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というのも、例の三日月がいた本丸は常に冬の景観だったらしい。この本丸も第五次雪合戦ブームにより半年ほど冬景色だったが今日で終わりだ。江雪の地の利を利用した完璧な擬態による連勝記録も今日で一時中断だ。悲しそうな顔をしていたけど、心を鬼にする。
とりあえずしばらくの間は俺が三日月に付きっきりになるので、そのことで今いる俺の刀達を不安にさせるわけにはいかない。
このあたりは同田貫と小夜に言い聞かせているが、そもそも二人は三日月を受け入れることにまず否定的な様子がうかがえる。俺が言ったことは素直にほかの刀剣にも連絡事項として伝えるだろうが、その他にもこちら側から密にコミュニケーションをとっていかねばならない。
師匠に頂いた『他所から刀剣男士を引き取る際のマニュアル』を熟読した結果、二匹目の猫を迎え入れる際の先住猫へのケアと完全に重複していた事実にはそっと眼を逸らす。
三日月宗近は五年弱の間、座敷に繋がれたままでいたらしい。
その間一度も陽の光を浴びず、飲食もせず、ただひたすらに弄ばれるだけであったという。
三日月宗近という刀は希少価値が高く、師匠の本丸にいた者しか知らない。
その三日月は散歩が好きで、「土産だ」と山からいろんなものを持ってきた。アケビや柿。食べれそうだからと適当に採ってきたキノコは8割型毒だったが、残り2割の内に松茸があった日もある。
食べることはうれしいなあ、生きることはよいことだ。
にこにこと笑っていたあれと同じ魂の欠片を持ったものが、どうして一方ではこうも虐げられてしまったのだろう。
ぼたぼたと飽きずに落ちる涙をぬぐう。
俺はいつも、他人のためではなく自分のために泣いている。そうしっかりと自覚をしていなければ、いつか俺も傲慢になってしまう。他人のためだなんて高潔な意思はない。可哀想だと痛んだ胸が切なくて泣いているだけだ。
「大切にしよう」
三日月がきたら、大切にしよう。辛い目にあった分、優しく大事にしなければだめだ。
そうじゃないと、あまりに悲しい。
「お邪魔しまーす」
正門の方で馴染みの役人の声が聞こえた。ついに、来たのか。
「はい、今い…」
「おう、邪魔だから去ねや」
「わかってるじゃないか…」
「あー抜刀してる抜刀してる!名前さーん!お宅のお子さんがああああ!」
「同田貫!小夜!待てやめろ戻れ戻れ!!」
なにしてんだあいつら!!
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