「婚約されるんですね」
冷たい風が髪を靡かせる。カーテンのように揺れた髪を耳にかける、その髪の隙間から愛しい彼の口元が見えた。その口元は重く、ゆっくりと小さく開く。
「あぁ」
短い、頷くだけの言葉が返ってくるのは分かっていた事。遅かれ早かれこの時が来るとは知っていた。
何かが溢れそうに顔が一瞬歪みそうになったけれど、口角を上げ、いつものように「五条様」と声をかける。
「私はいつまでも貴方を愛しております」
「……、」
「そんな顔しないでください。お幸せに。……あなたの幸せを願っております」
そう言葉を放った女は、両手を男の頬に優しく触れ、ゆっくりと最後の口づけを交わした。
気づけば知らない海の浜辺へと立っていた。小波が聞こえる中、浜辺に小さな洞窟のような入り口が見え中へと進んでいけば洞窟の中は真っ暗闇であったが、壁にあるキラキラと輝いている石が道を案内してくれる。輝く石に導かれるように中を進んでいくと小さな祠があり、その祠の中央には他とは比べものにならない程のキラキラと輝く「何か」が収められているが、輝きの正体は分からない。
そして、洞窟の中には二人。水神と、先程男といた女――瞳が私と同じように撫子の色をした女が向かい合い、水神の瞳からぽろぽろと涙が溢れていた。
「あの人が私を私を祓おうとするなんてっ…」
「そうね……。でも仕方ない事よ、呪術界でも名高い方なんだから呪霊を祓うのは当然だわ」
「……貴様、他人事のようだな。分かっておるのか、わしがお前の身体を乗っ取ったからには今後お前は呪詛師として追われる身となるんだぞ?」
「何言ってるの、それくらい私だって分かってる。私の身体を使って呪具を盗んだのであれば、私と貴方は共犯で追われる身よ。……一緒に遠くの果てまで逃げましょ?」
水神の手を握り合った女は、そのまま海の中を進んでいく。これが呪力なのか術式なのか分からないけれど、深く深くまで潜り込み気づけば沖縄の神社へと来ていた。
ここは――さっき水神と戦った洞窟だ。しかし先程とは違い、洞窟の至る所に呪符が張り巡らされ水神は壁に貼り付けられている。身動きの出来ない水神は長い髪の隙間からぎろりと睨みつける視線を向けた。
「わしを騙したのか女」
「呪詛師の前に私が呪術師って事を忘れない事ね。私の力では貴方を封印する事で精一杯だけれど、いつか貴方を祓う呪術師が現れる。その時まで罪を償いなさい」
「共犯だと言ったのはお主だ、お主の罪はどうなるのだ。自分だけ罪を償わないとは卑怯ぞ」
「償うわよ……もう私は呪術界には戻れないんだから。戻れば貴方の言った通り呪詛師扱いされて殺されるだけ」
そう答えた女は悲しそうな表情で笑みを浮かべ、指を動かし呪文を唱えると、視界は眩い光に包まれた。
私の祖先は五条家の祖先が好きだった。そして水神も、呪霊ながらに呪術師に心を奪われ、二人とも叶わない恋をしていたのだ。
最後に自ら水神に乗っ取られ、呪具を盗み共に追放の身となった祖先。多分、水神は祓われそうになったことに腹を立てて、その復讐で呪具を盗んだんだろう。しかし私の祖先は何故水神に手を貸したのだろうか?水神を封印したとはいえ彼女も又、彼と結ばれないことに腹を立てていたのかな……幸せを願っていると言ったのに…。
……いずれにせよ、叶わない恋をした同士が作った過去の過ちは現代まで繰り広げられ、結局私は呪具が見つける事は出来ず、最後は五条へと卓した。人に任せるなんて最低だと思うけれど、これしか思いつかない。
だから、これでこの恋は終わり。そして名字家の、私の人生も終わり。
……なのに、私はまた目を開けた。
目を開き、横になった身体で天井を見ると天井だけでなく壁にも部屋中が多くの札で張り巡らされている。
あれ、夢の中でもこんな光景みたな?
