きみとならどこまでも
「赤葦くん〜!」
「次の休みは来週の木曜日」
「話が早くてとても助かる」
いつも休み潰しちゃってごめんね。そう謝ると、赤葦くんはきょとん、と首を傾げた。いつも思うけれど、この動きは随分と大人びた彼が幼く見える。
「普通に旅行してるみたいなものだし、別に気にしなくていいよ」
「やさしい〜!!」
ありがたや〜、と手を合わせて拝むとすぐに「やめて」と本気のトーンで聞こえて顔を上げる。
「次はどこ行きたいの?」
「えっとねぇ……」
既に次に行くところは決めていた。スマホで保存していたホームページを開く。隣で小さい画面を一緒に覗き込んでいるからか、赤葦くんの顔がすぐ近くにあった。
――相変わらず整った顔してるなぁ。
じっと見ていたのがバレて、ぱちりと視線が絡み合う。ごめんと言って離れていく赤葦くんに、別に今の距離でもいいのになぁ、なんて思ったり。
助けを呼ぶように名前を呼ぶだけで理由を察してしまうほど、赤葦くんとはたくさんの場所へ出かけている。
最初は春に行った鎌倉文学館。次はもう少し遠くの茨木まで出て、色とりどりのジニアやヒマワリを見にひたち海浜公園まで。鮮やかなジニアはまるで絵のようだったし、夏が始まっていたから暑かったけれど、日焼けもしたけれど、一面に広がるその光景はきっと他では見られないのだろうな、と思った。
その次は軽井沢まで。これまた自然が作り出す美しい景色を楽しんで、昔ながらの建築物の研究をした。様々な系統の建物は今後の執筆にリアリティが出せそうだな、とスマホの容量をそこそこ圧迫してしまうほどの枚数を撮ってしまったけれど、後悔はしていない。実はこっそりと一枚だけ、赤葦くんの後ろ姿が映っている写真がある事は、本人には言えない。
次、次と四季を丸々使っていろんな場所へと出かけた。流石にスケジュールの関係で、日帰りが出来る関東圏だけにはなるけれど。
いろんな刺激を受けた。
きっと私一人でも、前の担当とも、出かける事はなかっただろう。相手が赤葦くんだから、どこへ行っても楽しめたと確信を持って言える。そうでなければ途中から目的が変わってしまう事なんて無いだろう。
どこへ旅した時だっただろうか。次はどこへ行こうと考えた時だったか。
小説のため、はもちろんだ。彼の休日を潰してしまっている事に変わりは無いのだから、本来の目的を見失うわけにはいかない。
だけど。
だけども。
いつからか。
執筆のために出かけたい≠ナはなく、ただ単純に。純粋に。赤葦くんと出かけたい≠ノ思いが変わっていた。
あくまで協力してくれている赤葦くんにこんな事は言えないから、ひっそりと自分の心に留めておく事しか出来ないこの気持ち。いつか懺悔として告白出来る事があるのだろうか、と最近考える。
同時に、もし出来ると言うのなら――その時は、赤葦くんとお別れなんだろうな、とも。