ラブコールは鳴り止まない


 審神者はいつも決まった時間に現世へ電話をかける。
加州清光はいつもそれが気にくわなかった。幸せそうに笑う主を見るのは良い。楽しそうにしているのは喜ぶべき事だ。
 だけど毎日毎日、何度も聞こえる「愛しているよ」や「早く帰って君に会いたい」という言葉に、ほとほと参ってしまったのだ。
 俺達がいるのに、なんで主はそんな事を言うのだろう。
帰るだなんて言わないで欲しい。俺達の帰るべき場所は主の元なのに。
 つい悋気が出た清光は、覚束ない手つきでリダイヤルのボタンを押した。本当はとてもいけない事だ。現世に通じる物を、主の許可無く触るなんてとんでもない。だけど、俺を追い詰めた主だっていけない。毎日言ってる「愛しているよ」のほんのひとつだけでも俺にくれたら、こんな馬鹿げた事はしなかった。俺は悪い子。だけど主だって悪い人だ。
 しばらく呼び出し音が続き、落ち着いた女の声が受話器から聞こえた。しばらくそれを聞いて、無言で戻す。
「清光?そこで何をしているんだ」
「何でも無いよ」
 翌日も、そのまた翌日も、主は同じ時間に電話機の前で長電話をしている。俺はそれを邪魔にならない位置でうっとりと見つめている。
「愛しているよ」
『現在この番号は使われておりません』
「早く帰って君に会いたい」
『現在この番号は使われておりません』
「そうだ、指輪はどうしよう?一緒に見に行きたいよな」
『現在この番号は使われておりません』
 今日も主は幸せそうに笑いながら、届かない番号に電話をかける。無機質な女の声は、聞き分けの無い子供に語りかけるように淡々と同じ言葉を吐き続ける。
「主が幸せなら俺も嬉しいよ」
 うそうそ。うそばっかり。あの人の帰る場所はもう無いんだ。嬉しすぎて、今日も幸せ。
「「愛しているよ」」
 主の声に合わせて小さく呟く。あいしているよ。


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