そとにはわるいひとがいる 2
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政府から依頼が来たのは、夏の終わりの頃だった。歴史修正主義者の襲撃により、いくつもの本丸が壊滅的な被害を受けたのは今年の春。私はまだ見習いとして師匠の元にいた。決してここから出てくるな、誰の声がしても明るくなっても出てきてはいけない。誰かが開けてくるまでこの部屋に隠れていなさい。師匠はそう言って私を倉に隠し、刀剣男士を率いて奮戦した。無傷とは言えなかったが、師匠の采配と全体の練度の高さから治る程度の傷で済んだ。
私たちはそうして助かったけど、助からなかった審神者も沢山いて、そういう人たちの中から「生きているけど、動くことは出来ない」身体になってしまった人は、垂れ流し捨てられるだけの霊力を集めてほか審神者へ供給……充電式電池のような、そういうシステムの核になっている。
私はそれを、本人達の希望で、尊い自己犠牲で、望んでそうなっていると教わったけど、私の『念話』を頼ってきた人は言った。「あいつはそんな奴じゃない。臆病で馬鹿なんだ」と泣きながら言った。でも、それじゃあ、私たちは騙されているという事じゃない。政府は私たちに、嘘を吐いているという事になる。そんなの、そんな――。
たすけてつらいいたいくるしいもどしてくれほんまるにもどしてまもられていたのにすくわれていたのにごめんなさいすぐもどるといったのにつらいくるしいいやだかえらせてくれ
こんな事って。
電子音と空気の排出音だけがする部屋で、四肢の無い男性の悲痛な言葉が脳を揺らした。たまらず、逃げるように病室を飛び出る、瞬間。
「守ってあげる」
刀剣男士の誰か……。聞いたことはある、けど。特定できない。誰かの声がした。
翌日、絶対に自分では動けない筈だった彼が病室の窓から落ちて亡くなっているのが発見される。私は事情聴取を受けながら、「彼は守られたんでしょうね」と、こたえた。
きっと彼はようやく、本丸に帰れたんだろう。
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