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でかい図体をしておきながら、彼の主は酷く涙脆い男であった。遠い地にいる赤の他人の事でさえ、我が身に起きた悲劇のように痛みを負う。馬鹿馬鹿しいまでに生き難い性質をしている、愛おしい我が主だ。
投げ出された『政府からの依頼書』というものに眼を通す。
主にはまだ現代の文字は読めないと言ってはいるが、付喪神となり人の血と肉を得てもう十年。自分を現世に呼び出した初々しい青年が草臥れた男に変わる程度の時間を、意味なく消費していたわけではない。
読めないふりをしながら、ただもの珍しそうに眺めている風を装って焚火にくべた依頼書は果たして何枚あっただろうか。応えは任意と嘯きながら、人の好さと気の優しさを利用する魂胆がみえみえの、反吐が出そうな謀だ。また今回も面倒なものを押し付けてきやがった。
同田貫の動きも政府はわかっていたのだろう、ついに近侍を通さず直に審神者へと依頼書を送り付けてきた。これはもう、無礼討ちで良いだろう。次来たら袈裟懸けに斬り倒す。
―――刀剣男士は古き刀に宿る神であるため、己を生み出した審神者を主とし、他の者には従おうとはしない。政府の者であろうとも、無意識で人間は格下の存在だと割り切っている。その人間という枠の中で唯一、主だけが特別なのだ。
問題のあった審神者の霊力で創られた、禄でもない環境にいた奴を、勿体ないから引き取れ?冗談を言うな。審神者の霊力は根本に影響する。頭の可笑しいやつは頭の可笑しいモンしか創れねえ。それで?万が一、億が一、我等が主が穢れを受けたらどうしてくれる。
腹の底から煮え立つような怒りが渦巻く。貴様らの首を何百集めようとも、他に替えられざる我が主を軽んじるこのような所業が―――。
「同田貫」
「…んだよ」
「あのさ、それ読めてるだろ?」
「さっぱり読めてねーよ。奇怪な記号だー皆目見当つかねーわ」
「嘘吐くにしても投げやりすぎるだろ?!」
「うるせえうるせえ」
「丸めんな!ってあああー!鼻かんだ!?なんで鼻かんだな今それで!」
「返す」
「原本あるからいらん!捨てろ!」
三日月宗近が送られてくるまであと数日。猶予は、ない。
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