さよならだけが人生か


 私の初期刀が折れた。
全ては私の采配が悪かった。大切な彼に、お守りを渡すことも出来ず、検非違使が出る戦場にも関わらず彼が中傷と知りながら進軍の許可を出した。
 彼の欠片を持って帰ってきた刀達は、口々に私を慰めてくれる。戦場を進んでも良いと判断したのは、そもそも自分たちだった。戦争をしているのだから、これは仕方の無いこと。みんな覚悟をしている。主だけが悪いのではない。彼の意思を引き継ぎ、歩み続けることこそが弔いだ。と、
 嘆いてばかりではいられない事はよくわかっている。
何の偶然か彼の折れた戦場で、彼と同じ刀を拾った。これも縁だろうと顕現したが、『私の初期刀』である彼と、顕現した彼は別物だった。理解していたつもりだったけど、きっとどこかで期待していたんだと思う。笑い方が、言葉の選び方が、物の趣味が、全て少しずつ違う。それなのに、私を呼ぶ声が同じだった。
「主?どうかしたのかい」
 なんだか顔色が悪いようだと心配そうな顔をする歌仙に、いつもと同じような表情を心掛けて笑ってみせる。
「大丈夫、ちょっと寝不足なだけだよ」
「夜はしっかり寝なければ駄目だよ。君が身体を壊したらどうするんだい。僕らは君の手入れは出来ないからね」
「ごめんごめん、今日は早めに寝るわ」
「そうしてくれると幸いだよ」
 よし。よしよし、よし。私は上手に笑えているでしょう。問題ないわ。私は審神者だから。慣れなきゃいけない。人間をやめたようなものだもの。これは、責務よ。
 ぐるぐると頭の中で自分を奮い立てる。私の考えなど知らない歌仙は、『最初の彼』と同じ声を小さく弾ませた。
「ああ、そうだ。君への歌を詠んだから、聞いてくれ」
 戦場を映すスクリーンの中、金属が折れる音と、静かに笑うような声。私の悲鳴。泥を掻く手。悲鳴。怒声。静かな声。落ちる鋼。
 歌仙兼定は彼岸の歌をどう詠んだのだろう。
人は声から忘れていくという。歌仙兼定は折れ、歌仙兼定はここにいる。声が忘れられない。折れる瞬間の最期の声を忘れられない。
 これは酷い呪いだと、笑いながら頷いた。是非聞かせてちょうだい。私への歌を。きっと私、永遠に忘れないから。


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