商人は矜持高い


率直に言って、スィンドルは傷ついていた。

本人も自分の中にまさかこんなに繊細な部分があるとは思いもよらなかったが、事実としてトラウマまで負う程に傷ついていた。
というのも、スィンドルは誰かと身体を重ねたのはナマエがはじめてだったのだ。なにしろ物心ついた頃から恨まれ商売に身を投じて来たので下手な隙を見せられるわけがない。スィンドルは武器商人なので外付けの火力はいくらでも上げられるが、持って生まれた戦闘力は平均かそれ以下だ。武器目当てに軽く壊されて略奪されるという事もあり得るし、自分だったらそうするのでそのような危険なことに手を出す筈が無かった。それに、そもそも性欲が薄い。そう思っていた。

だがしかし初めて【すきなひと】が出来たので、どこか舞い上がっていたのかもしれない。ついうっかりムラっときて襲ってみたのは、ナマエのようなクズに負ける気がさらさらなかったし、ナマエが自分を壊す事による利点が何一つなかったからだ。所詮飼われている身、せいぜい奉仕すればいいという建前で、どう動けばいいのかまったくわからず固まっていた所に落とされた爆弾。

下手くそだと。

そこから先二年間程床に転がしたまま放置して、八つ当たり半分に武器の値段を30%アップして各地に売りつけまわったような記憶しかない。もっと争え、そして壊して壊れて私に献金しろ。ナマエは死なない程度に苦しめばいい。


放置を続けていたら勝手に省エネスリープモードになってすやすや寝ているナマエが憎たらしい。

『起きて下さい。なに寝ているんですかあ?』

誰の許可をとって寝ているんですかあ。まるで駄目な元オートボットめ。
無理やり削り取ったらしいエンブレムの痕をがりがりと引っ掻くも、ナマエは起きない。エネルゴンが足りていないのだろう。

『寝ているだけでエネルゴンが手に入るなんて良い御身分ですよねぇ〜』

無理やりばらした手足を付けても、エネルゴンを補給してやっても、どうせナマエは感謝もしなければ憎んでもくれないのだ。




『あなたなんて大嫌いですよお』


私に無関心なあなたは大嫌い。


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