除しなきゃなあ……。とりあえず腕を拾ってこよう、一般人に見られたら大変だ。
でも、少し遅かったみたいだ。
「う、うわっ」
「あーあ。君、大丈夫? 盛大に転んじゃったね。怪我はないかな」
「えっあっ、は、はいっ」
一般人と遭遇。どうやら戦闘は見られていないみたいだ。彼は足下にある腕に気付いていない。このまま何も気がつかないで居てくれたら、いろいろと面倒がないんだけど……。
「逃がしたかい」
索敵に行っていた燭台切光忠が帰ってきた。
一般人は僕たちを見て驚いているが、まだ「双子です」で乗り切れるだろう。何故か必死に逃げようともがいているけど、怪我をしていたら危ないからこのままでは帰せない。
そうこうしていると、やっぱりばれてしまったんだろう。会場から続々と燭台切光忠が出てきた。
「失敗しちゃったなあ……」
「仕方ないさ、こういう事もあるよ」
泡をふいて倒れている一般人を支えながら、ちょっとだけ罪悪感。自分でも同じ場所に三振以上の『自分』を見たら「黒くてごきかぶりみたい」とゾッとするんだから、この子はもっと怖かっただろう。悪いことしたなあ。逃がしてあげる方が良かったかな?
とりあえず、こんのすけと政府に連絡をいれて……。オフ会中止にならないといいなあ。主、とても楽しそうだったし。僕の事を好きでいてくれてるってこれ以上無いほどわかるから、SDK自体に悪感情はないんだよ。本当。燭台切光忠が多すぎてゾッとするのも本当だけど。
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