玉の花





静岡の山奥。
久しぶりに二年生全員で任務へ向かった。任務というよりは、安否確認みたいな。
問題に気づいたのは今朝の事だった。

「ねー歌姫先輩と連絡全然取れないんだけど。任務一昨日だよね?二日かかるっておかしくない?」

教室で午前の授業を待っている間、硝子が異変に気づいた。
……確かに。硝子によれば今回の歌姫さんの任務は冥さんと一緒らしい。基本任務は半日もかからずに祓い終える。かかったとしても一日だ。長期の場合もあるけど、それは呪霊の位置や詳しい情報が確認出来ず、現地で情報集めが必要になった場合。今回はどこから呪霊が出現してるか粗方分かってると硝子は言う。それなのに一級術師と二級術師が二日連絡が取れないとすれば、何かあったに違いない。
教室へやって来た夜蛾先生にその事を伝えると、担当してた補助監督の人も不安に思って上層部に連絡をしていたらしく、四人で迎えと命令が下った。



三好谷さんにお願いして急ピッチで静岡に向かう。目的地の入口に着くと、三好谷さんに他の任務中の術師から連絡が入ったらしく、あたふたしている三好谷さんに「帳、俺が下すから行っていいよ」と五条は声をかけた。

「でもここの担当を任せられたので!」
「平気平気、任せて」

五条は私達に行こ〜ぜと合図をするので、一刻も早くと目的地に向かった。帳も五条が下ろしてくれるなら大丈夫だろう。

……ちなみに最近、五条とは少し気まずい。
以前私が彼の過度な接し方に対して指摘すれば、それから過度に触れてくる様な意地悪はしてこなくなったけれど、同時に近づいた距離が大きく開いた気がした。
気まずく感じてるのは私だけなのか、別に普段たわいもない話は今までと変わらない。五条も気にしてるのかと思ってたけど、彼の思ってる事は本当に分からない…。
彼に迷惑をかけないのであれば、これで良いはずなのに心の奥がもやもやと乱していく。

……しかし、今はそんな事を考えている場合じゃない。

両側に木々が生い茂る道を進めば、歌姫さん達が向かった任務先である問題の館へ辿り着いた。館からは異様な雰囲気が渦巻いている。
さて、どこからどう攻めるか…。
夏油は、私達に相談をもちかけた。

「多分二人はこの館の中だろう。どうする、侵入するかい?」
「つーか入れんの?表から壊した方が早くね?」
「それもそうだね。じゃあ悟が前からで私が後ろから援護するよ。それで呪霊が逃げそうになったら、名前と悟で対処するってのはどう?」
「おっけー、それで行くか」
「あ、呪霊はなるべく早く祓わずに私にくれないか?」
「わーったよ」
「ねえ……館を壊して、もし冥さんや歌姫さんにも攻撃当たっちゃったらどうするの?」
「冥さんならそこら辺察知するだろーし大丈夫でしょ。歌姫は分かんねーけど、硝子居るし」
「任せな」

硝子はグッと親指を立てて自信を見せつけた。硝子の反転術式は学生ながらにも完璧で数少ない反転術式を使える人間の一人だ。安心して任せられるし、夏油の案に乗ることにした。

硝子は安全な所で待機してもらい、夏油は館の裏側へと待機、私は五条の後ろで構え、呪霊が出てくるのを待った。




結果。

五条の術式順転のせいで館がボロボロに崩れ去ったが、呪霊は私が出る幕もなく五条と夏油で対処した。捕らえた呪霊は夏油がいつものようにボール状に封印し飲み込むらしい。
冥さんは自力で脱出し無傷だけど、歌姫さんは館の崩壊に巻き込まれてしまい瓦礫の山に倒れ込み服は所々汚れているようだ。
呪力でカバーしてるだろうけど、傷がないか不安で五条、夏油、冥さんが歌姫さんと話し合っている間に崖を下りて向かった。

