うかつなやくそく
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審神者になる前から飼っていた金魚で、置いていっても世話をする者もいないとムリを言って連れてきた相棒だったが、寄る年波には勝てなかったと言うことだろう。悲しいが、仕方ない事だ。
「ちゃんとはかをたててあげましょうね」
今剣がそう言ってスコップを持ち、庭の隅に弔った。俺は金魚に名前を付けては居なかったが、刀達は思い思いに呼んでいたようだ。「金五郎の墓に」「ぷくぷくへの弔いに」と菓子や花が絶えず、庭の隅は墓があるというのに華やかになってしまった。
空っぽの金魚鉢がさみしい。
特に構っていたという訳でもないのに、いなくなると無性に恋しい。あの赤くて丸い身体でのろのろと水の中を泳ぐ金魚は、おれでもそれなりに俺の心を癒やしてくれていたということなのだろうか。
今度金魚屋にでも行って、新しい金魚を飼おう。そう考えていると、近侍の今剣が「あー」と俺を咎めるような声を出した。
「だめですようあるじさま。うわきなんて、ひどいことです。えいえんをちかったのなら、たがえちゃだめですよ!」
何のことだ? そう聞こうとする前に、今剣はハッキリと言葉を続ける。
「きんぎょとやくそくしたでしょう」
審神者になんて、なりたくない。お前しかいないけど、俺はこっちにいたい。そう叫んで泣いたのは、いつだったか。
「やくそくをたがえたら、おこられますよ」
ずうっと一緒にいてくれ。お前しかいない。もうお前だけでいい。ずーっと、ずーっと、俺と一緒にいてくれ。
「ちからのあるひとのこが、こころからいったのなら、それはまことのものとなります。
のぞんだのでしょう? ずーっといっしょに、と。このほんまるはみずのまもりが憑きました。れいきゃくすいにはことかきませんよ! やりましたね!」
「そうだ、なあ……」
あの、金魚は、何年生きたんだっけ。
部屋の天井を赤い魚が泳いでいる。約束を違えるなと丸い目が言う。ずーっと一緒に居なければ。ずーっと、ずーっと。
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