400字の紅色染筆

「夜鷹ちゃん」
不二くんのレパートリーに追加された最近のワードを口にされぴくり、と眉を動かす。
『う…なん、で名前呼びに…しかもちゃん付けですか』
「あれ?嫌なの?」
『…うぐ…よう、しょうき以来だからそう呼ばれるの…だ、だから反応に困るだけであって……ぅぷ』
狙いを澄ましたかのような柔らかな微笑みに息をつまらせ目を瞑る。直視しては駄目だ。破壊力ありすぎて思わず頷いてしまう。イケメン…恐ろしや……、でも大変美味でございますっ!ありがとうございます、という気持ちだけは忘れなかった。口元に指先を添え嘔吐に耐える。
「僕のタオルでよければ使う?」
『(ぼっ、たっ!い、いらぬ気を回さないでくださいッ)だぃじょぶぅ』
不二くんのタオルなんて滅相もない。魅惑的なお誘いだが顔を埋めたら最後だ……誘惑に首を左右に振り煩悩を追い出す。
『でも、なんで急に』
「ん―、月子さんがそう呼んでいたから感染したのかも」
『…人の母親を名前で呼ばんでください』
「ふふ、独占欲?そんなに呼んで欲しくないんだ」
『意味合い違うから』
「じゃあ、夜鷹ちゃんって呼んでいいよね?」
『誘導尋問だ!……弁護士!べーんーごーしー!!』
手を取られ楽しそうに笑っている不二くんに顔から血の気が引いていくのがわかる。救援である菊丸くんを呼んではみたが、援護射撃は期待できそうになかった。
「異議なしぃ」
『あるからッ!』
地団駄を踏みながら菊丸くんの服を掴み揺らすが「てへ」と舌を出してすっ呆けられた。
そんなやり取りをしている私たちを他所に大石くんが迎えにやってきたのか、不二くんの隣にいなさった。
「不二、ほどほどにしてあげて」
「人聞きが悪いな。僕はいじめてないよ。からかってはいるけど……たまに」
『たまに?!』
菊丸くんの服は掴んだまま聞き捨てならない言葉に振り向き、不二くんを視界に捉えた。
「”いつもの間違いじゃないの?”って顔してるね……ふふ、よくわかっているじゃないか」
爽やかに、本当に爽やかな春風のように微笑み、笑声を出す不二くんを塞がらない口から血液がナイアガラのように流れ出た。
「弓波ちゃん?!!」
『大石先生…今日は多めに輸血お願いします…』
「準備しとくよ…」
菊丸くんの学ランを紅く染めあげていく中「ははは」とハイジの歌でも歌うみたいに軽快に笑う不二くんを菊丸くんが「笑い事じゃないよ不二〜」っと呆れ口調で言い退けた。
そこへのっぽなえっちゃんがやってきた。
「不二。呼ばれてるぞ」
「ん?ああ、ありがとう」
えっちゃんが親指で後ろを指すとドア付近には女の子がこちらを覗き見るような姿があった。
漸く魔王が退却し、私の血液もストップがかかる。口元に付着した血をハンカチで拭っているとえっちゃんが頬を指して「ここもついてる」と傍にやってきた。
『えっちゃん助け船出すの遅い』
「楽しそうにしてたじゃん」
『今日の血液量が気になってそれどころじゃなかったよ』
「タンク方式なのか?もちっと女の子らしく頬染めたりできないのかよ」
『え、セクハラ』
「なんでだよ!」
『あ、そろそろ部活行かないと』
「遊んでやれなくてごめんね、えっちゃん」
「こらー菊丸。誰も寂しがってないわ」
リュック紐を片方だけ肩にかけ手提げを腕に引っかける。
大石くんと菊丸くんの間に挟まり教室のドアまでいき、振り返って手を振った。
『バイバイえっちゃん』
「へいへい…またな夜鷹」
ツキノワグマみたいに大きい癖に手を小さく振るえっちゃん。
大石くんが後ろで「不二の荷物も持っていくか」と肩にかけ菊丸くんが「オレ連絡いれるわ」と片手にスマートフォンの操作をはじめた。
何気なくふとした瞬間に私はあの日のことを思い出していた、それは私がカノジョの名を避けていたという事実について。
理由をあげるなら訊いてはいけない気がしたから。その領域に私はあの時目覚めていたのに眠ったフリをした。
深く糾弾など出来なかった。ニコに、あの時の彼にそんな酷なことを強行することは憚れた。両手に抱えた籠の中身は洗濯を終えたタオルの山で、それを持ちながら空を仰ぐ。
――――“弓波夜鷹”とは誰のことだ?