「歌姫さん、大丈夫ですか!?」
「名前、久しぶりじゃない!大丈夫よ。そっちこそ元気してた?」
「はい。無事で良かった…」
「前からアンタの事、心配だったのよ。…アイツ……五条との事。大丈夫か心配で心配で」
「別にあの時から何も変わってませんよ」

なんて、歌姫さんと会ったのは去年の秋口以来。あの時から色々あって五条が私に接する態度も随分と変わったよなあ……。
でもその変化をまとめるには長い時間がないと説明出来そうにない。

「変わってない事ないでしょ…硝子から色々聞いてんだからね」
「あはは…把握してるようで…?あ、硝子も来てますよ。大丈夫でしょうけど、一旦診てもらいましょ?」
「歌姫センパ〜イ、無事ですか〜?」
「硝子!!」

歌姫さんは硝子の顔を見て喜んだ顔で崖を登り、抱きしめ合っていた。
成る程、硝子も京都へは研修でしょっちゅう行ってるし、歌姫さんの事大好きだもんなあ。

みんなに色々相談もしたい気持ちはあるが、五条が私に対して気になると言った事は、硝子にも夏油にも、誰にもまだ言ってはいない。
何故なら、叶わな恋の相談をするなんて時間の無駄じゃないかと最近気づいたからだ。硝子も夏油もすんなり聞いてくれて嬉しいけど……何だか申し訳ないし、何処かで「そろそろいい加減にしてくれ」なんて思ってないか不安だった。
優しい二人だからそんな事思っていないと信じているけれど、それでも二人の優しさに甘えるのもそろそろ控えるべきだと感じて、言うのをやめた。

崖を夏油と一緒に登って合流すれば、冥さんがそれはそうと、と私達に問いかける。

「君達、帳は?」

あ、忘れてた。


* * *


昨日の出来事は朝のニュース番組で大きく取り上げられていた。上層部は公に報道されたことにご立腹らしく、私達二年生は朝一から夜蛾先生から呼び出しされてしまった。
………顔にはそんな出てないけど、絶対夜蛾先生怒ってるじゃん。

「この中に帳は自分で下すからと補助監督を置き去りにした奴がいるな。そして帳を忘れた。…名乗り出ろ」
「先生!犯人探しはやめませんか!?」
「悟だな」

え、そうだけど。なんで分かったの?
五条の方を向こうとした時、隣の硝子、そして私とは反対側にいる夏油が五条を指差していたのが見えた。……成る程。
しかし帳の存在をすっかり忘れてた私にも、少し責任は感じている。

「先生違います!名前ちゃんです!」
「えっ……はあ?!何なすりつけようとすんの!せ、先生、違います!五条くんです!」
「悟、人のせいにするんじゃない。名前以外の二人がお前と言ってるんだ。白状しろ」

どちらが本当が理解している夜蛾先生は五条の頭に拳骨を落とした。
……うわあ、痛そう。
頭を抱える五条に対して「自分で言ったからには覚えておくんだな」と指導の言葉を放った。夜蛾先生も上層部から色々言われただろうし、苦労してるんだろう。
ていうか何で私のせいにすんの、五条の馬鹿。

「三十分後に授業を始める。教室で待機しておくように。…それから名前、今から任務を頼みたい。依頼書を渡すから着いてきてくれるか?」
「あっハイ!」

夜蛾先生が教室から出て行くのに続くように立ち上がる。出て行く前に五条と目が合い、べーっと舌を出して挑発すれば、彼はムッとした表情を向けてきた。
…やっぱ、五条はずっと私の事を揶揄っていただけ。こんなにも彼の色々な行動に対して毎回モヤモヤしてる自分が馬鹿みたい。


* * * * *


夜蛾先生から渡された任務先。
生まれて初めて行く、まさかまさかの沖縄!

