こたつ
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本丸に唯一ある炬燵、それは審神者が仕事中に使う長方形のソレだけだった。
現世で使っていたものをそのまま持ってきたらしい。冬以外はただの長机として使われているが、今ようやくその本来の役割を果たしている。
「これはいいものですね」
「そうかい。お前、そうやって寝っ転がっても足がはみ出てるじゃないか。向こうに行ったらどうだ」
「僕の主はわびさびというものがわからないお方だ」
炬燵の中で審神者の横にピタリとくっつき、なおかつ仕事をしている主を放って全力で横になっている宗三左文字は、怠惰に蜜柑を剥いてその半分を机の上に置き、もう半分をもぐもぐと咀嚼した。どうやら審神者へのおすそ分けらしい。「甘いですよ」と薦められ、審神者も一度筆を置いて蜜柑を手に取った。確かに甘い。
「お前は長いのだから、横じゃなく縦に足を入れた方がいいとおもうんだがなあ」
「背が高いと言っていただきたいものです」
「そう言うほど高くはないな。薄くて長い」
「肉付きが悪くて抱き心地も良くなくて失礼しました」
「言ってない」
「貴方みたいに夜十時以降に食事をしたら即肥え太る体質だったらよかったんですけどねえ…」
「酷い事を言うやつだ」
「お互い様ですよ」
暑くなってきましたとヌルリと炬燵から這い出きた宗三は、やはり薄くて長い。
暑い暑いと言いながら審神者の背にピタリと身を寄せ、手近に置き去りにしていたタオルケットを手繰り寄せてついに完全なる寝の体勢をとり始めた。
「主は抱き心地が良いですねえ。安定感がある。来世は良い刀掛台になれますよ。そうしたら、僕が使ってさしあげますね」
「はいはいありがたき幸せ。ほら、寝るなら布団にお入りよ」
「わかっていませんねえ」
ぐりぐりと背中に頭を押し付け、なんとかしっくりくる場所をみつけたのだろう。そのまま積み上げられている雑多なものを足で蹴り退けながら寝場所を確保する。
審神者の仕事部屋は寝室とは別にある。どうせ寝るならそこで寝ろと再度口にしようとしたが、その前にぼんやりとした宗三の言葉で封じられた。
「炬燵も背中も方便ですよ。貴方の傍に居たいだけです。ここまで言わせるなんて、本当に、僕の主は察しの悪いダメな方。きっと僕以外にはこんなに愛してもらえませんよ。大切にしてくださいね」
「……なんか暑いな、炬燵止める」
「ふふ…照れてる……」
「うるせえ」
今年は寒暖かと独りごちれば、愛しい刀はまた含み笑いをして「景趣を決めるのは貴方ですよ」といらない訂正をいれてきた。
ああうるさい奴だ。こんなうるさい奴、こんなに愛しているのは俺だけに違いない。大切にしろよ。その言葉には返事がなく、背中にあてられた頭がぐりぐりと痛むほどに押し当てられたのだった。
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