ドッペルゲンガー。同一人物。本当にそうなのだろうか?この世に性格も容姿も瓜二つの存在が本当に存在しているのだろうか。
次元が違うから可能だろうと言うのであれば、それはもう一人の自分ではないだろうか。
認識をしていないだけでそれを自分ではない別の誰かだと思うことは可能だが、それを自分だと思うことは躊躇われる。己の知らぬところで自分はどのように振る舞っているのか、振る舞ってきたのか。言葉は何を選びどのように組み替えて相手に発してきたのだろう。行動はどのような選択をして示してきたのだろうか。家族の前では?友達の前では?好きな人の前では?……正解がわからない。
……ニコは最初から哲学的だった。
私はカノジョではないが、カノジョとして生きなければならない。それはカノジョの身体を得た条件だから。でも性格は一緒だから私は私なりに生きればいい。私の性格で行動で言葉で価値観で生きていいのだと。それは私が私としてしか生きられないことを理解していた。人間は複数にはなれない。個人なのだから。個体なのだから。だからニコはカノジョの身体に刻まれた記憶も脳に刻まれた記憶も消した。二度と甦らないようにデリートした。完全なる消去は私のため?いいや……それは違う。きっとそれは……ニコ自身にとって都合がいいのだ。そうしなければならない理由があった。彼は私に理想を抱いている。それはとても尊い容だ。だが、それが異常なのだ。異常の世界の中での異質物は最も危険だが真面になってしまう。だから……彼は―――――。
『事実は小説よりも奇なり』
感情論よりも明確な解答は出ていた。でもそれを口にするのはやめた。口にしてしまったらそれを認めなくてはならない。問題が解けたからといってそれは理解しただけにすぎない。納得した訳じゃない。言い訳くさいが私もやはりまだまだ青臭いのかもしれないな。
『……てか、重ッ』
珍しくシリアスモードでお送りしてきたがその間も私はこの大量の洗濯物が入っている籠を抱えていた訳で……正直腕が痺れた。そろそろ洗濯場まで辿り着くだろう校舎の影で女の子の震える声が聞こえた。その声に足先が迷いながらもゆったりと地面に下した。音は思ったよりも立たなかったようだ。胸を撫で下ろし物陰から首をひょっこり出すと予想通りの光景が眼前に繰り広げられていた。嘆く私とは打って変わって緊張で震える女子生徒の声はとても青春日和だった。
「不二くん……わたしっ……わたし、ずっと前から好きでした……!」
―――あ゛あ゛あ゛ 告白の現場に遭遇してしまった……ッ!
確率的に低いはずなのになんでこんなっ……よりにもよって不二くんやないのッ。
ちょっこれ……どうすんのよ。いや気がつかれる前に回れ右するしか選択肢ないやん。OK BOSS!洗濯は10分後にまた来ます……おいおい、待てよ私。何をやっているんだ私。動けよ足。なんで動かないん?あ、もしかして告白の返事が気になるのかい?……はははははそんなことあるわけっ……あるよね。いや、普通に気になってるよ。不二くんが、公式では「モテます。爽やかイケメンですから」とか煽り文句が付くくらいの美形なのに浮ついた話が一切ないのが気になる。なるほどトリップするとこういう事情にも詳しく知れるってことか。てーかー、普通にイケメンってどうやって女の子の告白に返事をするのか気になる。普通に野次馬として気になる。もう一度物陰から覗きながら視界に不二くんの後ろ姿を映し込んだ。
「なにをやっている弓波」
『?!て、手塚ッ』
ユニフォーム姿を見て部活中なのにいけないんだ〜とか思ってたら私も部活中だったし、手塚くんに見つかって大目玉食らったのも私だし。驚きすぎてちょっと声の音量大きかった気がするけど、取りあえず。
『背後に音もなく忍び寄るのはご遠慮ください、お客様』
「お客様?!弓波……少し休んでも構わんぞ」
肩に手を置かれ手塚くんが公式では視たこともないような顔をして私を憐れんでいた。いや、どうしたの手塚くん。大丈夫だってまだそれだけじゃ吐血しないんだぜ(※大分イケメンに囲まれすぎた生活をしているので慣れてきた)成長しただろ?