「はいたいおきなわー!」
「名字さん、任務中です。やめてもらえますか」
「…ハーイ」

…しかしなんで乙山さんとなんだ。最悪。
最近ずっと一緒の任務になる事が多かったし、あり得ない話では無かったけれど、別の人と組みたかった。初めての沖縄にわくわくしてるのに、乙山さん相手だとそれも楽しめない。
あ〜もう、早めの夏休み味わってもいいじゃん!
夏は結局呪霊の繁忙期で楽しむ暇も無い。今年の夏も呪霊を祓うのに大忙しなんだろうなあ。ため息をつきつつ、空港から出て今回の任務である目的地までタクシーに乗って向かった。


近くまで来たが砂利道が酷く、途中でタクシーを降りて田畑の広がる田舎道を歩く。
周りは自然に囲まれていて、奥にある集落の近くには森も見えた。海の近くのはずなのに、山の様に広がる木々は少し不思議な光景だ。上を見あげれば灼熱の太陽が存在感を示し、まだ五月だというのに蝉の声が聞こえる。沖縄はもう夏へ踏み込んでいた。
……あれ?七月じゃないよね?
坂道を登りつつ、これからどんどん暑くなるだろう沖縄の気温にげんなりしていると、今回の目的の場所が見えた。

場所は、最近噂になっていた心霊スポットの廃墟。建物は骨組みの鉄骨しか残っておらず外からでも、少し中の様子が覗ける。
インターネットの掲示板で不可解現象があったと話題になっていたようだが、ついに謎の死を遂げた被害者が出た事から調査の依頼が入った。
まったく、なんでこうも人は心霊スポットに行きたがるんだろう。鬱憤で気が滅入るが、切り替えて帳を下ろし、戦闘態勢をとった。





ニ時間後、廃墟を探索し目的の呪霊を視認。
何なく祓い、任務完遂する事が出来た。

乙山さんとは性格の相性は悪いけれど、任務を遂行する為での相性は中々良いと思ってる。無駄のない伝達、行動。乙山さんとの必要最低限の言葉のやり取りが私達には合っているようだ。
乙山さんが上層部に任務が終わった事を報告し、帰りのタクシーを拾うために公道へと歩みを進める。
またさっきの道を下るのかあ…。
呪霊を祓うのに暴れたからか、一層暑く感じ、真っ黒に長袖の服が暑苦しく、汗が滲む。
ああ疲れたし、早くタクシー乗って飛行機の中で爆睡するかあ。本当は沖縄を堪能したかったけれど、そんな事言ったら乙山さんはまた嫌な顔をするし、またぐちぐちと嫌味を言ってくるだろう。それに今日受ける事が出来なかった授業の補修が明日あるだろうし、沖縄満喫は難しそうだ。
そんな事を考えていると、道の途中でおじいさんに会った。そういえばここら辺、集落あったっけ。
こんにちわーと声をかけ、通り過ぎようとすれば、一人のお爺さんから声をかけられ足を止めた。

「そこの娘…もしかして、卑弥呼様か…?」
「え……いやいや、卑弥呼じゃないですよ。何時代ですか、ただの高校生ですけど」
「その目、確かに卑弥呼様と一緒の目だあ。…お願いだ、あと二ヶ月後には…村の災いが今年も訪れてしまう。今年こそはどうにかしかしねえと…助けてくれえッ……」
「えっ、災い…?」

懇願するような目で私を見てくるおじいさんの言葉に、言葉が止まった。
…もしかしたら呪霊が関係しているかもしれない。それに、私と同じ目をした人間が居たってことは…私の祖先が関わってる?ということは呪具も…?
……気になる。
居ても経ってもいられず、調査したいので案内してもらおうと頼む前に、乙山さんが間に入って口を開いた。

「すみません。現在別の任務の為、貴方のお話はまた後日お聞かせ願えないでしょうか。こちら私の名刺です。ご連絡いただければ、調査しそののち対応させていただきます」
「えっ、乙山さん!」
「兄ちゃん何者だ…?」
「私は宗教や呪いを生業としている者です。では。名字さん行きますよ」

乙山さんはお爺さんに名刺を渡し、先を歩く。
えっちょっと、終わり?!