夢なのか、はたまたこれが天国なのか。一瞬、現実離れな想像をしたけれど、これは現実だ。息を大きく吸えば、冷たい空気が身体を巡る。
何故だか私はまだ生きているようだ。
でも、何故生きているんだろう?水神を取り込んで私という概念は消えたはずなのに。もしかして水神との約束が上手くいかなかった……と、なれば水神は今どこにいるの?
もしかして失敗して水神が暴れてるんじゃ…?!眠ってた意識が覚醒し、焦って起きあがろうとすれば、自身の両腕と両足が拘束されて起き上がる事が出来ない。
何故拘束されてる?これはどういう状況??
ますます検討がつかない。ふと視線を感じて横に視点を向ければ、向かい側に人がいる事に気づいた。
「目が覚めたか」
「夜蛾先生……」
見知った顔を見て少しほっとしたと同時に、この異様な部屋が高専だという事を何となく雰囲気で理解した。
そして夜蛾先生を顔を見て今まで私に対して優しくしてくれた事を思い出し、胸がチクチクと痛む。
「先生……勝手な行動してごめんなさい」
「反省しているなら良い。生きていただけ良かったさ」
「……私、死ななかったんですね」
「呪霊を抑えることが出来たようだな。しかし名前自身の中に呪霊が居ることには変わり無い。目が覚めて早々で悪いが、お前に処分が下る事になっている。私と悟で出来るだけの事はしたが……許してくれ」
そんな顔をしないで、謝らないで。
怒られると思っていたのに、夜蛾先生は立ち上がり歩み寄って私の髪を優しく撫でた。いつも怒られた時には頭に拳骨がふってくるのに何故こんな時だけ優しくするの。
色んな気持ちが込み上げてきたが、ぐっと堪えた。自分でどうにかするって決めたのに、甘えて、逃げて……もう迷惑はかけられない。
呪霊が憑いている身では危険と判断されたようで腕をぐるぐるに呪符で巻かれた。…別に逃げたり攻撃したりなんてしようとは思わないけど、もし呪霊に乗っ取られては制御のしょうもない。それに上の人達は何かがあるんじゃって恐れているようだし、私に対しての信用がゼロの状態なんだろう。
上層部の所へ向かうまでの間、夜蛾先生は私が眠っていた間のことを教えてくれた。
あの時私は水神を取り込んだが、結局呪霊は自我を生み出せず結果、結界は解けたが私は倒れたまま意識が戻らなかった。幸い水神が居なくなっても、あの土地に災害は訪れずに済んだようで、五条が作り話をして村との災いを納めるという条件は一件落着で終わったらしい。
結局水神は私を乗っ取る事は出来なかったが、私との縛りを結んだ事に変わりはなく、その縛りを解かないと水神を私から解放する事も出来ず、祓う事も出来ず終いの状況。
水神との呪力対決に勝利し死を覚悟していたからこそ、また生きられた事に嬉しさを感じているけれど…ただ私の嫌っていたドス黒い嫉妬から生まれた呪力のおかげと思うと何とも複雑な気持ちだなぁ。
しかし水神が私の中に存在している事は消えない。
いつ呪霊に抑え込まれるか分からない為、唯一水神を払う方法とすれば、私を死刑にして取り憑いてる呪霊ごと消し去るという最もな案が出たわけで、私の処分を決める事になったとのこと。
話を聞いていたらあっという間に目的地へと着いてしまった。暗闇が広がる部屋は、以前と同じように襖が複数囲むように並んでおり、中央へ歩みを進める。
『夜蛾、ご苦労』
『全く大変な事になったものだ』
『名字名前よ、お前の処分が下った』
――死刑になっちゃうのかな。
水神の意識に乗っ取られているわけではないが、実質呪われて取り憑かれているような状態。そんな状態の呪術師、呪術師として終わってる。分かってる……分かっているけど、ただ呪具だけは返したかった。
しかし返すためとはいえ、ここで逃亡してしまえばそれこそ呪詛師側だと思われるだろう。
――ああ、これが本当の最後か。
目をつぶって死へのカウントダウンに心拍が上がり、ゴクリと唾を飲み込んだ。
『名字名前は今後京都にて乙山家からの監視体制となる。万が一呪霊に乗っ取られる事があれば即死刑とする』
『なお東京校の人間と関わるのは原則禁止。言わなくても分かるであろうが、逃走や呪術規定に反する行為が認められれば死刑対象である』
……え?