さて、手塚くんが来てしまった以上。私も仕事に戻らねばなるまい。少し遊びすぎてしまったが人様の告白現場を見たところで……羨ましいしか感情が湧かないわ。手塚くんを回れ右させて背中をぐいぐい押す。
『仕事しますよ、仕事』
「弓波、その籠は俺が持とう」
『ありがとう』
「ん?あそこにいるのは不二じゃないか?」
籠を持ってくれたはいいが、不二くんの背中に気づいてしまった。いや後ろ姿だけで誰か判別つくのか手塚国光よ。恐ろしい男だな……と感心していると手塚くんが不二くんを無邪気に呼んでしまいそうになっているので彼の手首を掴んだ。
『見間違いだよ。ほら、部活があなたを待ってるわ』
「だがあれはテニス部のユニフォームだ。サボりは罰しなければ」
『トイレ休憩の帰りに“ちょっと質問いいですか?”ってクラスメイトに声をかけられてるかもしれないじゃないか』
「いや、あれは3組の綿貫だ」
『じゃあ新聞部』
「彼女はバスケ部のマネージャーだ」
『……なんで把握してるの』
「生徒会長ならばこれくらい当然だ」
『いやいや当然じゃないから。どんだけ記憶力いいのさ。取りあえずあそこに行くのは野暮ってものだから邪魔したら駄目だ』
「何か知っているようだな」
『……人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られてしね、ってこと』
「……穏やかではないな」
『穏やかじゃないよ。だからここから直ちにさ………』
「……」
ふと目が合った。両手を握り紅潮する顔で熱に浮かされた少女の瞳が一瞬だけ歪んだ。これはまずいと思ったときには既に時は遅かったのかもしれない。
組んでいた腕を解き一言だけ。
『行くぞ手塚』
有無を言わせなかったのか、迫力があったのか、私は私の目を知らない。だが手塚くんは何も言わずに黙って後を歩く部分を見ると多分両方該当したのだろう。
――――馬に蹴られてしぬのは私かもしれない
その杞憂は翌日に繰り越しされた。
あたしは友達がいなかった。
ベタベタの友情なんてのし付けて返す。言いたい事も言えずに、押し黙って我慢して、それで友達?なにそれ。お手手つないで二人三脚とか馬鹿じゃないの。鬱陶しい友情、友達っていう枠組みが大嫌いで……そして、それをぶち壊してくる男はもっと大嫌いだった。
スマートフォンを片手で操作しながら上を見上げた。二階の窓には大きな猫のぬいぐみが飾ってあるその窓が一体誰の部屋なのか考えなくてもわかる。白い薔薇のレースがオレンジ色のカーテンがゆるやかに引かれ、窓が開け放たれる。まだ眠そうな顔で目を擦りぼんやりとしている夜鷹はとてもかわいい。
「夜鷹ちゃん―!遅刻しちゃうわよ」
『ふぁ……い……』
夜鷹のお母さんの声に返事をしながらぼやけた視界であたしを捉え、そして柔らかく笑んだ。
そう、彼女こそあたしの……かわいい女の子。
夜型人間の夜鷹は朝が弱い。目覚ましを二個と母親の掛け声までやらないと起きれないほど。なのに朝練のある部活に入部したと訊いた時は心配よりも奪われた思いだった。
真面目な夜鷹は朝練のある日は誰よりも早めに出掛けて準備を済ませている。授業中寝ている事も多くなった。昼休みには図書館へ行って勉強しているし、テニスのルールブックまで読んでいる始末。何事も頑張って取り組んでいる夜鷹のことを見ているのは好きだけど、でもやっぱりテニス部に獲られた思いは消えない。
『おまたせ〜鷲深ちゃん』
「ほら寝ぐせついてるよ」
