甘味
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「そっちの方がいい」
「こちらは尾だぞ」
「しっぽの部分が好きなんだよ」
「むう…」
そんなこと言って気を使っているのではないか?的な眼で見られるが、事実だ。焼き芋は少し焦げた皮の部分が好きだし、たい焼きはしっぽが好き。俺のこのみだ好きにさせろ。
岩融が持つと指でつまむ程度のサイズにしかみえないが、俺が持つと普通より一回りはでかいたいやきを奪い取る。かわりに餡子がたっぷりとつまった上半身を進呈しよう。餡子率高いと飽きるし糖分で頭が痛くなるからという理由なので、別に岩融においしい部分をあげようという殊勝な意味合いではない。遠慮がちにだがうまそうに食べる顔は、けっこう好きだが。
「お前、俺のおやつ係になってんの?最近よく来るね」
「主は少し根を詰め過ぎだ、糖でも取らねばやってられんだろう」
「年末は忙しいもんだ。正月に休むためだから今頑張ってんだよ」
「我等の誰かが代わりをできないものか?」
「審神者の仕事だから無理だわな」
身体ばっかりでかいが顔付き自体は意外にも幼げな岩融の、むううと考え込む顔を見ながらたい焼きの尾を咀嚼する。餡子は少ないがほんのり甘い生地は間違いなく美味い。
素材に気をつかう光忠が厳選したものを、調理に気を配る歌仙が作ったものはいついかなる時も美味い。このたい焼きだって「かっこ良いたい焼きを作るよ」と型から作り上げていた。あいつはどこに行きたいのだろうか。刀の癖に鉄を加工する光忠は異様に格好かった。
「俺は主の役に立ちたいのだ」
相変わらず拗ねた子供のような顔でむううと考え込みながら、岩融がぽつりとつぶやいた。
役に立ちたいが戦働き以外はよくわからん。そう言ってどこか悲しそうに「しっぽ焼きでも作ればよいのか…」と聞かれた。いや、それはそれでちょっと食べたいけど前提がおかしい。
「戦働き以外でもお前は役に立っているぞ」
「どこがだ。昨日も俺は失敗したぞ、主は焦げばかり食べて真ん中の一番美味いところは全部俺に寄越したではないか。
これではどちらが労わられているかわかったものじゃない」
「だからあれは俺の好きな部位が皮の周りだったんだって。栄養価も高いんだぞ」
しょんぼりとして意気消沈してしまった岩融の手を布巾でぬぐってやりながら、今まで別に言う事もないかと黙っていたことをひとつ告白する。
「疲れた時に甘いもんが甘いモノ持ってきてくれてるんだから、俺は十分労わられてるし幸福な人間だ」
「…俺は甘くないぞ?」
「わかんなくていいぞハニー」
「はに?」
俺の可愛いはちみつちゃんがかんばれがんばれしに来てくれるので、年末のクソみたいな忙しさもかろうじて生き残っているのだ。
相手がわかっていないから言える軽口なので、そのままの無知な君でいておくれ。
「よくわからんが、俺も主を好いているぞ!」
「ありがとうよ」
といっても、この賢い神様は言葉の裏の本質を簡単に見破るので、知識の有無は意味がないのだがな。
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