予想外の処分内容に俯きながらも呆気ない顔をしてしまった。乗っ取られてしまう事があれば言わずもがな死刑確定ではあるだろうけど、まだ猶予がある内容に緊張が緩む。
だけど何故乙山家が私の監視…?リコちゃんとは少し打ち解ける事が出来たと思っているけれど、乙山家との相性は最悪な事に変わりはない。でもそんな中でも生きて、呪具を返す事が出来るんであれば、これ以上の望みは無く充分すぎるくらいだ。
「……分かりました」
ここからは、本当に一人きりで進むしかない。
「必要な物だけとりあえず持っていけ。もし忘れ物があればその都度京都へ持っていこう。京都校にも連絡をとって授業を受けれるように伝えてある」
「学校、行ってもいいんですか?」
「あぁ問題無い。学長にも話を通してある、心配するな」
寮の部屋まで着いてきてくれた夜蛾先生はそう答えた。京都校の学長は厳しい人だと前に聞いたことがある。心配するなって言ってくれたけど……多分話を通すのに苦労したんだろうな。ここまでやってくれる先生に対して返しきれない程の恩でいっぱいだ。
京都校か……知ってる人は居ないけど荒波立たずに接する事が出来たらいいな……。
「でも夜蛾先生は私が京都校へ行っても関わって問題ないんですか?」
「いや……反則になるだろうな」
「えぇっ…会えないのに届けるってどうするんですか…」
「どうにかするさ、もう一度上に掛け合ってみる」
いつもの覇気がない夜蛾先生は全然怖くなかった。むしろ心配してしまいそうな程、申し訳なさそうに悲しそうなトーンで喋るので、失礼だけど可笑しく思ってしまう。
「……荷造りが終わったら声をかけてくれ。京都まで送る」
「…せんせ、」
「なんだ?」
「こんなに親身になってくれて、ありがとうございます。今まで学校とか、先生とか苦手だったけど……夜蛾先生も、この高専も、大好きです。」
「…………どこにいたって大事な生徒には変わりない。生徒のためなら何でもするさ」
優しく私の髪を撫でた夜蛾先生は、「東京校との関わりを禁ずるのは理不尽すぎる。どうにか解決するから待っててくれ」と言い、来た道を戻って行く。
呪霊に呪われてどうしようも無くなった生徒なんて重荷でしょうがないはずなのに、こんな私のこと見捨てないでくれるなんて素敵な先生と出会えて良かった。
でも…………もう重荷になりたくない。
久しぶりに自分の部屋に入り、深呼吸をひとつ。
いつの間にか何年も居たような安心する空間になっていたこの部屋に、もう戻る事はないだろう。
扉や窓を開けて空気の入れ替えをし、制服や必要な日用類品を入れ、家族の形見を大事にしまえば、段ボール三個分に収まった。退去するならばと部屋の掃除をしながら、ふと机に視線を向ければ五条と一緒に撮った遊園地での写真を飾った写真立てが目に入る。
あれから4か月経つのか……。
元々あの時振られてたはずなのに告白しちゃうなんて、なんて諦めのつかない人間なんだろうと我ながら思う。結局五条には気持ちを伝えてしまったし、我儘もいいところ。
楽しかった思い出が詰まった写真だけど持っていけば未練が残るだろうし、彼との思い出は全部ここに置いてく。あの規約が無くならない限り会う事はないし……次に会う時は呪具を返す時がいい。
そっと写真たてを伏せ、形見であったメガネを横に置いた。これも元々は五条家の呪具……あの時、五条は私にあげると言ってたけれど、やっぱり受け取れないや。直接渡して返したいけれど置いておこう。
「荷造りは終わりましたか」
聞き慣れた声が聞こえて振り向けば、扉の入り口に乙山さんが立っていた。相変わらず表情は堅苦しく、こちらに向けられた目線は普段よりも一層、睨むような目をしている。