「ねえ乙山さん、行きましょうよ!!もしかしたら呪霊がっ…私の祖先が、関わってるかもしれないのに…!」
「それなら尚更耐性を整えた方がいい。上からの命令でも無いのに勝手な行動をすれば、規律違反になり兼ねません。それに等級も分からないのであれば死にに行くようなものです。私達が祓えるのはせめて準一級程度だ」
「でも…!」
「貴方は自分の祖先の事が気になってしょうがないんでしょうが…その祖先が行った事忘れてる訳ではないですよね?呪詛師さながらの事をやっていた事を考えれば、一旦引くのが先決ですよ」
「…………っ。はい…」

言い返せないのが、悔しい。
五条へ呪具を返せるヒントが、もしかしたら近くにあるのかもしれないのに…。休みが取れるようになったら、休みをとってここにこよう。でも二ヶ月後には災いが…って言ってた。これから繁忙期になっていくのに二ヶ月以内に来れるかな。それに、もし単独で乗り込んだら…私はどうなっちゃうんだろう。

自分のやるべき事に迷いが生じ、ぎゅっと拳を握りしめて一旦考えるのをやめ、乙山さんの後ろを歩いた。


* * *


タクシーを拾い、空港に着く頃には夜になっていた。最終便の飛行機で空いてる席を探して直帰か……。もう少し、沖縄楽しみたかったな。
残念な気持ちに浸っていれば、ポケットから着信音が聞こえてきた。
この着信音、五条からだ。
携帯を開けば思った通りで、すぐに電話の通話ボタンを押して出る。

…………あ、そういえば朝不機嫌で出かけた事忘れてた。

「…もしもし五条?何……どうしたの?」
『あ名前〜?今どこ』
「沖縄だけど。…今、空港にいるよ」
『お前さ、そのまま沖縄残ってくんない?星漿体の身代わり役やって欲しいんだけど、任務。ちなみに先生には話通してる』
「せいしょーたい?何それ…まあ任務なんだよね、分かった」
『おっけ。んじゃあどっかホテル取って明日集合な。詳しい事は明日言うわ』

要件だけ言って勝手にぶちりと切られる。相変わらず自分勝手だなあ。
でも朝の事が無かったくらい、いつも通りの五条だったし、私も普通通りに出来て少しホッとした。

「星漿体も知らないんですか貴方」
「何なんですか?ソレ」

電話を切った私に対して、乙山さんは「全く…」と愚痴を溢してため息を吐き、星漿体、そして天元様の存在を話し始めた。それも、こんな事も知らないなんて貴方本当に呪術師なんですか?と皮肉るように。
そんな事、誰も教えてくれなかったんだもん!

…教えて貰った事をまとめると、星漿体は天元様と同化する為に存在している。そして天元様は新しい情報に書き換えられて、結界等の私達呪術師を守る役目もしてくれている。五条の電話からするに、その星漿体がどうやら命を狙われているのが現状…っぽい。
天元様なんて凄い存在が居たなんて、今まで知らなかった。そういう大事な事、何で教えてくれないんだろう。しかも身代わりって何?人質?
何やら大役を任された感じがして、少し重荷を感じる。

しかし五条とはここ最近ずっと任務別々だったし昨日の任務に続いて一緒なのはちょっと嬉しくて、心がほかほかして、どきどきする。
嬉しくなって着信履歴を眺めていると、乙山さんが突然「もしかして貴方、五条悟の事好いてるんですか…?」と聞いてくるので、驚いて顔をあげると、とても不機嫌そうな顔を向けた。

「えっ、ち、違います!な、何でそうなるんですか?!」
「頬を気持ち悪い色に染めるからですよ。ニヤニヤしないでください」
「ニヤニヤなんてしてません!別に、ただ久々に同じ任務だから少し嬉しかっただけで」
「昨日も二年生全員で任務向かってませんでした?それに寮で会うのに嬉しいとはどういうことです?」
「い、いいじゃないですか!寮でも毎日会ってるわけじゃないですし!」
「……はぁ。貴方、人の気持ち考えてるんですか?五条家を掻き乱しておいて、好意を持っているのは如何なものかと。別に誰を好もうなんざ興味はありませんが…呪術師続けられるのであれば、これ以上荒波になりそうな事、立てないでください」
「………分かってますよ」

