お喋りで喧しい奴だった


『リペアというレベルの話ではない。何しろ彼の中で生きているのはスパークだけだったんだからな。
新しい身体を作り、それにスパークを移植した。身体が馴染むまでは暫くかかるだろう、君が側についてやってくれ』


そう軍医が言ったので、ブラー(新)は俺の自室でちんまりと座り込んでいるのであった。

キューブを持ち込んで復活まで約半年待ったが、まだまだ忙しい日々が続く。限りなく戦闘員っぽいのに実際のところ情報管理担当の俺も、寝る間も無く働いていたが、ここに来てほぼ強制的に有給を取らされた。というか、あったんだ有給……そんな制度知らなかった……労働基準法的なものなんてエリートガードにはないと思い込んでいた。

『ブラーが心配なのはよくわかる。しかし根を詰め過ぎると身体を壊すぞ。少し休みたまえ』

と、ジャズ将校が真摯に説得してくれたのだが、あなたの目の前にいるのは有給制度すら確認とっていないアホ文官です。こんなんで情報管理部にいていいのか。


「ブラー」

部屋の隅で体育座りをしている友人に声を掛ける。緩慢な動きでこちらを見る彼は、俺の知っている彼とは違い過ぎていた。
見た目は完璧に作り直されている。それでも、


『…………。…、…………』

『無理をするな、ゆっくりと慣れて行けばいい』



ブラーの発声器官は心因的な問題で動かなくなってしまった。
口を開閉させる金属の触れ合う小さな音が、ブラーが出せる唯一の声なのだ。

喋ろうと口を開き、出ない音に打ちのめされる。それを繰り返した結果、ブラーは俺の部屋の隅っこで体育座りをしながら日がな一日ボンヤリと過ごすだけの廃人と化した。これは………ヤバイ………。

『まだ時間があるんだ、最後まで付き合ってやる。すぐに元どおりになるさ。
なあ、俺に言いたかったことがあるんだろ?ハイでもイエスでもオーケーでも答えてやるから、何を言いたかったのか教えてくれ。いくらでも待ってやるから』

『…………ッ』

ブラーのアイセンサーからぶわわとウォッシャー液が零れ落ちたので、拭いとる。なにしろトランスフォーマーなので余計な水分を拭うための布など持っていないのだ。
声が出ていたのなら泣き声をあげていたのだろう。はくはくと口を開けたブラーが抱きついてきたので撫でくりまわす。


『お前は温かいなあ』

生きてるってことは、良いことだなあ。


←前 main|top 次→