04


支部のソファーは座り心地が良い。一息つくつもりで座ったら、そのまま眠ってしまうくらいだ。
夢を見た。懐かしい気持ちにさせる夢で、眩しさとむず痒さを感じたあと、必ず自己嫌悪の苦味が襲ってくる。頬を伝う感覚があって、手で確かめてみれば、俺は泣いていた。自分の情けなさに呆れ返り、拭う気にもならなかった。呆然と過去を振り返ろうと思っていると、外から人の気配を感じる。誰かが戻ってきたんだ。すぐに涙を拭こうと、袖口で顔を擦りながらソファーから立ち上がる。それとほとんど同時に、来馬先輩が入ってきた。


「……鋼?」


背を向けるのは遅すぎた。しっかりと見られたらしく、心配そうな来馬先輩の声が静かに響く。


「なんでもありません、大丈夫です」

「……そう、かい?僕で良ければ話聞くけど……」


ああ、でも無理に話さなくてもいいからね、ただ僕に出来ることがあれば言ってほしい、頼りないだろうけど何かの役には立てるかもしれないから。来馬先輩はそう続けた。優しい言葉に胸がじんわりと暖まっていく。穏やかな声に促されて、今さっき大丈夫と言ったばかりなのに、話を聞いてほしいと思ってしまった。


「……夢を、見たんです」


その一言が出るまで、ずいぶんと時間が掛かった。だが一度始めてしまえば、そこからはつらつらと滑るように言葉が出てきた。今まで誰にも話したことがなかったそれは、人に知られるにはあまりにも情けない、だけではなく、きっと宝物を独り占めしていたい感情と似たものだと思う。俺もまだまだ未熟な子供だと、話しながら痛感した。


「大切な思い出なんだね」


来馬先輩の一言で、引いたはずの涙がもう一度やってきた。堪えながら頷いたら、一筋だけ溢れてしまった。戻れない過去に、俺はいつまでメソメソしているつもりだろうか。自問して、きっと忘れることなくずっと続くだろうと結論付いた。己の女々しさに、何度目かの自己嫌悪のモヤが胸中を燻った。