「何故ここに乙山さんが?」
「貴方の見張り役は私です。全く、父上も五条家も何を考えているのか分からない……。あれほど毛嫌いしていた名字家の人間がさらに呪霊に呪われているのに殺さず生かすとは」
ボソボソと愚痴を呟く。……それには私も同感なんだけれども。乙山家からの監視がつくって、乙山さんの事だったのか。
見張り役として選ばれてしまった乙山さんも納得いかないのだろう。……私だって嫌だ。しかし、そんなわがままももう言えない。
「荷物………これだけですか?」
「そうですけど」
「………車を用意しましたので乗せますよ」
乙山さんの言われた通りに段ボール三個を抱え、寮の入り口に止まっていた車に詰め込む。
もう最後まで先生の重荷になりたくないもん、会わずにさよならしよう。乙山さんに少し待っててもらい、最後に机に書き置きをして車へと乗り込んだ。
「……ばいばい」
ありがと、みんな。
「五条さんお疲れ様です。連日任務続きですみません」
「んーいや全然いーよ」
夏に溢れる呪霊は気を削る。一体あと何体祓えば自由な時間が与えられるんだろうか。まあ飯食って風呂入って、寝て。それだけでも人間らしい生活ではあるけれど。頭の中はずっと目を覚さないアイツの事でいっぱいだった。
今日こそは目が醒めるだろうか。
それだけを期待しながら任務を終えて、高専へ戻る。報告書を書くのは二の次で、軟禁されながら眠っていた名前の居る特別医務室へと向かえば姿が消えていた。
目が覚めたのか……?
ぶわっと色んな感情が身体中を巡り、溢れるのが分かった。急いでアイツの寮部屋へと駆け足で向かっていると、共有スペースに夜蛾、傑、硝子の姿。俺に気づいた三人はなんとも重々しい顔でこちらを見てくる。夜蛾先生はこちらを見ながら、ただ言葉を何て言おうか迷ってるようで、口を開いたまま沈黙が流れるだけだった。
「どーしたんです先生」
「……名前が、目を覚ましたんだ」
答えを求めて問えば、重みがあるように話し出す。目を覚ました、それは知ってる。それなのに三人ともなんつー顔してんの。
「死刑を止めることは出来たが、京都に左遷されてしまった……。しかも東京校の人間との接種も禁じられている。すまない悟……止められなかった」
その言葉を聞いた瞬間、時が止まって終わったような気がした。嘘だと思いたくて向かった先の名前の部屋は、ドアノブを回せば鍵をいつもかけてるはずなのにするりと扉は開いた。一見何も変わっていないように見える部屋の中でも、いつもより物が減っている。
机に目を映せば、メガネと伏せられた写真。そして複数のメモ紙が置いてあった。
「五条へ。 メガネはやっぱり受け取れないや。残りの呪具もちゃんと返すね、今までありがとう。」
俺へのメッセージはこれだけ。もっという事あんだろーが。
名前にも上の連中にも腹が立って、京都まで行こうと部屋を出た時、傑は俺を追いかけてきて腕をとり、話しかけた。
「今から京都に行くと言い出すんだろうけど、先生も言ってたが条件として名前は東京校の人間と関わる事を許されていない。万が一会えば死刑対象になってる。……一旦落ち着きな悟」
四方八方塞がりだ。
会いたいと、声が聞きたいと、あの笑顔をもう一度見たいと思う頃には、全部叶わないのだから。
「なにしてんの」
ゴツンと頭に痛みが走る。上を見上げれば硝子がタバコを吸いながら打ち付けられた痛みの原因である缶コーヒーを勧めてきたので、受け取った。
「……別に、少しぼーっとしてただけ」
「一時間はずっとその状態だったけど、アンタの少しって一時間?」