玄関から出て来た夜鷹は片手に紙パックの、のむヨーグルトを持ったままリュックでやってきた。両手が空いて食べながら登校できるからって言ってた。ギリギリまで寝ていることが多いから朝はいつも軽食を片手に食べながら登校しているのだそうだ。それを訊くたびに何をそこまで彼女を動かすのだろうかと頭を抱える。うちの男子テニス部ははっきり言って顔がいい。それを目当てに入部する女子は少ない。だけど、手塚がそれを許す訳がない。夜鷹は面食いだけど男子テニス部に熱を上げている連中とは違うのはわかっている。それにあの手塚が許可を出し、更には勧誘までしたと訊けば、もう誰もが彼女のことを一目に置くのは当然の流れだ。
手塚のファンは洗礼されているからそういう心配をしなくていいが、それ以外はどうだが……。呑気にストローを啜る夜鷹の横顔を見つめながら、頬をつつくと唇をすぼめて「やめい」と言われてしまった。
小さくて、かわいい夜鷹。洒落っ気もあまりないのに彼女の可愛さは自然だ。
あたしが目を光らせている間は何かされることはないとしても、まあ一応江口もそうか。だけどこの子が部活をしているときまでは不可能だ。ましてや休日のときなんかまで追いつけない。
『鷲深ちゃんと登校するのも久しぶりだね』
「男テニは朝練ありすぎ」
『練習試合近いからね。鷲深ちゃん見に来る?』
「予定が空いてれば」
『都合がよかったら来て』
屈託のない笑みを浮かべる夜鷹のこの顔を見られるのは仲が良いあたしの特権(あと江口もいたか)。心を許した相手には割と無防備だからこんな姿も見放題だと思えば、まだあたしは夜鷹にとって一番なのだと安心する。
―――そう言えばあの細めスカし男はどうなのかしら
ふと脳裏によぎった不二周助という男の顔。夜鷹のストライク顔らしいけど吐血したり青ざめたりとしている様子からして異性に対する好意はなさそうだ。夜鷹には。……あの男食えないのよね。勧誘したのは不二だって訊くじゃない。それに部活中も何かとちょっかい出してるし……興味がないモノに対しては執着もない男だと踏まえると……危険だわ。江口が警戒するのもわかる。思わず額に手を添えて頭が痛い。あの学ランだって江口を脅したらあの男だっていうじゃない。それって夜鷹の寝顔を堪能したってこと?……まあそこは今は置いておくとしても。危険すぎる。今すぐにでも引き離して―――、そのとき突然目の前に見知らぬ女が現れた。
『!……』
「……」
眉が一瞬上がったが夜鷹は言葉を発しない。知り合いなのか。だがあたしは知らない。見たところ同じ制服を着ているということは青学の生徒だとしても、年下?同級生?顔見て判断するにしたって無理にも等しい。だが唯なぬ空気に一歩前に出ようとしたあたしを夜鷹が制した。
「……っ」
次の瞬間、女が手を振り上げて夜鷹の頬目掛けて渇いた音が響き渡った。
止めに入る隙もなく、夜鷹の白い肌には赤い斑点がくっきりと痕をつくり、爪で引っ掻かれたのか筋のような線が入り、そこから更に赤い鮮血が流れた。それでも夜鷹は何も言葉を発せずに相手の女に視線を合わせた。
歯を食いしばったその女は目から溢れ出てしまった滴を溢した。
「あんたなにしてっ!」
首根っこでも掴もうと伸ばした腕を夜鷹が掴み首を左右に振った。「でも」と訴えても夜鷹は掴んだ腕を離してはくれなかった。
女はそのまま何も言わずに立ち去り痛々しい痕を残された夜鷹はその女の背中を見えなくなるまで見つめていた。
「夜鷹」
声をかけると何事もなかったかのように彼女は歯を覗かせて笑った。
『行こう』
彼女は時々……あたしよりも――――大人びた顔をする。