乙山さんの言ってる事は、正論だ。
分かってる、はずなのに。複雑な気持ちがむかむかと胸を騒つかす。
私欲はこの道を進む為に諦めていたのに、未だに区切りをつけられず、もっともっと仲良くなりたい、近くにいたいと彼を欲しがる気持ちに、矛盾を産む自分の心に、腹が立つのは事実だ。
……私が、もっと、しっかりしなきゃ。


乙山さんは言うだけ言って「では、私は帰ります」とチケットを手配して勝手に帰っていった。

……あ、ホテル探さなきゃ。


* * *



次の日。

「えっ、セーラー服着るの?」
「コイツのだし背丈も似てるからイケんだろ?髪も長さ同じくらいだし」
「多分…というか、どちら様で?」

空港で五条と夏油と合流し、私にセーラー服の入った紙袋を渡してきた。セーラー服なんて、一年振りだなあ。あの高校のセーラー服に袖を通したのも、たった一か月だけだったけど。
五条の背後には私と同じくらいの身長の女の子が立っており、尋ねると自信満々な顔をして前へ出てきた。

「妾を誰だと思うておる!」
「え?…あ、もしかしてこの子が星漿体?」
「いかにも!天元様は妾で、妾は天元様なのじゃ!」
「えっ、そうなんですか?」
「そうじゃ。同化は死ではなく同化後も妾の意思、心、魂は生き続けるのじゃ。理解出来ておるか!」
「あの、気になってたんですけど、ポケモンだとオーキド博士がタイプな方ですか?」
「普通に喋る事も出来るもん!!」

なんだ、喋り方が似てたけど違ってたか。老人スタイルな口調だけど年齢は私達より年下の中学生らしい。
現状を聞くと、この星漿体のお手伝いさんが、敵__天元様を信仰する非術師達が集まる宗教団体、盤星教とやらに人質として取られていて、星漿体とトレードを望んでるとの事。オマケに盤星教は呪詛師と手を組んでいるらしく、中々厄介だ。
しかし星漿体は天元様に同化する存在。天元様を信仰しているのに狙われているってどういう事なの?と聞けば、同化で不純物が混じってしまうのが嫌で同化の期限である明日までにどうにかしたいのさ。と夏油が教えてくれた。
何それ、意味わかんない……信仰しといて、ただのワガママなだけじゃん。それに、こんな、私より年下な女の子が、星漿体だなんて。同化してしまえば、この子は居なくなってしまうんだ。
別に盤星教の気持ちなんて理解できないけど、呪術師の世界において、この子の存在が消えてしまう事に、少し心がもやっとした。

「……分かった。呪詛師が関わってるっぽいのは厄介だけど、やってみるよ」
「お前の術式で動き止めてくれたら、そのまま俺達が捕縛するから」
「うーん…非術師ならすぐ術式かかるんだけど、呪力を使える人間だと二級差でも難しいんだよね。呪霊は一級差でもいけるんだけど、もしかしたら少ししか止められないかもしれない」
「お前の今の力、準一級くらいはあるから呪詛師のレベル次第だけどやれんだろ?」
「…分かった。するのは失敗、何もしないは大失敗だしね」
「流石、やる気だけはあるバカだな」
「…うるさい」
「ふふ、悟は素直じゃ無いね。素直に言えばいいのに。ありがとう、名前」

五条の案に乗れば、夏油は私に感謝を伝えてきた。最後の言葉も交わさずに会えなくるのは…私だって嫌だもん。
さっきから私達の話を聞く星漿体__リコちゃんは、意志の強い目でこちらを見ていた。多分そのお手伝いさんの事、とても大切に思っているんだろう。
同化するとしても、この子はそのお手伝いさんと今後会えなくなるんだ。一生の会えないのなら、せめて最後だけは良いお別れだけでもさせてあげたい。

彼女の願いを叶える為に、三人と取引場所に指定された所まで、向かうことにした。