「ずっと見てたのかよ」
「そんなわけないのくらい分かんでしょ」
だったらずっとかどうか分かんねーだろ、って言いたいが、丁度ここに来た時に自販機の近くにかけてあった時計の時刻を見た時から、一時間以上経っていたから反論するのをやめた。
「…名前、目ぇ覚ましたってよ」
「聞いてる」
「……アイツ、この前の任務の時、俺のこと好きって言ってた」
「ふうん……やっと言ったんだ」
ギシッとベンチの軋む音がし、横に座った硝子はタバコに火をつけ、白い煙を吐いた。
「……何で言わねーんだよ、知ってただろ」
「秘密って名前から言われてたし。それに私は元々こんなクズとくっついて欲しいなんて思って無かったから、言わないに決まってんじゃん」
鼻で笑うように答える硝子に自分のことをクズと言われたが――それにツッコミを入れる余裕がないくらい、自分の中でいっぱいになっているようだ。
「硝子は、名前がこのままでも良いと思ってんの」
「名前が決める人生なんだから、あの子が進む道を応援するってだけ。私らと一緒じゃない方が幸せなら、それを見守るよ」
「んなの」
「五条……アンタ名前を連れ戻してどうしたいの?」
「どうしたいって……」
「アンタにずっと片想いして、許嫁が居て諦めようと必死に自分の気持ち抑えようとしてた名前の気持ち考えた事ある?」
的を獲られたかのように、胸に痛みが走る。考えた事あるかって?……ねーよ。つーか好きだったなんて今でも嘘なんじゃ無いかって思うくらいだ。
なのに、身勝手な行動をしてしまったのは百も承知。つーか、アイツが俺を拒むからいけねーんじゃんか……傑の事は抱きしめても、俺には触れることはない。
「ただ俺は……アイツが側にいてくれたら、それでいい」
「でも名前はそういかないって分かるだろ?名前の気持ちを受け止めるのか、受け止めないのか、よく考えな五条」
「…………」
「ま、名前が呪霊に取り込まれなかったのは死のうとしなかったから、アンタが好きなのを諦めなかったからだよ。今まで諦める諦めるって言いながら五条に近づく努力もしたし、アイツのうじうじも中々役立つもんだ」
「……硝子こそひでぇ言い方すんじゃん」
「愛情だよ。だから五条、あんたも真剣に名前と向き合ってあげて」
相変わらずスパスパとタバコを吸っている硝子の姿は、まるで大人の余裕があるようだ。……大人じゃねーんだけどな。
けれど硝子の言葉で目が覚めた感じがする。
今まで自分勝手にやり放題しすぎて思った以上に予定が狂った。……あの時だって、名前にあんな事言うつもりじゃなかった。キスだって…するなら、あんな無理矢理じゃなくてなんて考えながらも、やってしまった。
答えは聞かなくたって、教えてやる。
だから、そのためにやるしかない。
「悟様!!」
バタバタと駆け足で休憩所に現れたリコは俺に向かって悲しげな顔を見せた。
「なに」
「名字さんが……左遷されたって……」
「そーだよ」
「っごめんなさい!私、父上に脅されて……いつの間にか名字さんが悟さんに好意があると言ってしまってたみたいなんです…」
ったく……何してくれてんだよ。
「それで、お兄様と結婚させるって……」
「はあ?……ったく、お前が兄貴と一緒になりたいからって色々やってたのに台無しじゃねーか」
「は……?どういうこと、ちゃんと説明しな」
俺たちの会話を聞いてた硝子はぽかんと口を開けて止まり、鬼のような顔に変わる。
そう、これは婚約が決まって嫌な者同士が、この婚約をなき者にするために計画。これはどうにか早く方をつけないといけないみたいだ。
……アイツを取り戻すために。