ここのところ毎日朝練があった所為で今日が休みのことを忘れて来てしまった。軽く打っていたけど相手はいないもんだから保健室のベッドで時間になるまで寝ていた矢先に騒々しい開閉音で目を覚ました。
―――うるさいな……なにっ
カーテンの隙間から覗いてみると丸椅子に座らせられた弓波先輩と薬品を持ったおっかない先輩だった。
弓波先輩の頬には血と叩かれた痕みたいな傷がくっきりと浮かび上がっていて何事かと一気に覚醒する脳内。
一歩踏み出そうとしたとき、会話が聴こえて思わずカーテンの奥へ引っ込んだ。
「腫れてるし、血が出てる……取り合えず消毒して絆創膏貼ってから冷えピタコースね」
『滲みる……』
「口の中は?」
『切ってない』
「……受けにいったでしょ」
『なにを?』
「平手」
『まあ受けるに値することしてしまったし』
「それって、部活絡みでしょ」
『……』
「夜鷹」
『馬に蹴られてなんとやらって奴。因果応報だよ』
「はあ…そんなの律儀に受けてたらお多福になるよ」
『いやまあ、痛いほど気持ちはわかるからさー。恋する乙女は複雑なのよ、うん』
「手を上げる方が悪い。悪いけどあたしは許せないからそういうの」
手当てを終えた乙藤先輩は怒気を含んだ瞳で扉の奥を見据えた。まるでこれから殴りこみに行きかねないそんな迫力があった。顔立ちが整っているだけに目を細めただけで眼光が鋭いナイフのようだ。だけどそんな乙藤先輩の手をとり静かな声で抑制してしまう。
『暴力反対』
「正当防衛」
『同じになったら駄目じゃん』
「じゃあ別の方法にする」
『鷲深ちゃん……告げ口はなしだかんね』
歯を覗かせて笑う弓波先輩に乙藤先輩は溜息をひとつ溢して大人しくなった。
「次あったらまとめて殴る」
『真っ赤な拳は勘弁』
女子の軽口を残して先輩らは保健室を去った。
何が起き、どうなったのか、詳細までの経緯は想像になるが大体の要訳はできたと思う。
「……ばかじゃないのセンパイ」
あと5分後に予鈴が鳴る。
「夜鷹ちゃん」
来るとは思っていた。多くの弁論を頭の中に浮かべたが、予測不能な行動により難なく崩落する。
冷えピタが貼られた頬に指の背で触れられる、とか……予想できるか!
木っ端恥ずかしい気持ちで両手を握りしめながら荒くなる呼吸を抑える。
「どうしたのコレ。朝から気になってた」
『あ、いえ…これは、ですね…対した傷ではないので候……』
「(敬語?)」
「(そうろう?)」
クラスメイトがざわつく中、不二くんは私の握りしめられた手に触れた。重なる温もりと違いすぎる材質に「あ、男の子だ」なんて思ってる場合じゃないのに思ってしまった。アホか自分。
「血が止まってしまうよ……ただえさえ血液問題を抱えているのに」
『誰の所為ですかね、ええ』
普段通りの不二くんの軽口が降り注がれ、内心安堵した。これ以上詮索されたら言い訳がましい言葉しか出てきそうにないや。折角用意した取り繕った言葉も不二くんのあの有無も言わせない雰囲気の前では無にも等しいことがわかった。
これはきっと……紙面ではわからなかったことだね……やっぱ二次元って萌えるわ
そんな事を思っていた私を余所に冷たい視線がふたつ降り注いでいた。
長くなってしまうのでここで一旦区切ります。この連載今のところ8000文字以上でお届けしています。流石に1万文字は疲れるかなっと、いえ私が←
いい雰囲気で書こうとすると邪魔をするのはこのヒロインの所為だなって私は思うけれどみなさんはどう思います?でもこの子のおかげで私は楽しいです。鷲深ちゃん視点もかけて楽しかったです。おそまつさまでした。次回は後半ってことで。